プロローグ
「誰か…誰か…!」
泣き叫ぶ少女の声が聞こえる。それはまさしく少女の声だ。年端もいかないであろう女性の声。
あたり一面砂で覆われた、砂漠のような場所。隕石の余波で建物もなくなり、ただただ、荒野か砂漠が広まる景色の中をその助けの叫びが響き渡る。
だが、砂漠にあるのは声とそれを発した主だけではなかった。
ザッ…ザッ………。
そんな音をたてながら砂漠を歩く男性がいた。いや、男性という表現よりも少年という表現がしっくりとくる。中性的な顔立ちをしており、とても整っている。だが、その少年の容貌が全てを打ち消していた。
体は土だらけ、ボロ布をかけただけのような服、おぼつかない足下、虚ろな目。
まるで精神異常者のような容貌だった。そしてそれに拍車をかけるものがもうひとつ。
腰と手に…血で染まったナイフ。
心なしか、彼のいる空間は鉄臭さをまとっているきがした。
だが、いかにも精神異常者の顔をしている少年は少女の叫び声にビクッ…と反応を示した。
それはなぜなのか。
なにが彼を動かしたのかはわからない。
ただ、彼は自分の探しているものを見つけたかのように走り出した。