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夢の国(前)


7月某日。


最寄りの天王寺駅に、待ち合わせの10分前に着いたので、携帯で電車の乗り換えを確認しておく。


「おまたーせー。早いねぇ」青い頭が走ってくる。今日はワンピースみたいにオーバーサイズの紫色のTシャツと膝下丈の黒い短パン。靴は黒いコンバース。黒いリュックについているでっかいキャラクターのマスコットが気になる。


佐藤が俺の服装を見て、「なんかおしゃれじゃん?今日」と珍しそうに聞いてくる。


「姉貴が、選んでくれた…」そう。さすがに遊園地に、す、好きな奴と行くんだし、と思い、姉貴にコーディネートを頼んだのだ。白いロゴTシャツ、黒いスキニージーンズ、ショートブーツ。このショートブーツは7000円くらいした(靴にこんなに金がかかるなんて知らなかった…)。それと、姉貴が去年の誕生日にくれた長めのシルバーのネックレス。黒いトートバッグは姉貴が貸してくれた。姉貴が好きなバンドの缶バッヂがジャラジャラついてる。


ちなみに姉貴には佐藤と付き合ってることを話してある。サバサバした性格なので、深く追及してこないところがありがたい。


「身長あるしさぁ。かっこいいじゃん。普段からおしゃれしなよ~」と佐藤。ここまで高評価だとは。毎日姉貴に服を選んでもらわなくてはならない。


「髪も染めなよ!金かシルバーだなぁ」


「髪は染められない。試合出れなくなる」こう答えつつも、部活を引退したらすぐに金かシルバーのヘアカラーを買おうと決意する。似合う気がしないが…。


「ははっ。行こう!!混んじゃうよ!!」歩き出す佐藤。追いかける俺。



電車を2本乗り継ぎ、目的地である東京ティスニ―ワールドに到着。長い列に並び、チケットを買い、入場。さすが夏休み、人が多いこと多いこと。



ピンク色のクマの着ぐるみが配っている案内パンフレットをもらい、なんの計画もなくアトラクションを片っ端から回る。



ジェットコースター、ジェットコースター2(サンダーなんとか)… 俺も佐藤も絶叫系が好きだから、立て続けにジェットコースターに乗る。



一つのアトラクションに乗り終わったら、すぐにまた別のアトラクションまで、手を繋いで、走る。



5回連続でジェットコースターに乗ったところで、昼飯。可愛らしいサンドイッチとパンケーキを食す。



その後も何回もジェットコースターに乗り、おぞましい色のアイスを食し(味はいけた)、コーヒーカップを高速で回転させ、レーザーをモンスターに当てるシューティングゲームをやった。



手あたり次第アトラクションに乗ってたら、あっという間に7時前になった。


「そろそろ帰んなきゃな」帰るのに1時間くらいはかかるから、そろそろ出たほうがいいだろう。


「そうだね、」なんか言いたそうな佐藤。


「ん?」


「じゃあさ、最後にあれ乗ろう、あの、観覧車」


…なに照れてんだよ佐藤。


こっちまで恥ずかしくなるじゃねえか。



観覧車の待機列は今まで乗ったどのアトラクションよりも長かった。


まわりは、恋人らしい男女カップルばかり。どのカップルも楽しそうに話している。俺たちも「暑い」「それなー」といった他愛もなさすぎる会話をしながらのろのろと動く列に合わせて進む。


そのとき。


「ねー、あそこ、男の子2人だよ。観覧車乗るのかな?」


と、女性の甲高い声が聞こえた。明らかに俺たちのことだ。


「はぁ?これカップル向けアトラクションだろ」


その女性の相手らしき金髪の男性もこっちに目を向ける。


佐藤も聞こえたみたいで、ちょっと居心地が悪そうに眉をひそめてる。


「付き合ってたりするんじゃん?」「まさかぁ」「今のご時世なんでもありだからさぁ」「ありえなくはねえけど…」


カップルの声は止まらない。まわりの他のカップルたちも、何事かとこっちに注目し始める。


俺たちが目立ってるのは、遊園地に来て最初に乗ったジェットコースターの時点で気づいていた。男女カップルに対する「2名様ですか?」と俺たちに対する「2名様ですか?」とでは明らかに違うニュアンスが含まれていたから。2人で飯食ってるときも、なんとなく注目されてるのはわかっていたし、手を繋いで歩いていれば、すれ違う人の大半が俺たちの方を振り返った。


しかし、さすがに声に出して言われると… いたたまれなくなって、俺は佐藤に声をかけた。


「佐藤、なんか目立ってるみたいだから、もう帰る?」


うん、残念だけど帰ろう… こんな応えを予想してた。


でも、佐藤は俺より、まっすぐだった。


「え?なんで?俺ら付き合ってんじゃん。ね?」震える声でそう言って、たくさんの人が見てる中、手を握ってきた。下を向いて、でも痛いくらい強く俺の手を握って、体を密着させてくる。静まり返るカップルの群れ。


佐藤。


俺の、恋人。


「付き合ってるんです」 俺は観衆にはっきりとそう告げた。一瞬あっけにとられたような表情をした後、再びざわざわし始めるカップルたちをしり目に、佐藤と手を繋いだまま順番が回ってきた観覧車に乗り込んだ。


佐藤の手は、今まで触れた中で、一番熱かった。


読んで下さってありがとうございます~!!


やっとBL感出てきましたね(?)


毎週投稿していく予定(予定、、)ですので、よろしければ次のお話も読んで下さると嬉しいです ((ノェ`*)っ))タシタシ



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