流れ星 第3章
~ハートのスタンプ~
沼を渡りきり、ワニさんとお別れしてから少し休憩。
トランプの扉ってどんななのかな?建物の扉のことなのかな?
そういえば水筒持ってないや。
沼の途中で果物を食べてはいるものの、喉が渇いてしまう。
とりあえずまた、果物の木があるかもしれないし進んでみよう。
少し進んでみると綺麗な小川が見つかった。
川の水って飲んでも平気なのかな?
川は底まで透き通って見えるくらいに澄んでいる。
美味しそうだけど…。
ぴょんぴょん。
あれ、後ろに誰かいるの?
後ろを振り向くが誰もいない。
ぴょんぴょん。ぴょんぴょん。
あれ?やっぱり誰かいる。どこだろう?
木から少しだけ顔を覗かせて、少女を見ているのは白いうさぎ。
どうしたらでてくるかな?
元気になるドングリ置いてみる?物は試しと目の前にドングリを置いてみる。
ぴょんぴょんぴょんぴょん。
好奇心がうずいたのか。
少女の目の前に飛び出て、鼻をひくひくとさせてドングリを嗅いでいる。
「うさぎさん、可愛い♪」
一瞬びくっとするが、逃げない。
「うさぎさんはお話できる?」
うさぎはキョトンとした顔で少女を見つめる。
「うーん。お話できる動物さんもいるけど、できない動物さんもいるのか。」
「でもこの子逃げないなぁ。」
ドングリは嗅いだだけで興味がなくなったようなのでしまっておく。
「うさぎさん、この川の水飲んで大丈夫かなぁ…。」
ポツリと呟く。
耳をピョコピョコさせて、川の水を舐める。
「うさぎさん、大丈夫って教えてくれてるの?」
また少女の顔を見つめ耳をピョコピョコ動かし水を舐める。
「うさぎさんありがとう。飲めるって教えてくれてるのね。」
そう思い、川の水をすくって飲む。
美味しい!さっぱりして軽やかで体に染み渡る。
「うさぎさんありがとう。」
耳をピョコピョコ動かしてくれる。
返事してくれてるのかな。嬉しくなり少女は笑顔を浮かべる。
「うさちゃん、私はせっちゃんって言うの。」
「めがみさまにお使い頼まれてて、トランプの扉探してるんだけど知ってるかな?」
うさぎはピョコピョコ動かしたあとぴょんぴょんと跳ねて行ってしまう。
あっ!
行ってしまったと思ったが、だいぶ先に進んだあと、止まりこちらをキョトンとした顔で見ている。
「うさちゃん、また教えてくれてるの?」
喉を潤し、うさぎの後を急いで追いかける。
せっちゃんが近づくと、うさぎは離れ。遠くでとまる。
また近くなると離れて止まりを繰り返す。
あれは?
どうやらちゃんとうさぎは道案内をしてくれていたようで、トランプの扉がそこにはあった。
とりあえず扉のドアノブを回してみる。
カチャっと音を鳴らし、開いていく。扉を開いた先には普通に木がたちならんでいるだけ。
「?」
不思議に思いつつもその扉を潜ると。
ぐわぁんと視界が歪み暗くなっていく。
「起きて起きて」
誰かが呼ぶ声がする。でも誰かな?
「ねぇねぇ起きて起きて。ハートのスタンプいらないの?」
ハートのスタンプ?あっ、トランプの扉。スタンプ。めがみさまが言ってたやつ?
っん…ゆっくり目を開くと。
「おはよう、アリ…じゃなかった、えっと」
「せっちゃんだよ?」
まだ少し目が霞む。
「おはようせっちゃん。ここはハートの国。困ってる人を助けるとスタンプをもらえるよ♪」
「困ってる人?」
「そう、ここはハートの国の遊園地。」
「色々なお客さんが居るんだ。でも遊園地だから困ったこともいっぱい」
「そんな困った人を助けるとハートのスタンプがもらえるんだ。」
「ハートのスタンプ?」
「そうハートのスタンプ。ありがとうって心に押してもらうんだ」
わからないけど、困った人を助けてあげるといいのかな?
「えっと、あれ?道案内してくれたうさぎさん?」
「あってるけど違うかな。僕は僕。あっちの世界はあっちの世界さ」
せっちゃんには難しかしかった。
でも、困ってる人ってどこにいるんだろう…。
「うさぎさん、どこに行けばいるのかな?困ってる人?」
「それはせっちゃんが捜さないと。それが役割だからね♪」
そっか。うーん。せっちゃん遊園地まだお母さんとお父さんと一緒の時にしか行かないから、一人は不安だな…。
困ってる人助けるのは好きだけど…。遊園地は広いから…。
「とりあえず、地図は渡しておくよ♪あと、この遊園地のフリーチケット」
「この遊園地の乗り物や食べ物も自由に買うことができるからうまく使ってね♪」
「た・だ・し・人にあげちゃったり、無くしたりしちゃうと同じのはあげられないから気を付けてね。」
「まぁお姉さんなら大丈夫だろうけどね♪」
せっちゃんの燃えるキーワードナンバーワン。
お姉さんなら大丈夫。
せっちゃんの熱い戦いが始まる。
まず地図を広げると、円形となっており大まかに4つのエリアに分かれていた。
スペード、ダイヤ、ハート、クローバー。
スペードエリアは闘技観戦ができるアリーナ
ダイヤエリアはお土産屋や宿泊ホテルなどの施設
ハートエリアはパフォーマンスやパレードを開催する舞台
クローバーエリアはアトラクションがある。
熱い戦いに負けぬよう
せっちゃんはポップコーンを装備した。もぐもぐ。
ポップコーンを頬張りながらスペードエリアに向かう。
作戦は簡単!元気のない人に元気ドングリを渡すだけ!えっへんっ!
と言うことで。フリーパスで観戦席に入る。
丁度今から始まるようだ。
ポップコーンをもぐもぐ。
おっきいトカゲや、クマさんとかカンガルーさんとかが頑張っている。
せっちゃんには面白さは伝わらなかった。
でも、傷だらけの動物さんを見るのは悲しかった。
そうだ!
せっちゃんは作戦を変更することに。
せっちゃんはフリーパスを使い、選手控え室に向かう。
こんこん。
せっちゃんはちゃんとノックしてから入るです。
「空いてるよ。」
中から返事が返ってきた。
「失礼します。」小さくお辞儀をするのを忘れない。
「おや、お嬢ちゃんどうした?迷子か?」
「あの、これ皆で使ってください!」
ワニさんからもらったよくきく薬草を取り出し渡す。
「これはなんだ?」
トカゲさんが受けとる。
「えっと、傷だらけなので、皆さんに使ってもらいたくて…。」
クマさんがこちらに歩いてくる。
「これは薬草だね?」
クマさん、もふもふしたい…。はっ。
「そうです。お友達にもらったんですけど。よくきくって…。」
皆の視線が少女に集まる。
えっと…。不安になる。もしかしていらなかったのかな。
でもワニさんよくきくって…。あぅ…。
「ありがとうよお嬢ちゃん。」
座っていたカンガルーさんがありがとうって言ってくれた。
不安だったぶんちょっと涙がでる。負けないもん。
「お前らなに黙ってる。怖くて嬢ちゃん泣いてるじゃねぇか。」
カンガルーさんが困ったような顔をしている。
「ごめんよ、嬢ちゃん。ありがとうよ。皆で使わせてもらうな。」
トカゲさんが頭をポンポンしてくれた。
っひぐ…。
「ごめんごめんトカゲのおっちゃん怖いよな。」
クマさんの声。
「わざわざ薬草持ってきてくれるなんて。嬉しいよ。ありがとう。」
っひぐ…。あぅ…。
ここまで色々な素敵な物や動物と友達になれたけれど、少女の心の天秤は不安に傾いていて。
これはたまたま。
涙が流れた。
「迷惑…ひくっ…じゃなかった…です……?」
「嬉しいよ。嬢ちゃん。」
「迷惑なもんか。不安にさせちまったな。」
「これで傷の治りが早くなる。今日居ないやつらにも使ってもらうからな。」
「ひくっ…ちょっと…不安で…。お使い頼まれてて…。」
「でも本当はお母さんに会いたくて…。」
「そうかそうか。」
クマさんがそっと抱き締めてくれる。
クマさんフカフカ…。少し気持ちが落ち着く。
こんこん。
ノックと同時にあの白いうさぎが入ってくる。
「アリ…あっとせっちゃん、ハートのスタンプもらえたようだね。」
クマさんから少し体を離しうさぎを見る。
うさぎは言葉を続ける。
「太陽の女神様のお使いもうあと少し。頑張れるかい?」
「疲れて眠りたいなら、あとは任せてくれてもいいけど。どうする?」
せっちゃんの心は揺れ動いた。お使いやめてもいいの?
「お嬢ちゃんはせっちゃんって言うんだね。」
「せっちゃんいいかい?本当に辛くて、体が動かなくて、心が悲しんでいるならやめてもいい。」
「けれども、まだ歩けるなら。歩いてごらん。きっと素敵な場所に辿り着くから。」
クマさんの言葉が揺れ動いた心を支えてくれる。
本当に?素敵な場所に行けるの?
せっちゃんはそっとクマさんの目を見つめる。
言葉がなくても通じる。
静かに頷く。
トカゲさんに、カンガルーさんをみる。
目だけで通じ合う。
うさぎさんを見つめる。
うさぎさんはどこか嬉しそうに頷く。
「お使いが終わったら、また遊びにおいで。そのチケットも持っておいでね。」
来たとき同様、ぐわぁんと視界が歪み暗くなっていく。
今回の事を振り返る。
綺麗な川でうさぎさんと出会った。うさぎさんはさっちゃんを助けようとしてくれてたんだ。
水が飲める事を教えてくれて、トランプの扉も教えてくれた。
扉の先はハートの国の遊園地。
そこにもうさぎさんは居た。
やっぱり助けようとしてくれてたんだと思う。地図をくれて、何でもできるチケットまでくれたんだから。
遊ぶ時間はなかったけど、ふわふわなポップコーンは美味しかった。
トカゲさんに、クマさん、カンガルーさんに不思議な力を貰えた。
ちょっと寂しくて泣いちゃったけど。
うさぎさんの嬉しそうな顔が少し嬉しかった。