付き合ってます
「明日どれ着てこう…」と佐藤が呟く。佐藤は髪型とか服装とか結構こだわる。一昨日染めてきた青色の髪はサラサラだし、どこに行くわけでもないのに派手な大き目サイズのTシャツとスキニージーンズ。ごっつい指輪までしてる。女子か。
「なんだっていいじゃん。買い物行くだけなんだから」と俺。俺は髪型も服装も変じゃなければOKというスタンス。今も母親が買ってきたどこのブランドかわからないTシャツとジャージのハーフパンツだ。
「ダメだって。明日が終わっちゃったらテスト1週間前でしょ。修哉遊んでくれないじゃん」
佐藤は真剣に雑誌を見ながら床に並べた服を組み合わせる。ちなみにここは俺の家、俺の部屋。薫はでっかい洋服ブランドの紙袋に持ってる服の中からお気に入りのものをすべて入れて俺の家に押し掛けてきたのだ。ざっと見ても上下合わせて20着くらいある。
「はいはい。てか、お前もテスト前くらい勉強しろよ」口ではこう言いつつ、あの袖が肘下まであるオリーブグリーン(?)のTシャツ着てほしいな、なんて思う。
「わかってるよ~。」と佐藤。相変わらず口だけの奴だ。
内心呆れてたら、
「修哉こそ明日デートなのになんでテンション上がんないの?俺と出かけるの嫌?ていうか俺のこと好き?もしかして嫌いになった?」とふざけた感じでニヤニヤしながら俺の解いている問題集を取り上げてくる。悔しいことにかわいい。何をしてもかわいいのだ、こいつは。
「何言ってんだよ、す、好きだよ!超好き!」ちょっと大きな声になってしまった。「お前は!?」
赤くなる佐藤。俺も絶対に顔赤くなってる。
「お、俺も、超好き… その… 勉強の邪魔してごめん…」
「い、いや、だいじょうぶ、あと、えっと、俺も明日楽しみだよ… あの、オリーブグリーンのTシャツ、着ていきなよ…」
「う、うん、わかった…」
ああ恥ずかしい。恥ずかしい。でも佐藤がかわいい。かわいい。
御覧のとおり(?)、俺たちは付き合っている。小学校も一緒だったが、中学から仲良くなって、偶然にも同じ高校を受験し、色々あって去年の冬から付き合うことになった。
男同士とかは、特に気にしてない。少なくとも俺は。
まだ付き合って1年も経ってないし、学校で交際を公にしてもそこまで非難されないのは多分男子校だからだし、親にはまだ俺たちの関係を伝えていないし、これからのこと…高校を卒業してからのこととかは、まだ考えたことがない。
何も考えていない。お互いが好きだから付き合っているという事実しかない。
確かなことなんて何もないし、今は必要ない。
あるとすれば一つだけ… 例え佐藤の気持ちが変わっても、俺はずっと佐藤のことが好きだってことくらいだ。