表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

 読み専期間が長く続いたので、さくっと終わる話をとりあえず書いてみました。

 盛り上がりもなさそうですが、リハビリだと思ってかる~い気持ちで見守って頂けると幸いです。

 

 チャイムがなると同時に鞄を掴み、校門を出ると一目散にお爺ちゃんの家に向かって走る。途中で自分の家を通るけど寄らない。一度荷物を置きに寄った時に母さんに見つかって行かせて貰えなかったから。



「今日はまた早いな。足が速くなったんじゃないか?」

 そうかも知れない。通うようになってからまだ体力測定はないんだけど。お爺ちゃんの家は山の中にあって坂道が続いてるんだけど、最近は一気にかけ上がれるようになっていた。


「そんな事より異世界の話して」

 そうお爺ちゃんは異世界人なんだ。

 隠すつもりがないみたいで家族みんな知っている。

 お父さんは「あの人のおかげで道をはずす事なく仕事につくことが出来た。最高の反面教師だったな」なんて言っていたし、お母さんはお爺ちゃんの話をするだけで怖い顔になる。


「そんな事より今日は何の話してくれるの」

「そんなとはなんじゃ、体力や足の速さは冒険者にとって大切な能力じゃぞ。ふむ。では今日は冒険者についてにしようかの」


 僕、木村洋の最近のお気に入りはお爺ちゃんから異世界の話を聴く事だ。

 お爺ちゃんが昔した伝説の財宝を巡る冒険の話、海賊王の娘との淡い恋の話、日本にはない食事や文化の話。どれもドキドキわくわくのスペクタクルアドベンチャーだ。


 お爺ちゃんは麦茶の入ったポットとグラスを2つもって家から出ていくので、おとなしく付いていく。と言っても行き先は目の前だ、庭に置かれた丸太のテーブルにグラスを置くとよく冷えた麦茶を注いでくれるので、反対側に廻って椅子に座る。

 この椅子も僕が来るようになって新しく作ってくれた僕用の、少し背の高い椅子だ。


「こないだ洋が持ってきたゲームにギルドからの指名依頼と言うのがあったろ? ありゃ嘘だ」

「高ランクの冒険者に特別な依頼ってやつでしょ?なんで嘘なの」


 ゲームの中では亜種とか特別な魔物を倒せる依頼で、その指名依頼をクリアすると貴重な素材をゲット出来たりランクを上げるキークエストになってたりしてる。


「例えば世界で10組のパーティしか討伐出来ないような危険な魔物がいたとする。そうなれば受けてくれるパーティには冒険者ギルドは充分な報酬を渡すし、多少素行が悪くてもお金に汚くても魔物から受ける被害より少なければ諦める。無理強いすれば、元が強制される事を嫌って冒険者になるような奴らだ。さっさと安全な場所まで逃げられておしまいじゃ」


 丁度よく木陰になっているこの場所でお爺ちゃんは麦茶を一気に飲みきると話を始める。これが僕たちの話が始まる合図だ。

 でも、そうなのかな? そんな難関をクリアするから冒険者なんだと思ってた。


「逆に1万組のパーティが達成出来る…… 例えば庭の草むしりとしよう。初心者用によくある依頼だな。

 あるパーティは炎の魔法で草を焼き払った、仕事は一瞬で終わるし空いた時間に他の依頼もこなせるだろう。またあるパーティは見えない場所で手を抜いた。草むしりの依頼なんて真面目にやってたら1日仕事で報酬は雀の涙。木貸宿って言って寝具もない大部屋に泊まって飯食べたらそれで報酬は無くなっちまうから、こちらもよくある事だな」


「でもそんな事したら庭の持ち主さん困っちゃうんじゃないの?」


「理解が早いな。そう今までのは全て冒険者の言い分で、依頼主が望んだ結果ではないのは明白だ。そんなパーティは嫌われるし、次から依頼を受けようと思っても依頼主から断られる。そして真面目に根から抜いてくれるパーティには指名料が多少かかっても指名したくなるし、1万組も受ける人間がいるんだから依頼する方は選り取りみどりだ」


 面白いけど、今までのスペクタクルアドベンチャーな話とは違う気がする。ドキドキわくわくってよりも土でドロドロで汗がだくだくって感じだ。


「草むしりなら冒険者も嫌がるが、これが隣村に現れた蜂の魔物の討伐なら?これも初心者の登竜門だが範囲魔法で大切に育ててきた果樹を一緒に焼き払ったり、全滅させたか確認もせず誤魔化すようなやつに頼みたいか?」


 うん、そんな人に頼みたくないな。だってお金払って頼んだのに、冒険者の人が帰った次の日にまた蜂が残ってたら頼んだ意味ないもの。


「全滅してくれるのは当たり前。もっと言えばちゃんと村人にもお行儀よくし、村で1泊でもして村の名産品の蜂蜜酒でも買い込んでくれれば最高だな。そうすれば依頼にかかったお金が村に戻ってきてくれるんだからな」


 村の人がお金を払って冒険者の人を呼んで、冒険者の人が村で買い物してお金を払う。

 確かにこれだと村の人はお金かかってないのか。


「今日の話はここまでじゃ。体力も付いてきたようじゃし、前から言ってた剣の修行をつけてやろう」

「ほんとに! 僕すぐに準備してくるね」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ