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竜姫  作者: 月下部 桜馬
2章 白龍の娘
30/33

29.

 命名 海松茶みるちゃ


 まんまの名前なんで……ちょっとかっこよぅ筆で命名書を書いてみた…

 まさかこの世界で筆に出会えた事にびっくりやったけど、白龍のコレクションやったらしい…主人の収集物を勝手に使用してえ、ええんやろか?

 それにしてもなかなか上物でええ書き心地や。ちなみに墨はイカみたいな魔物からうじゅうって出てきたやつでちょっぴり微妙やけど…これまた伸びがよくて高級な墨と書き心地が変わらへん…異世界恐るべし。


 そして!!今あたしの絵心を心配して下さった皆様!!朗報やで!!美術の腕は・・・やけど、実は書道は師範代の腕前やねん!…小学校の頃に泣きながら墨摺ってたんはええ思い出や…。


 うん、なかなかの出来やで。


 「こ……これは、凄まじい魔力を感じます。魔法陣かなにかですか?」

 「…普通の命名書やけど」


 本来7日目にするもんやけどなぁ…まっ日本人の心って事で…あっ今は竜やけど。


 「普通…ですか…」

 「せやなぁ…子供の無病息災とかを願うもんやねん」

 『ま、マスター』


 海松茶がウルウルしてる感じの声は聞こえるけど…単なる穴三つのボールやから全く感情が見えへんけどな。


 「…少し違うものも書いてもらってよろしいですか?」

 「ん?…何書けばええの?」


 久しぶりの筆やし、あたしも何や書く気になっとるからどんどんいけそうな気がするで!


 「…そうですね、出来れば火にまつわるものを一枚」

 「火?…火、かぁ」


 う〜ん。火にまつわる…って火でええんとちゃうん?…とりあえず、一文字でっかく『火』を書いてみた。


 「ちょっと待って下さいね」

 

 “鈴木さん”はそう言うと、かなり離れた場所にどっからともなく案山子みたいな人形を出してきて砂漠にぶっ立てた。ちょっと小走りで戻ってくる姿が可愛いと思えたんは秘密や…


 「では雅様、書いていただいた紙をあの人形に向けて放ってもらえますか」

 「…放つ?」


 放つて何なん?…放り投げたらええって事?


 とりあえず…てぃっと紙を投げてみた。


 「………」

 「………」


 …もちろん、ヒラヒラと舞落ちるだけですけど?何か?


 「えっと…雅様、それは術の舞いか何かですか?」


 …真顔で質問されても困るんやけど?うん、きちんと聞かんかったあたしが悪いねんけどさ…、もうちょっと説明があってもええと思うねん。せやけど、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥やもんな。


 「…放つの意味がようわからんっちゅうか…何をしてええんかわからんねんけど?」

 「あっ…そうですね。魔法陣でしたら起動の印を口にすればその陣が発動するのですが……雅様の陣は特殊ですので…」


 うん、っていうか陣なんかじゃなくて単なる字やからね…。


 「…魔力は宿っていますので、あとは起動だけなんですけど」

 「起動ね〜」


 小説やったらここでパッとなんか閃いたりすんねんやろうけど、考えてもとくになんにも浮かんでこえへん。…悲しいかなチートキャラではないらしい。


 「……」

 「……」


 沈黙がしんどくて…火って書いた紙の端に落書きをしてしまう。…起動っていうたらパソコンなんかについてるあのマークしか思い浮かばへんし…あの簡単なリンゴみたいなやつやったら絵心ないあたしでも書けそうやしな…とりあえず名入れのとこにでも書いとこか…


 「雅様?そのマークは?」

 「起動ボタンや」

 「起動…ぼたん…ですか?」

 「そうや、これをポチって押したらな…」


 ジャーン!!そうそう…この音や!


 「って…え?」

 『マスター!!危ないのよぉ〜!!』


 それまで黙ってた海松茶が慌ててあたしから紙を奪って、すごい勢いで案山子の方向に跳ねてく…


 「海松茶…手ぇ無いのに…どうやって持ってんの?」

 『そこぉなのぉぉ?』


 海松茶が案山子に向かってあたしが書いた紙をペッと貼付けたと同時に、案山子が天まで届きそうな火柱に包まれた。


 「あっつっ!!」


 さっき“鈴木さん”はかなり離れた位置に案山子を設置してくれたにも関わらず、熱風が飛んでくる……ちなみにその熱風にのって海松茶も『きゃ〜!!』と喜びながら帰ってきた。


 「これは……巷の魔法書など……比べ物にならない威力ですね」


 っ!?


 「…雅様は、変にこちらの魔道法を覚えるよりも、独自の方法を追求される方がいいのかもしれません」



 …またなんやややこしい事になったかもしれません

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