2話
まずは落ち着いて状況を整理しよう。まずはなぜ寝ていたのか。意識を失う前は何をしていたか。思い出せないな…
大人しく説明とやらを聞くしか無いか。女性の声が再び聞こえてくるのを待つ。
「皆様ようこそ私の世界”アジールヴェルト”へ。これから皆さんには百対のレジェンダリーボスを倒していただきます。」
皆様ということは僕一人ではないのか。
「皆様お気づきだと思いますが、コレはゲームです。ですが死ぬと復活の方法はありません。倒したレジェンダリーボスが五の倍数に達した時は全員復活させます。生き残りがいなくなった時点で私の勝ちです。レジェンダリーボスがいなくなった場合は皆様の勝ちです。」
「混乱されている方もおられると思いますが、参加者の皆さんが足りなかったのでこちらの方でランダムで選びました。望んで参加された方が五千、強制的に連れてきた方が五千ちょうど一万となっております。それでは皆さんご健闘を。」
女性が言い終えると同時に地面から浮き上がる感覚。そして目の前が暗くなったと思ったらすぐ明るくなって砂漠のオアシスをイメージしたような街の中の巨大な広場に転移したようだった。
「うわすっげー人。あんたランダム?」
隣にいた、茶髪で背が高くつり目な男が話しかけてきた。広場はうるさくなってきた。強制的に連れて来られたんだ。リアルのほうが気になって仕方ない人達もいるだろう。
「え、そうですね。望んで参加ではありません。」
考え事をしながらだから少しぶっきらぼうになってしまったかもしれない。怒ると怖そうだし、もう少し丁寧に応対しよう。
「情報。欲しくないか?強制的に連れられて来たと言ってもコレはゲームだ。楽しもうぜ。スタートダッシュは重要だぜ。」
なんだこいつ。僕に情報を与えることで彼に利益はないじゃないか。詐欺か?よくわからん。
「情報って始まったばかりで分かっていることがあるんですか?それに僕に情報を与えることであなたにメリットはあるんですか?」
「何だ質問攻めだなー。特に意味はねーよ。お前がある程度強くなることで攻略が早くなるだろうなって思っただけだ。」
あくまでも善意ということか。よくわからないし信じてもいいか。そんなことより広場のほうがヒートアップしてきてうるさいからこの場所から離れたい。
「分かりました。情報を頂いてもいいですか?後、うるさいのでこの場所から移動したいです。」
僕らは広場の外側にいたので少し人混みをかき分けるだけで違う場所へ移動できるだろう。
「ああ、情報と言ってもまだ始まったばかりだから何ももっちゃいねぇ。とりあえずMOBがPOPする場所まで移動するぞ」
ああ、彼も知っていることがあるわけではなく、自分の経験からこのゲームの仕様、攻略の糸口を回りより早く掴めるという自身があるのだろう。MOBとは敵モンスター、POPとは沸く、出現するという意味だ。僕も少しはゲームをやっていたのでそれくらいならわかる。
「とりあえず俺達がしないといけない事は、クエストを探す。武器、防具の店を探す。MOBがPOPする狩場を探す。と手探りだらけだ。とりあえずフレンド登録して二手に分かれて走るのがいいな」
視界の右端にふわふわ浮いているボタンを押すとメニュー欄が出てきた。名前を決めなくてはいけないらしい。とりあえずこの世界では本名の一文字を借りて、SORAと名乗ることにしよう。