茶色の死神(リーパー)
2話目、次で最後
その頃、亡国の……ある工場では。
緑色の作業服の様な服を着た男性が、数名居た。
1人は何かを訴えるように泣きそうな表情で、苦し紛れの様な痛い表情をしている男に詰め寄っていた。
他の人はそれを見ても、うつむいて自分を攻めるように暗い表情をしていた。
「なんであいつが! あいつが1人で戦ってるんすか!」
「……」
「答えくださいよ! なんで普通なら俺達がやらなきゃいけない事をあいつが……カルトがやってるって言ってるんすよ!」
詰め寄る男に、歯を食いしばりながらも黙って胸倉を掴まれる男性は目を強く閉じて何かを堪えている様だった。
周りいた1人の男性がその様子を耐えきれなかったのか、詰め寄る男に話かけようと近づく。
その男の表情も何かを堪えるように、拳を強く強く握っていた。
「なぁバルド、俺達だってあいつにここに残ってほしかったさ」
「じゃなんで、ここで誰1人そこにある機体を動かそうとしないんすか!」
「無理なんだ……バルド、俺達じゃ……無理なんだ!」
近寄った男は、胸倉を掴んでいる男をバルドと呼び……噛みしめるように呟くが、納得出来ないと言葉を荒らげる。
掴まれてそのままの男性は、今にも泣き出しそうな言葉だが強い口調で言った。
その瞬間に、工場のデカイ扉が開かれ……そこには写真の持った女性が立っていた。
「カルトが……どうかしたの?」
「メル……」
「姉さん……」
写真の持った茶髪の女性はメルと呼ばれ、同時に姉さんと言われていた……その表情は驚きで、先程の会話を聞いていてような表情だった。
メルは数人の男達に戸惑うように見渡しながら歩き出す。
胸倉を離したバルドはメルにおちゃらけた表情で近づいて言う。
「カルトは今何処に言ってるのか聞いてたんすよ、姉さんは気にせずにいてくだせぇ」
「さっき、カルトが1人で何かやってるって……」
「さぁ……何時もの様に何かやってるすかね」
バルドは言うが、メルは先程聞いた言葉を聞く……それでも、バルドはとぼける。
胸倉を掴まれた男はそのバルドに近づいて、肩を叩く。
そしてバルドが振り向いた時に、首を振ってメルの方に顔を向ける。
「あいつは……たった1人で戦場でこの国を……街を守ってる」
「ガル! それは姉さん言わない約束じゃ!」
「もう、あいつは戻ってこない……もう奴は生きて、ここに戻ってくる事はない」
胸倉を掴まれた男性はガルと呼ばれてた、その言葉はメルに取って衝撃的な物で……驚いた表情で口に手を当てていた。
この工場は元から国の自衛隊という立場であり……周りの敵国の防衛を任されている。
カルトはメルに内緒でその裏方や戦場に出向いていた、だから彼女が言っていた……迷子は戦場に出かけていた時の数。
「もう戻ってこないって、どういうことすか!」
「バルド、機体に埋め込まれているコアの事は知っているな?」
「あのスタンダードやら、テクニカルがあるコアっすよね?」
ガルはそうだ、と言って続きを話始める……そのコアは1つのリミッターの様な役割を持っていて、スタンダードは外部損傷を受けてもある程度負荷が掛からないが動きが制限される。
カルトの乗っている機体に詰め込まれているのは、違法中の違法……製法も確率されないような物で、機体の外部損傷をもろに受け、操縦者と完全リンクし首が飛べば……操縦者の首が飛んだような感覚に陥る。
ただし、操縦性能や全てを他のコアと段違いな物で……その差は歴然、牛とチーター程ある。
「俺達はそれを、リーパーと呼んだ……これはもう1つの役割がある」
「その役割ってなんすか?」
「それは……」
ガルが言いかけた瞬間……凄い地響きと騒音が鳴り響いた。
バルドはこの音を聞いて、目を見開いた……この音の正体を知っているかの様に。
そしてバルドは外へと走り出し、メルも追うように走っていく。
戦場は地鳴りと共に、変形していた。
クレーターの様に、国の前が……街の大きさ5倍くらいの凹みと、割れた様な地面が広がっていた。
茶色地面の中に砂埃に紛れて、カルトの機体が埋まっていた。
男は、黒髪に隠れた頭から血を流して……体中も血だらけになっていた。
感知するようなレーダーにも血が飛び散って、見えないほどだった。
そして、男は呟く……。
「俺は……死ぬのか? このまま……死ねば……あいつは……どうなる?」
自問自答するように呟く、機体は電撃の様にビリビリと発して……左手、右足が無く、ブースターも右側が無くなっていた。
リーパーのもう1つの役割……それは、操縦者が死ぬその時まで意思が残っていれば自己AIが起動して機体を全力まで動かす。
男の目にはまだ死ぬという選択肢は無いように見えた。
「なぁ……お前は……まだ、やれるか? やれるなら、行こうぜ……」
途切れ途切れの言葉は機体に話しかけているようにも見えた……そして、その機体は答えるように無い片足動かして立ち上がる。
元々目の形はあっても光が灯る事は無かったが、その瞬間には機体自身が意思を持つように紅い光が灯っていた。
そして、壊れて欠けた片方のブースターと無事のブースターが個別に動き出す。
「流石にこれをくらって生きてる奴はいないだろう」
「……まだ防壁が起動してる! 警戒を緩めるな!」
「……何か音がしないか?」
兵士は安心しているが、ハメルは防壁が起動している事を確認し……1人の兵士が気になるのか声をだす。
男の機体は欠けた片方のブースターは速度を出すのを止め、元から攻撃用かの様に太い導線と共に……羽部分が鋭利な刃物の様な銀色装甲をだした。
無事なブースターが今まで以上にふかして、速度をバランスも考えないような速さで目の前にいるだろう部隊へと腰を落として。
「お、おい……まさか、この音って……!」
「化け物かよ……」
そんじゃ……行こうか……と男は呟いて、高速で止まっている部隊に突進を仕掛ける。