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竜姫  作者: 月下部 桜馬
プロローグ
5/33

5.

さて抜け出してきたんはええけど、これからどうしたもんか。

医務室行くって言うただけやからちょっとしたら鍛錬所に戻らなあかんしな…食堂は今の時間開いてへんし、他にどっか適当に時間潰せるとこなんて竜舎と門たまに食堂の往復しかしてへんから知らん。かといって外出て竜舎組のお偉いさんとかに鉢合わせも嫌や


「探検してみるかぁ…」


一応見習いやけど竜騎士やから城の中はそれなりに歩いてもええ事になってる。ってか3ヶ月間竜舎でしか仕事してへん方がおかしいんとちゃうん?


「社会見学や。社会見学!」


お尻は痛いけど、好奇心には勝たれへん。

あたしはよしっと気合を入れて行った事のあらへん廊下に向って歩き出した。


こういうのってワクワクするやんなぁ。なんちゅうても観光客相手の整えられた城やのうて現役の城やでっ!!再現VTRとかやのうて生やからな生!!

扉の前に立ってる兵士とかも、なんやこぅびしっとしててめっちゃかっこええねん、しかも通り過ぎる時に「お疲れ様です」言うたら結構気さくに「お疲れ様です」って返事してくれるしなぁ。


見た目はおとぎ話やのに、現実やねんもんなぁ…


「…みんな元気かなぁ」


思い出すんは両親や兄弟、友達、同僚…うん、ちょっぴり涙出そうや。


「あかん、あかん。しめっぽなんのは嫌や。人生前向きに楽し生きなあかん」


あたしは大きぃ息をふぅぅっと吐いて、それからまたのんびり歩くのを再開いしたんやけど、さすがにお尻の痛みが気になってきた。


「…やばいなぁ。歩いとったら治る思たけど、酷なってきてるわ…これ」


しかも適当に歩きすぎて、今の自分の位置がさっぱりわからへん…広いな城。ってかアホやろ、あたし。

とりあえず…ちょっと休まなほんまにやばい…


「どっか休憩出来るとこないやろか…」


こういう時に限って人に聞こうにも誰もおらへんし…そういえばしばらく人にも会わへんかったしそれらしい扉もあらへんかったな。

…そんな場所、来る前に気付けやって事を今更気付いたり…もぅ救いようがないアホやな…あたし。


いつの間にか城の端まできてもうたんか、見えるんは突きあたりにめちゃでっかい扉が一つ。


まじで別におもろいもんなかったし途中で引き返すなり、別の方向に向かえばよかった…せやけど何かよぅわからんけど、こっちに惹かれてんなぁ…


それにしても人がおったとこまで戻るにはちょっと辛い…主に臀部周辺が…


視界にあんのはあのでっかい扉。


「あの扉ん中…入って休憩してもええやろか?」


ほんまに立入禁止の部屋は魔法で施錠されとるってアトムさん言うとったし、鍵が開いとったら入ってもエエっちゅう事で…


「それにしても見るからに立派な扉やな…」


遠目から見ても立派やった扉は近づいたらもっと立派やった。

下手したら初めに見た王様との謁見の間の扉より豪華かもしれへん。


「すんごい細工やなぁ…ってこんな扉、開くわけないわなぁ。」


扉の模様は丁寧な細工を施された竜の紋章…これが実際何を意味してんのかはわからへんけど…一つの大きな紋章やのうて、七つに分かれたその紋章ってことは


「いち、にぃ、さん、しぃ、ごぉ、ろく、なな」


何度数えても、数は変わらん…。


「どぅ見ても七竜帝にまつわる部屋やんなぁ…こんな扉が開くわけあらへんな」


せやけど…ちょっともぅ足も限界やし、ここで休憩させてもらお。


あたしは扉に触れへんように気をつけながら、横の壁にもたれかかってじんわりと廊下に座ろうとしてんけど


「…いてぇ」


やっぱ体育座りは無理や…。

あたしは臀部を浮かせるように前屈みになって座ってみたら、これが以外と大丈夫やった。ただ姿勢はどこのグラビアやねんって格好になってもてるけど…


男の姿してんのにこの姿勢を見られんのは非常に気まずい…というか愧死きしるから、誰も来ませんように…


「何をしている?」


えぇ…もちろん、何しとるか自分でわかってるあたしの言葉や無い。

床に向けられとるあたしの視線の先には立派な靴が見える


「………」

「気分が悪いのか?」


…愧死る。今すぐ死んでまいたい…ちゅうか穴ん中に100Mぐらい落ち込みたい…

理由を説明とかもあかん…愧死るし。


「誰か呼ぼうか?」


人を呼んで…あたしにこれ以上の辱めを与えよういうんか、この男は。

恥ずかし過ぎてよぅ顔なんか見られへんけど、声で男やっちゅうのはわかる…


この男このまま去って行きそうに無い…ちゅうかまじでどっから現れてん…この男。

まぁ謎より…いかにこの場を乗り切るかや…


「諸事情やから……このままスルーしてもろたら嬉しいです」

「………」

「っ!?」


あたしの言葉に反応して立ち去って貰えるんかと思たら、反対に丁寧にしゃがみ込まれて顔覗かれた。覗かれた顔はめったにお目にかかれへんぐらいの超美形……愧死るどころか今すぐ存在ごと消えてまいたい


「………」

「………」


口元が引きつんのは止められへんけど「青い髪が綺麗やねぇ」なんて頭のどっかで思てる自分はもぅ消え去ってんのかもしれへん……羞恥心って言葉が。


「…どこか痛めて…尻か…」


羞恥心かむばーーっく!!


「しっ…しっ…」

「『し』がどうした?食あたりか?」


……百歩譲って心配してくれてんのは顔見たらわかる。せやけど…せやけど…


「尻言うなぁぁぁーーーー!!!」


あたしは…尻の痛みなんかぶっ飛ぶ勢いで立ち上がって、目の前の男に体当たりした。

そのままダッシュで逃げたあたしは、七竜神の扉が開いてる事も全然気付けへんかった…




その男があたしに体当たりをされても微動だにせずに笑っている姿も…もちろん見ぃひんかった

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