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 ―――――彼女が呼んでいる。早く、助けに行かねば。


 






 白雅十二年、二月十四日。



 国号が幸寿と改められて千年。首都が殿朝と定められてから百有余年。


 幾たびも重ねられた戦火を避けながら、焼失を免れた文明の名残と新しく来訪した近代建築物とが共存し統合し合う雑然とした街。縦横無尽に張り巡らされた交通網と、立ち並ぶビル街。蟻の子が地面を這うように蠢く人の影で塗りつぶされた道という道。衛星写真をして煌々と光を放つ眠らない街、魔都殿朝。


 魍魎跋扈する闇夜の街に、一人の少女が降り立った。


「やっと。ついた」


 都鉄鳳羽東線を終点とする四都木駅に到着した彼女は、二重に防音加工が施された列車の扉が開くのを見るともなしに見、軽い足取りで真っ先に白張りのタイルの上に降り立った。


「想定より、ずいぶん遅くなったなぁ。みんな心配してるかな? 後で電話しなくちゃ」


 明るい性格をそのまま現したかのような瞳と、幼いが可憐な顔立ちに艶光る桜色の唇。全体的に華奢な印象を与えるのは、少女の背全体に圧し掛かる大振りの濃紺色のスポーツバックのせいだろう。頭頂部で結い上げた甘栗色の髪の毛が、うごくたびに揺らめいた。    


 その直後、列車の下方から熱を帯びた風が同色のセーラー服のスカートを膝上ではためかせる。同時に、襟元の瑠璃色のスカーフが金魚の尾のように泳がせた。


「うわっ!」


 少女の名は殊葉。


 姓は八津原


 歳は十七。


 故郷の良竪からとある事情で、単身上京した「田舎娘」である。


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