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「――――同じ道を何度歩けば貴様は気が済むんだ、清涼」


「春明。何度も言わせるな。私が右だと言ったら右だ」


 晦冥広がる道の中心地で二人の男が言い合っていた。


 彼らは現在、外灯一つ燈らぬ不気味な住宅街の細道を驀進している途中である。

ブロック塀の向こうの大きな常緑樹が葉を揺らし、盛大な音を立てるが、苛烈な舌戦を繰り広げている男達にとってそれは猶予すべき事柄で無かった。


「お前はどうしていつもそうなんだ! さっきから似たような道を右へ左へ、いい加減自分の間違いを認めて方向性を明らかにしろ」


 耐えかねたように荒げた声を上げたのは春明と呼ばれた青年だった。


 白い革のジャケットに黒いジーンズ。精悍な顔立ちに浮かぶ切れ目の双眸は闇が色を落とし込んだように影が落ちている。青年の名は藤原春明、そして隣り合って肩を並べる青年の名を神代清涼と言った。


 瑠璃色にほんの一滴磨いた紺を落とした色彩の狩衣を嫌味なく着こなす青年は、手にした檜扇の飾り玉を風に揺らしながら苛立たしげに閉じた。


 金糸の飾り紐が衝撃を受け宙に舞う。


「間違い? ふん。この私が道を間違えるなどありえん。そもそも聞くが、お前にこの複雑怪奇な場所で正しい道筋が分かるのか?」


「な」


 扇の先端を無闇へと向ければ、小さな白い霧の気泡が絡まりついた。


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