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Sweet drop  作者: 麻弥
7/9

同じ色の飴玉

彼氏の嫉妬、その後いちゃいちゃは最高潮へ。


                  

「忍、その手離せ、コラ」

忍が明梨の手を握り歩いてくるのを見た砌が、仁王立ちのまま喚いた。

さりげにジェラシーを感じているようだ。

「おや、それは俗に言うジェラシーかな、砌くん。

みっともないなあ。男の嫉妬ほど醜い物はないんやで?」

忍は砌を必要以上にからかっている。

相手のつっつきやすい性質を知り尽くしているが故だ。

「明梨は俺の女だぞ」

恥ずかしげもなく砌が言い放った。

忍の隣で、明梨はおかしそうにお腹を押さえている。

「い、今時、俺の女とか言う人がいたんだっ」

ふふ……あははは。

「お前の前で明梨ちゃんの手なんて何度も握ったことあるで。

何で今更目くじら立てて怒るんや? 」

「あ、そういえばそうだよ、砌。

忍さんは男友達でも特別なんじゃなかった?

3人で一緒に過ごすのだって当たり前って感じだし」

「考えが変わったんだ。今日以降忍と二人っきりでは

会うなよ! いいか、明梨、絶対だぞ」

「横暴だよ」

「そうやそうや、俺と明梨ちゃんの絆を裂こうとするなんてあくどいぞー」

「黙れ、忍! お前だって男じゃないか。明梨を触れさせたくない」

「明梨ちゃん、こいつどうやら明梨ちゃんを誰かに盗られそうで怖いんやて」

「な!それもこれもお前があんな……」

「あんなって何? 」

『今度、明梨ちゃん泣かしたら、お前から彼女を奪うで?

ええか、覚悟しとけ』

あれは砌が突っ走ろうとする事への牽制だったんだろう。

それでも危ないと思った。

明梨を傷つけ泣かせたら何気に本気で取られそうだ。

絶対的な味方となって彼女を守るのが目に見えている。

妹みたいやと言っていた彼だったが、もう信用できるものか。

”みたい”は妹とは違う。恋愛対象として彼女を見ることも在り得る。

彼は関西弁で喋り世を渡る術に長け、加えて男前だ。

実は未だに彼の身長が抜けない。あと5cmあればと内心思っている。

まあ178あるんだから贅沢言ってるかな。

砌は心の中で独り呟いていた。

「な、何でもない」

「そうやね。何でもないよ、明梨ちゃんは気にせんでもええ。

砌はあほらしい危機感っちゅーもんに脅えとるだけやから」

「自信ないんや? 」

「あるに決まってるさ」

笑いながら睨み合う二人に明梨は絶句した。

「と、とにかく中入れてよ、砌。暑くて死にそう」

明梨は額から流れ落ちる汗を拭いながら言う。

夏の暑さもこの二人の熱さには敵わないかもしれないと忍はこっそり思う。

「ああ、入れ」

砌は忍が握る明梨の手を無理矢理引き剥がし、

今度は自分がその手を引っ張って家の中へ入れた。

後から忍も続く。

「お前が大人しく出迎えるわけなかったな」

忍は笑いがこらえきれない。

「いらっしゃーい、後で飲み物持って行くわね。ごゆっくり」

「はーい、ありがとうございまーす」

奥から、明るい声が客人を歓迎していた。

明梨と仲良しの砌ママである。

「ほんま、いつ聞いても可愛い声やなー、ママさん。

姿見せてくれても良いのに」

「出てくるなと釘を刺してるからな」

ぼそっと砌は言う。

「なんで? 」

明梨がきょとんと首を傾げた。

「は、恥ずかしいんだよ、母さんのテンションはエベレスト並だからな」

「お前、にとると思うで」

「どこがだよ! さっさと行くぞ、部屋」

忍の言葉に砌は顔を赤らめ、早足で階段を上がる。

勿論、腕を引かれている明梨も一緒だ。

賑やかに3人は階段を駆け上がる。

うう、砌ママうるさくしてごめんなさい。

砌が部屋の扉を開けるとエアコンの風が駆け抜けた。



「ふう……気持ちいい」

私はこの前の気まずさを忘れ、砌のベッドにダイブする。

「極楽ーー」

「オイ」

砌が何か言ってるけど気にしなーい。

「明梨ちゃんのペースに振り回されぱなしやな」

ちらと向こうを見れば忍さんに苦笑されてる。

恥知らずって思われたな、絶対。

「明梨、無自覚なのもいい加減にしてくれよ。

こっちがどういう気分になるのか分かってないだろ? 」

「そんなとこが明梨ちゃんの可愛いとこやろ。

そういうとこ好きなくせに」

「うっ」

砌!?

恥ずかしいけど嬉しいじゃない。

ばたばたと足を動かす。

水泳のバタ足みたい。

「いくつなんだよ」

「まあまあ」

「座れや」

とっくに座布団に腰を下ろした忍さんが砌を促している。

「お前が言うな」



ふう。

とりあえず、落ち着け、俺。

今日は仲直りの日じゃないか。

「どうせなら、俺の目の前でいちゃついてみせろや」

「え」

明梨がきょとんと目を見開いた。

「そんなことできるわけ……」

俺はないと言おうとしたが、できないこともないなと考え直した。

座ろうとしていた場所から立ち上がり、明梨のいるベッドに向かう。

「砌?」

「さすが男らしいやっちゃ。覚悟決めたか」

ニヤニヤと忍がこっちを見ている。

「……人の目の前でそんなこと」

明梨が、戸惑っている。

こういう時だけそんな反応すんじゃない。

もっと前に恥らうべき箇所があっただろうが。

俺は、明梨の寝転がっている隣に横たわった。

「……な」

明梨が身を捩り俺から離れようとしている。

「ここで引き下がったら男やないで」

忍が真面目な顔でこっちを観察していた。

どこまで本気なんだよ、こいつ。

「私嫌なわけじゃないんだよ?

砌が大好きだし抱きしめ合ったりしたいし」

うわ、んな可愛いこと言うなよ。

俺はよろめきかけた。

「うわああっついなーお前ら」

忍はパタパタ手で仰いでいる。

「ちったあ静かにしやがれ」

びしっと言い放ってやった。

「し、忍さん、あの……」

「心配せんでも本番始まる前に出ていったるからな」

「本当に出て行ってくれよ? 」

顔を赤らめながらも少しも逃げようとしない明梨。

我慢しようと決めていたが、これはOKということか?

「砌の気持ちが聞きたい」

ベッドの上で向かい合っている体勢で明梨が、おそるおそる口を開いた。

「私の事好き? 」

「好きだ」

明梨の目をじっと見つめ、俺は言う。

嘘偽りのない本心を。

「良かった。私も好き、大好き」

「わっ」

明梨が抱きついてきた。

「く、苦しい」

首に腕を絡められている。

「そこまで大げさに悩むことなかったみたいやな。安心したわ」

忍が柔らかく笑い部屋を出て行く。

と思ったら一度振り返り、

「頑張れよ」

目だけで笑いやがった。

どういう意味だよ。

パタン。

扉が閉まると二人きりということを妙に意識してしまう。

「忍さんはともかく、ママいるよ? いいの? 」

「関係ないだろ」

「……うん」

「私ね、夢見てたの」

明梨は俺から離れ、ぽつぽつと語り始めた。

「砌の行動が性急過ぎてこんなの違うってついていけなかったんだけど」

ごめん。

「好きな人の隣で目を覚ますっていいなって」

お前は本当に純真なんだな。

「勿論、子ども同士が一緒に手をつないで眠るってことじゃないよ? 」

「うん」

「だから……その相手が砌だったらなって」

明梨の心臓の音が聞こえてくる。

俺の心臓も同じ音がしていた。

自然な動作で明梨を抱き寄せる。

「明日、どっか行きたい所ある?」

「どこでもいいよ、砌が一緒なら」

明梨が俺の背中に腕を回し、抱きついてきた。

「今日はずっとこうしていようか」

「そうだね」

くすりと俺は笑い、明梨も微笑んだ。

幾度かキスを交わした。

甘く優しいキス。

激しく想いを伝え合うキス。


このままの関係が続けば、二人とも同じ気持ちで、同じ場所へと行ける。

そう思ったから、抱きしめるに留める。

ふわり触れ合っているだけで今は幸せだ。

お互いに焦る必要はないのだから。


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