二日目の午後
寝落ちで昨日書いたやつが消えてしまいました。
倦怠感に襲われ立てなくなった雫は、身体を引きずりながら近くの木になんとか寄りかかる。
「はぁっはぁっ」
体験したことのない気持ち悪さに汗を滲ませ、荒い呼吸を繰り返す。
何度も吐きそうになるのをなんとか押さえ込み、5分くらい経ってやっと少し落ち着いた。
「はぁ・・・これが魔力枯渇?しばらく動ける気がしないんだけど。」
まだ立ち上がることも出来ない状態で言った。
出来上がらなかったコップを見つめながら、後少しだったのに。と雫は思った。
あんなに苦しい思いをしたのにコップ1つ作れ無いなんてと少し残念に思う。
コップの他にも作りたいものを考えて楽しみにしていたのだが、コップでこの有様だと、毎日こつこつと作っていくしかないと思った。
最悪ステータスでMPを上げてものを作り、今の不便な状態から、生活の水準をあげることを優先されることも考えた。
だがそうなると、斧持って移動する最初の目標が遅くなってしまい、拠点の移動が後回しになってしまう。
正直、ここに魔法で家を造れればここを拠点にしてもいいのだ。
しかし、先程森の中で暴れていた魔物のことを考えると、造ったとしても見つかれば壊されるだけだろうし、造れるくらいまでMPがあるならば大魔法使いになり、斧を捨てていくと思う。
なので、最初の目標は変えずにちょこちょこと頑張って物を作っていくことに決めた。
魔力枯渇から1、2時間ほど経過して、ようやくまともに動けるようになった。
動けるようになってから最初にしたことはステータスを振る事だった。
何故いきなりステータスを振ろうと思ったかというと、先程魔力枯渇で立てなかったときに思ったのだ。
MPがあれば倒れずに作り終えることができたはずだ。
つまり、何か不祥事があったときにステータスがあれば対処できるのではないかと思ったからである。
ステータスを振ろうと本を開く。
三上雫 レベル2
属性 水
体力 17(+2)
MP 17(+3)
力 19
敏捷 25
魔力 18(+1)
幸運 10 SP7
スキル 物質変化lv2
かなりステータスが上がっていた。
「え、すごい上がり方してる気がする。しかもスキルのレベルも上がってるし。」
と驚いたが、合理的なのでは?と思った。
MPを枯渇するまで使ったから上がる。
MPが枯渇し、倦怠感に襲われたことにより㏋が上がる。
魔法やスキルを使ったから魔力が上がる。
つまり、自分の能力はステータスに依存するのと同じように、ステータスは自分の行動に依存して上がっているのではないかということ。
昨日も素振りにより力が1上がっていた。ほぼ確実にそうだろう。
「頑張りたくなっちゃうね!これは。」
目に見える成長に喜びながら、ステータスを振る。
三上雫 レベル2↑
属性 水
体力 17
MP 17
力 26
敏捷 25
魔力 18
幸運 10 SP0
スキル 物質変化lv2
力が敏捷を超えた。
だが、まだ斧は持てないだろう。
「取り敢えず、これから筋トレも始めよう。その前に食料の確保だけど。」
力のステータスを上げるため、筋トレも毎日やることにしたが、その前に夜の食料を確保しなければならない。
そのため、動けるとはいってもまだ少し怠さを感じる身体で立ち上がる。
そして、先程と反対の場所を探索するために赤い布をちぎって目印を何枚か作り、反対の場所の探索を開始した。
探索を開始して、20分くらい経過しただろうか。
まだ食べれそうなものを見つけていない中、あるものを発見した。
「ん。なにこれ?」
と言って地面に落ちている、あるもの一部を拾う。
「これって、手袋…じゃなくて篭手っていうんだっけ?他にも鎧みたいなのも落ちてるし。」
そこには、傷だらけの鉄の防具が恐らく一式落ちていた。
「…ここで魔物にやられたのかな?こんな強そうなのつけれる人がやられるって、ここらへん危ないんじゃ?」
血とかはついているようには見えない。
だが、苔が生えているのを見ると、随分昔のものであると推測できた。
まだここら辺に魔物がいるかは分からなかったが雫はここにいるのも怖くなる。
と、同時に鉄の防具が入手できたため喜びが込み上がってくる。
「これ、物質変化使って色んなのに再利用できるじゃん!お宝だよこれ!」
魔物がいるかどうかも確認するかも忘れて、鉄の使用用途を考える。
そのまま使うことも考えたが、こんな動きずらいらそうなものつけるつもりは雫にはなかった。
他にも、恐らく男性が着ていたと思われ合うかわからないし、着かたもわからないのが理由だ。
それから雫は、先に持ち帰るか、帰りに持ち帰るか迷っていた。
「先に持ち帰ったほうがいいのかなー。でもなー無くなる事なんてないだろうし…」
無くなる事はないはずで後ではいいとは思うのだが、こういう面倒なことは先に済ませてしまいたいのと、自分の安心できる場所に置いて余念を無くしたい雫が迷った結果、
「これ1回じゃ持って帰れないだろうし、往復して持ち帰ることになるはずだよね。結構重たいだろうし、少し身体が怠いけど…ステータス上げられるかも。やっぱ探索するのにステータスが少しでもあったほうがいいよね!うん、きっとそう」
と自分に言い聞かせ、先に運ぶことにした。
運ぶのには結構時間が掛かった。
普通に歩いても片道20分位かかって、1往復半したので、単純に考えても1時間はかかっている。
初めて鎧を持ったのだが、かなり重くて何度も置いて休憩したりして何とか持って帰ることができた。
ちなみに兜、篭手、胴上下、靴があった。
1回目で胴上下を運んだのだが、かなりきつかった。
ステータスを力に振っていなかったら確実に持ち帰ることはできなかったと思う。
やっぱりステータスは重要だなと雫は思った。
それからは、運び終わったのでステータスを見ることにした。
三上雫 レベル2↑
属性 水
体力 21(+4)
MP 17
力 30(+4)
敏捷 27(+2)
魔力 18
幸運 10 SP3
スキル 物質変化lv2
となっていた。
「やっぱすごいあがるなー。SPがおまけに思えてきたよ。」
今回で1レベル分上がってしまったことを考えると、実際おまけなんだろう。
でも、レベルをあがるときSP10貯めないのも勿体ないので、おまけだからと言って、捨てることはしない。
「取り敢えず力上げよう。レベルアップもするし、さっさと振って探索しよ。」
と言って力を上げた後、レベルがあがるのを確認し、探索に戻った。
防具一式があった場所まで戻り、そこから辺りを見渡しながら先に進む。
しばらくすると、小さな川が見えた。
「あ!川がある!魚がいればもう食料には困らないんじゃない!?」
小さな川ではあるが、横にずっと続いていた。
魚がいないか覗き込んだ雫は、初めて川に映る自分の顔を確認した。
高校生くらいの顔立ちで、結構顔が整っていた。
前の世界の時より可愛いかもしれない。とちょっと悔しく思いながらも、魚を探す。
探すというほど探してはいないが、結構泳いでいるのが確認できて雫は早速捕ろうしたのだが、
「どうやって捕ろう・・・釣りなんて釣り竿がなきゃ出来るはずもないし、銛をなんかで代用したとしても刺せるはずもないし・・・」
と、雫はどうするか考える。
網もないし、罠の作り方も知らない。
赤い布を使って捕ることも考え、靴を脱いで川の中に足を入れたのだが、それだけで雫を避けるように泳いでいってしまう。
それからも、木の棒で突っついたり、釣り竿を作れないかと材料を探したりしたりしたが前の世界の雫の知識ではもう捕ることも出来ないだろうと諦めかけていた。
それでも諦められず、川の横で体育座りをして川を眺めていた。
そろそろ夕方になってきたのか、あたりは暗くなってきて、今日は諦めて、水を飲んで腹を膨らませようと考えたとき、あることを雫はあることを思い付いた。
「そう言えば、初心者マニュアルにかいてあった水に関する魔法って、水を生成する以外にも使えるよね?」
攻撃の魔法があるくらいだ。動かすことくらいできるかもしれないと考えると川に手を着ける。
(どうイメージしようかな?水を飛ばす感じ?それとも水を浮かばせる感じかな?)
手をつけると、最初は避けていた魚も、しばらく動かないで止まっているとまた同じ様に泳ぎ始める。
暗くなって見えにくいが、出来るだけ魚がまとまっている位置を探す
その間に魔法のイメージを決めていると、4匹まとまって泳いでいるのが見え、範囲を決める。
ちなみに飛ばす方にすることにした。
理由は、水を浮かばせるほうが魔力を使うのではないかと思ったからだ。
ただえさえ今日は魔力枯渇しているのだ。時間がたったとはいえこんなところでまた魔力枯渇をするわけにはいかない。
(範囲はこのくらいのイメージで・・・飛ばす此方の方がいいよね・・・よしいまだ!)
と4匹の所に魔法を使った。
すると、イメージしたよりも大きい範囲の水が此方の方に飛び、地面に落ちる。
「やった!成功した!」
最悪使えない可能性もあったのだが、何とか使うことの出来た雫は喜びながら、ぴちぴちとしている魚を手で掴み、赤い布で包む。
暴れて逃げようとしていたが、逃がさないよう慎重に赤い包みで包んで縛る。
狙ったのは4匹だけだったが、範囲が広がってしまったからか6匹捕まえることができた。
ラッキーだったと思いながら、範囲が広くなってしまった理由を考えた。
「イメージが固まってなかったのかな?それとも下手だっただけ・・・あ!違うじゃん。」
すぐ理由は分かった。
「魔力のせいか!確かマニュアルに書いてあったのだと、魔力は扱いも上手くなるんだよね。」
魔力を上げれば、魔力の扱いがうまくなるのならば物質変化もそれが影響するのかな?と考えたところで、辺りが殆ど見えなくなっているのに気づいた。
「早く帰らなきゃ。」
といって、拠点に目印を見ながら小走りで戻っていった。
迷うことなく、戻れたのは幸運だったかもしれない。
途中あまりにも暗すぎて、木の棒に火をつけて走っていたのだが、それでも目印を探すのが大変だった。
最後の方は適当になっていたが、なんとか帰ることができて雫は安心していた。
「危ない危ない。もっと早く帰らなきゃだね。」
とあまり危機感のない様子で言い、取り敢えずは持ち帰った魚を焼くため、焚き火の準備をし、魚を比較的まっすぐな木の棒で刺して焼く。
それから、魔力が心配であったが、水の魔法を使って手を洗ってからステータス本を開き、ステータスを確認し振った。
三上雫 レベル3↑
属性 水
体力 21 (+2)
MP 18(+1)
力 37
敏捷 29(+2)
魔力 20(+2)
幸運 10 SP0
スキル 物質変化lv2
振った後のステータス。
SPは4ほどあったが力に全部振った。
帰りに小走りだったためか、体力と敏捷があがっていた。
魔力も魔法を使ったからだろう。
流石に驚く事も少なくなってきた雫は、ステータス本を閉じて斧の近くにいき、持ち上げようとする。
「ん!ぐぐぐぐっ」
うんともすんとも言わなかったが特に落ち込むこともなく、先ほどの位置へ戻り魚が焼けるのを待つ。
待っている間に朝考えていたお風呂に入る目標を思い出した。
「あー忘れてた。川で水浴びでもすればよかったなぁ」
と言い、少し残念がっていたがすぐに、明日はいればいいやと考え引き続き焼けるのを待った。
魚が焼け、少しかじって食べれることを確認すると、すぐに2匹食べた。普通に美味しい。
残りの4匹は赤い布で包んで明日の朝ご飯にする。
・・・赤い布はかなり汚れてきているし、明日にでも服と一緒に洗った方がいいだろうと思い、今日は取り敢えず寝ることにした。
適温になるマントにくるまり、目を閉じると、疲れていたようですぐに落ちていった。
これで色々あった二日目も終わりを告げた。
寝落ちって怖いですね。正直、少し消えただけでも絶望しました。