世界には私と……
「ななみ様、起きて下さい!」
遠くから声が聞こえる。もうちょっと。あとちょっと寝かせてよ。
「なーなーみーさーまー!」
ん?私様付けされる覚え無いんだけど?
バッ
勢いよく起き上がりすぎて、
ガンッ
なにかに頭をぶつけた。
「な、なにするんですかぁ〜!痛っ〜」
なんだこいつ。妖精みたいに羽が生えてる。飛んでるみたいだ。私がぶつけたせいで、ふらふらだけど。
「あー、でもよかったです~。ななみ様もうお目覚めにならないかと思いまして、わたくしどれだけ心配したことか」
こんなやつに心配されてもなぁ……。そうだ、お母さんどうなったんだろう。
その時初めて周りを見回した。
「⁉」
周りには何もなく、ただ空間が真っ白で埋めつくされているだけだった。
「ねえ、ここは一体どこなの?」
怖くなって聞いてみた。
「ここは空間の狭間です。訳あってななみさまをお救いするため、ここに一時避難させてもらっています」
「く、くうかんのはざま?」
聞いたこと無いな場所だ。
「空間と無空間の間の世界です。それはともかく、これからの事を説明いたしますね!」
空間と無空間?なんの事だかさっぱりわからない。
「昨日の竜巻で、地球は壊滅的な被害にあいました。人間はほぼ全滅、動物も魔法動物以外ほぼ生き残りゼロの状態です。自然環境だけはラハーク様が元通りにして下さいましたが……」
「ちょ、ちょっとストーップ!!全滅?ラハーク様?一体どういう事?」
「ああ、そうか、ななみ様はまだ何も知らなかったのですね、そこから説明いたします。この地はラハーク様がお治めになっているはもうご存知ですね?」
「??あの聖書に出てくるエホバってのなら聞いたことあるけど……うち仏教だし」
「なんと!ご存知でない!?確かに地球に伝えられているのはいくつか説があるのですが……まあそこはとばしまして、そのラハーク様でも止められないくらい、魔獣が増えてきております」
「魔獣?」
「なんと!魔獣もご存知ない⁉魔獣とは世間一般でいう人間が見る事のできない、いわば自然災害を引き起こす生物の事です。そいつのせいで、あの竜巻が……!」
なんか訳わかんなくなってきた。
「つまり、その魔獣のせいであの竜巻は起こったと?」
「そのとおりです。そして、ラハーク様は二人の人間をお選びになりました。」
「二人?」
「はい。それがななみ様とアルク様です。魔導士となり、この世界から魔物を消し去るのです!」
アルク?誰だそれ。
「そのアルクって人はどこにいるの?」
「精霊サフィアが担当しております。おっと、わたくしの自己紹介がまだでしたね。わたくし、精霊マフィアも申します。ななみさまのお世話担当となっております」
「よ、よろしく」
「さあさ、それでは魔法の種類を選んでもらいましょうか」
なんか、パソコンのRPGみたいな事になってるな……。悪い夢でも見てるんだ。
「その前に、お母さんとお父さんは生きてるか教えて!」
これを先に聞かないと。ほぼって言ってたからまだ可能性が残ってるかもしれない!
「……残念ながら……」
「えっ!……」
そんな、こんな急に……しかも竜巻で亡くすなんて……!
涙がこぼれ落ちた。
「お気持ちはお察しします。……魔獣を倒す事は父君、母君の敵討ちにもなるのです!さあ、魔法の種類を選びましょう!火、土、水、風、雷の中からお選び下さい。効果はそれぞれ……」
「ゲームと一緒でしょ。わかるからいいや。ほんっと、魔獣なんて許せない!わたし、風の魔導士になるっ……!」
「や、ちょっ、ちょっと違うんですが……」
ピカーーンッ
体が緑色に光った。服も今まで着ていた部屋着とは違う、動きやすそうな緑のワンピースに変わっていた。緑の玉が付いた杖のような物も横に転がっている。
「あなたは風の魔導士になりました。その服は始まりの服です。防御率はまだ低めですが、合成魔法を使えるようになると、まだまだ防御率はアップします」
「ほら、ゲームと一緒じゃない」
「まあ、違う点はおいおい……。はい、魔法書です。どんどん強くなっていくのですよ!」
分厚い本をわたされた。パラパラめくってみると、最初のページ以外真っ白だ。
「これ、真っ白じゃない」
「レベルが上がるにつれて新しい魔法が増えていきます。さあ、それではアルク様もお待ちになられているでしょうし、地球に戻りましょう!」
『ワールカセット!』
マフィアがそう叫ぶと、周りが銀色に光った。