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竜姫  作者: 月下部 桜馬
プロローグ
8/33

8.

すみません。遅くなりました


あたしは現在…昨日自分で整えた藁の上に正座っちゅう結構辛い状況。しかもすぐ周りを竜に取り囲まれるという…ごっつ微妙な感じ

頼みの綱、側に居た筈のレイレイは何でかあたしをこの竜舎に連れてきてすぐ『ちょっと用事で出かけるでしゅ。兄しゃま雅しゃんを宜しくお願いしましゅ』とか言っちゃってまたクルンと消えてもたし…


…残ったのはあたしと、5匹の竜。もちろん全部とにかくデカイ


蛇に睨まれた蛙…

あれって例え話やったよね?リアル捕食のことわざとちゃうかったよね?


絶対周りから見た現状リアル捕食なんやけど…恐怖。


そんなあたしがびびってるのを知ってか知らずか、竜達はあたしの遥か頭上で普通に会話しとる。もちろんレイレイへの口止めもあって、あたしに言葉が通じとるなんて事は全然思ってへんらしい…まぁ好き勝手に喋るわ喋る。



『レイジルが連れてきた人間という事は…どういう事だ?』


右前方の竜が鼻頭で頭を嗅いでくる…羞恥心万歳。


『さぁなぁ~』


左後方の竜が爪らしき物でつついてくる…地味に痛い


『………』


無言の左からの視線が痛い…ってか言いたい事があるならはっきり言うてや


以上、全部青い鱗の竜。つまり青竜いうことはわかる。

せやけど青言うても皆同じ色やないみたいで、濃さとか鮮やかさが微妙にちゃう。


さっきレイレイを迎えに来た「グラン」て一匹だけ飛びぬけて鮮やかな色の竜はちょっと離れた定位置と思われる場所で丸くなっててこっちを見る気配は無い…興味ないんかいっ!!




残るは一匹の竜やけど、だらしなく開いた口から涎ダラダラやで…


『なぁ…これ食っていいのか?』


あほの子か?この子はあほの子なんか?

レイレイの言葉聞いとった?ねぇ!頼むっちゅうてたよ?


えまーじぇんしぃ、えまーじぇんしぃ…まっすぐ前方からこっちを見つめるこいつが一番危ない。


『バルク、さすがにそれは不味いだろぉよぉ』

『不味いって人間の味がか?』

『ばかやろぉ~違うだろうがぁ、レイジルに怒られるってんだよぉ』


ガハハと笑いあう竜達…いゃ、全然笑われへんし、川柳みたいな言葉遊びで爆笑とかほんまいらんしな。


こんな状況でも一言も発する事なく正座で人形の如くいた自分を褒めてやりたい…いゃもぅ拍手喝采もんやで…だってほんま発狂したいもんっ!!

どうせ発狂するんやったら、その前にとりあえずバルクはどつきたいっ!!


レイレイ、ほんまこんな中に放りこむだけ放り込んでどっか行くとか…ひどすぎるやろ

頼むからはよ帰ってきてぇ~!!




そんな心底疲れる竜達の会話がまだまだ永遠に続くと思われた時に希望の光が差し込んだ


「りゅ、りゅ、りゅ、…竜様!!!みみっ水をお持ちいたしました」

「っ!!」


ぼ、坊ちゃん先輩きたぁ~っ!!!

坊ちゃん先輩!!今まで心ん中で貶してすんません!!お願いやから可愛い?部下助けたって下さい!!


「ぼっ!!」

『ぐぁぁぁっ!!!』


地面が揺れるほど響き渡る咆哮。

「坊ちゃん先輩!!」って叫ぼうとしたあたしは咄嗟に体が竦んで声なんてでぇへんかった。声の発信元はさっきまで寝てたはずのグラン。


突然叫ぶとか意味わからんしっ!!

聞き取れへんかったっちゅう事は、言葉とちゃう…威嚇音。


「しっっ失礼しましたぁぁっ!!!」


ちょっぱやで消えてもた坊ちゃん先輩の気配。


「………」


竜達もグランの突然の咆哮に驚いたんか、ちょっとちっちゃなってる気がする


『グラン兄、突然どうしぃたんだよぅ…』


グランへ向けた声もさっきまでのハイテンションじゃなく弱弱しい

バルクも涎どころか口もきちんと閉じられとる


…出来る子やんか


『…レイジルが戻るまで人間は近づけるな』

『『『『わかった』』』』』


グランの言葉に外の竜達がすぐに同意しよる…って事はつまり


「グランが…リーダー?」

『っ!?』

「あっ…」


慌てて口を押さても、一度口から出た言葉を取り戻す事なんてでけへんくて…

向けられた5つの視線で、自分が大ポカをしてしまったんを理解した


「やってもた…」


ゆっくりと起き上がってこっちに向ってくるグランのスローモーションの動きは恐ろしさ倍増やし…


『人間、我らと意思疎通……いや会話が出来るのだな…』

「…でで、出来へんって」

『ならば殺す』

「出来ます。全然バリバリ喋れます」


即答してもたけど、良く考えたらレイジルからの預かり者を殺せるわけないやん!!

案の定殺すつもりなんて気は全く無さそうにグランがあたしの側まで来て正面に立った。それに合わせて外の竜達は一歩離れる


上からの視線はめっさプレッシャーなんですけど…


『……レイジルとはどのようにして知り合った?』

「………」


どっからどこまで話してええんかわからへんのやけど…


あたしがもごもごと返答に困っとると、グランが前に屈んであたしに視線を合わせてきよる


「えっと…そのですね…」


誤魔化そうにも誤魔化す材料がなさすぎる


『記憶持ちとの関係…まさかお前は予言の子か?』


そのグランの言葉に周りの竜が一斉に騒ぐけど、あたしにはなんのこっちゃわからへん


記憶持ちとか予言の子とか意味わからんのですけどぉー!!


『…それで竜神が降りられたのか』


勝手に一人で自己解決せんとってぇな!


何つってつっこみを入れたいけど、いかんせん…相手は竜やしな


『グラン兄ぃ…ほんとにそいつが竜姫なのかぁ?』

『わからん…全てはレイジルが戻ってからだ。それまで丁重に扱え』

『『『『了解』』』』


それからかなり待遇改善されてんけど…あたしの頭は記憶持ちとか予言の子とかわけわからん言葉に頭を支配されとった

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