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竜姫  作者: 月下部 桜馬
プロローグ
4/33

4.

ちょっと短いです


 どこを見てもマッチョマッチョマッチョ………エエ加減、吐瀉物撒き散らすぞ。


 人の好みは千差万別や…せやけどな、あたしの好みは細マッチョやねん。誰がこんな筋骨隆々を好きになるかいっ!!


 「ぅぉいっっちにぃぃぃ〜、さぁぁんしぃぃぃぃ〜あ~か~ん~無理ぃぃぃ」


 …懸垂って普通の女の子やったら1回限界ちゃうの?それを三回もしてんから…もうそろそろ許してくれてもええんとちゃうんかなって恨めしい目で坊ちゃん先輩を見て心底後悔した…


 …あかん。脳筋族、さすが脳まで筋肉に侵されてるだけある。

 何で上半身裸やねん…見せたいんか?俺の筋肉サイコーって言いたいんか?

 何やあの無駄な大胸筋は…お前はボディービルダーか!って突っ込みたなる。


 どう考えても竜に乗るのにあの見せ筋はいらんやろ…いやむしろもっと目立たん様にきっちりつけろよと思う

 

 まぁ…何でこんな脳筋族ばかりに囲まれてるかと言うと…あのあと話のわかりそうな上司を探しとったら、話の通じん脳筋族に掴まってしもて鍛錬場に強制送還されたっちゅうだけの話やねんけどな…


 「マサっ!!3回なんてふざけてんじゃねぇだろうな!そこら辺の子供でもそのぐらい出来るぞっ!!」


 …それは子供は体重が軽いからやって…ぼっちゃん先輩。

 

 「あ~虚弱体質なんで無理っすぅぅぅぅぅっぃってぁぁっ!!」


 「ぅぅぅ」の倍音のところで鉄棒から落ちて尾骨もろ打ったやんか…

 くそぅ…ぼっちゃん先輩の向こう側で笑とる奴…顔覚えたからな…


 「ふんっ貴様など竜騎士を名乗る資格もない。そんな草の様な手足、鍛えたところでたかが知れてる。他の方々の鍛錬の邪魔だ!!もういい!あっち行ってろ」

 「了解で~す」

 

 せやから掴まった時に鍛錬所に行くのご遠慮しますぅ言うたのに…自分が偉い立場になったんやって事を周りにアピールしたいんやろうなぁ…無駄にプライド高いぼっちゃん先輩やからな…

 ってかさ、ぶっちゃけ一応直属の上司に違いないねんから退職届出すのこの人でもええんとちゃうん?さっきみたいにお説教なんて食らわずにさっさと辞めさせてくれそうやん


 あぁ…せやけど悲しいかな、今のあたしは発汗吸収調整バッチリジャージとまではいかへんけど、パーカーのトレーナーとラフなズボンという運動着に着替えてしもてて退職届けが手元にあらへん。


 ま、あらへんもん今考えてもしゃあないしな。堂々と休んどけと言われてんから、休ませて貰おう。


 「歩くと結構お尻に響くな…」


 訓練所の端に座ろうとしてんけど、尾骨は予想通りの強打やったらしい。そのまま直立姿勢に戻ったで、もちろん。


 「……くっ」


 乙女にあるまじき恥ずかしさ、どうしてくれよう…この痛み。

 まぁ、ここではあたしは男やねんから気にせんでいい…座らんかったらなんとかなる。 どんだけ痛うても性別バレてまうから医務室行かれへんしなぁ…


 とりあえずだるなった手を振りながら壁に背を預けて辺りを見回してみて後悔した。


 「……マッチョ、ゴリマッチョへの進化論。ここにずっとおったら論文かけそうやなぁ。男達は何故筋肉に走るのかって副題でどうやろう…」


 ぼっちゃん先輩を含む7割が上半身裸…しかもその中の9割がマッチョ、1割はバランスの取れた筋肉っぽい…がその集団は如何せんあたしの位置からは遠い。それにあたしの視力は裸眼やったら両目とも0.5ないから…絶対細マッチョとは言い切れへんしなぁ。


 「それにしても何や…場がそわそわしとるなぁ…」


 うん、別にマッチョばっかり見とったわけちゃうんよ?こういう時は外野に立って全体的な情報収集出来る場やから、ちゃんとそういうセンサーも働かしとるんよ!

 

 例えばあそこの上半身裸のマッチョレベル1の会話


 「竜様が5体も揃われるなんて俺等ついてるよなぁ!!」

 「…でも、見習いじゃ竜様に近づく事も出来ないじゃんか」

 「ちょっとぐらい側で見る機会はあるって!」


 さっき間近で竜を見たあたしからしたら、あんなん近くで見るより空を飛んどるのを眺める方が何倍もかっこええと思うけど…希望を持った見習いちゃん達は可愛い事言うてる…ってあたしも見習いやけどな。


 ちなみにマッチョレベルは5段階でレベル5は完璧なゴリマッチョって感じやね。


 レベル1の可愛ええ集団に比べてマッチョレベル3集団の会話ときたら


 「………竜達が5体全部帰ってくるのって何年ぶりだろうな」

 「どこかで戦がまた起こるのかもしれないぞ」

 「だが竜が居る俺たちの国を侵攻する馬鹿は居ないだろうよ」


 なんてちょっと物騒な会話をしとる。


 戦争とかマジ勘弁やで…「銃って何?」って平和ボケした日本人やねんから殺し合いとか無理無理。

 そんな事になる前にやっぱりとっとと竜騎士を脱退するに限るな


 …せやけど戦争になったらレイレイにも危険とかあるんやろか?…そうなったらそれはそれで守ってあげなとは思うからやっぱ騎士には所属しとった方が、とも思うしなぁ…


 そんな事を「痛い痛い」とお尻をさすりながら考えとったら、訓練所の扉が「ばぁぁん」って盛大な音で吹っ飛ばされた。


 「…あの扉めっさ重かったやんけど」


 とうとうマッチョの中のマッチョ、ゴリマッチョの登場やな…だってマッチョ部隊が慌てて入口に整列しとるし…あたしは……ゆっくりやないと無理や。


 かなりマッチョから遅れて並んだら、案の定最後列で入口から誰が入ってきたんかわからへん。


 「ジューゼリアス団長に敬礼っ!!!」


 どっからかわからんけど叫びに近い声が聞こえてきたから一応ぴしっと胸に手を当てて立った…以外とお尻に響いてつい眉間に皺が寄ってもうたのは相手から見えへんし、ええやろ。それにしても団長って…かなりな大物が来てるやん。

 そんな中聞こえて来た声はバリトンボイスのエエ声やった

 

 「全員揃っているのか?」


 それに答えたんはさっき戦がどうのって言っとったレベル3


 「はっ!竜騎士部隊、警備班以外全員揃っておりますっ!!」

 「そうか。昨日竜舎の準備をした者は誰だ?」


 え…っと竜舎の準備っていうと…あたしらの班の事やんなぁ。

 何やろ…なんかあかん事があったんやろか?


 「グラーバル、ドリグラム、バールティスアス前に出ろっ!!」


 ぼっちゃん先輩らがレベル3に名前を呼ばれる…何でかあたしは呼ばれへんかった。


 「「「……はっはい」」」


 姿は見えへんねんけど、ぼっちゃん先輩のびびってる声が聞こえてくる。


 「お前達が昨日の竜舎を準備したのか?」

 「……はっはい」

 「着いて来い。他はそのまま鍛錬を続けろ。解散」


 その言葉で一斉に散らばるマッチョ集団。


 見送りとかせぇへんねんなぁ…あたしもゆっくり元の壁際に戻る

 人垣が無くなって扉に向かうぼっちゃん先輩達が見えたんやけど、金髪の厳ついおっさんに連れられる彼らはまさにドナドナ状態。


 その人達はサボっとってほんまは竜舎の掃除なんて一切してへんけど、あたしに押し付けてサボってましたとか言われへんわなぁ…ま、何かトラブったとしても、部下の為に上司なんやし頑張って責任を果たしてきてくれたまえ。


 ほんま名前呼ばれんでよかったわぁ…


 「ってぼっちゃん先輩おらへんのやったら、ここにおらんでもええんとちゃうん?」


 早退言うても嫌みを言う相手おらんのやし、実際お尻は痛いんやし。

 

 「え〜っと、レベル3はどこいった?」


 レベル3はマッチョやけどクマみたいな感じの人。さっき団長に返事しとったし、彼に早退の了解とったらええやろう。

 

 レベル3はさっきまでと同じ場所におって、バーベルの重さを変えてるとこやった

 あたしはひょこひょこと足を引きずりながらレベル3に近づく


 「あのぉ…すんません」

 「…?新しい見習いか…どうした」


 クマは優しい顔しとる…マッチョレベル3なのが残念で仕方ない。ぼっちゃん先輩みたいに見習いを馬鹿にしとるわけでもなさそうやし、ええ人なんやろう


 「さっき鍛錬で足を挫いてもたんで、医務室行ってきます」

 「あぁわかった。一人で大丈夫か?」


 やっぱりええ人や…。辞表出すときは貴方に決めたで。

 

 「すんません、大丈夫です。それじゃ」


 ほんまは痛いんは足やのうて尻やけど…クマがええ人やからちょっぴり罪悪感もあるけれど…



 これ以上マッチョ部屋にいるのは我慢の限界です

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