28.
結局、魔力の塊を色々捏ねた…いや、捏ねくりまわした結果……魔力にも意思があったんかはわからんけど、主人の才能にほとほと疲れたんか、自身で綺麗な球体になった後、形を変えれへんようになった……なんでやねん!
「………これでええん?」
「……そうですね。もうどうしようもなさそうですから…」
「せやねぇ…」
せやけど…こいつを見てるとちょっと衝動にかられてまうっていうか…
「…えぃっ!」
「み、雅様っ!?なんですか!それは!!」
…三つの穴を開けました。いや〜だって目の前の魔力の塊がボーリングの重い方の球にしか見えへんかったしさ…しかも決して色鮮やかな方やない……どぎつい感じの色の方やし…穴は必要やろう。魔力の塊もこの穴は許容範囲なんか、別に元に戻らへんし…
「必要穴や。ほらこうしてな…」
とりあえず…穴に指をぶっさして持ち上げてフォームをとってみる。
「なんや重そに見えて以外に軽いんやな…これ」
「それは…雅様自身の魔力ですから、で…なんで持ち上げてるんですか?」
「へぇ〜そんなもんなんや…いや、穴の使い方をやね。ほいっ!!」
とりあえず掛け声と一緒に投げてみる
「なっ!!!!!!」
「おぉ!なかなかエエ具合に飛んでくやんっ」
海松茶色の物体が砂漠を果てしなく飛んでいく。
「みやびさまぁっ!!!何やってるんですかっ!!」
「えぇっ…何って、穴の説明を…」
なんてあたしの返答を待たへんと“鈴木さん”が慌ててボールを追いかけていく。
…しもた。
あまりにもボーリングの球やったからさ…投げてもた。こんな砂漠で自動で戻ってくるわけあらへんし、拾いに行かなあかんの忘れとった。
「“鈴木さ〜ん”!待ってや〜!!」
ドコまで飛んでいったんか“鈴木さん”の姿がだいぶちっちゃなってる。
「待って〜なぁ〜!!」
…砂漠ダッシュは免れへんらしい。……自業自得である。
***
疲れ果てた二人に対して…若干満足げに鈍く光って見えるんは目の錯覚やろか?あの後…この球、およそ一キロぐらい飛んどったね…。“鈴木さん”が追いかけてくれてへんかったら…多分そのまんまさよならやったわ……。
うん、今度からはよぅ考えて物はします。
「ゴホッ…はぁ……と、とにかく……まずは魂願術をゴホッ!……しま…しょっゴホッ!」
…ほんまゴメン。
「……なんでもいいです」
「では……まずこの魔力に名前を…」
「海松茶で」
「……早いですね」
時間かけて考えるより、元々連想してたもののが多分ぴったりやと思うし…自分のネーミングセンスを信頼もしてへんし……ふふ…地味に傷つくわ
「わかりました。では、この陣の上に海松茶を……」
“鈴木さん”の立っとる前方の地面に不思議な円形の模様が浮かびあがった
「ほぉわ〜ファンタズィー…」
「…?」
「…こっちの話やから」
で、なんやったっけ?この円に海松茶を乗っければええねんな…
「よいしょっ…」
ドゴッ!
…地面に置いたら円形の模様にめり込んでるんやけど…ええんやろか?ええんかな?“鈴木さん”なんも言わへんし…
“鈴木さんが”目を閉じて何かを呟きはじめたら、地面の魔法陣がさっき宿屋で見た青い光を帯び出した。
「……汝、魂に名を海松茶と記す」
段々とその光りが強くなって…今は空まで伸びる光の柱みたいになっとる。…なんや厳粛な雰囲気や。っていうか、神聖な儀式過ぎひんやろか……どっちかっていうと教会とかでパイプオルガンをバックミュージックにやる様な儀式やで…これ、砂漠の真ん中でやったらあかんやろ…。
「その体に宿りし魔力を己の糧に主人の力となれ」
…光りの柱から出てきたのは……やっぱり海松茶色の塊で……うん、砂漠でよかったかもね。
『あっるじ〜!!』
「……うん?」
『おで、海松茶!!しくよろ!!』
……目の前でぴょんぴょん跳ねる物体……魔力の塊、改め海松茶と名付けられたあたしの眷属……であってんの?ってか「しくよろ」てなんなんっ「しくよろ」て!!
「…海松茶」
『いえ〜す!アイムみるちゃ!マイマスター!!』
…聞いたら自滅なんはなんとなくわかってんねんけど…聞かずにおられへん。
「あの“鈴木さん”……眷属の思考って何をベースに…」
「もちろん魔力に記憶された主人の思考をベースに」
「わぁぁぁぁ!!」
嫌や〜自分の潜在的な思考がこいつなんて嫌や〜!!!
がっかり感はんぱないぞ〜!!さっきの“鈴木さん”の眷属のような恥じらいが一切感じられへん海松茶に思わずジト目を向けてしまう
「……“鈴木さん”返品で」
『マスター!!ひどいっ!!』
「海松茶、大丈夫です。どんなに中身が残念でも返品不可ですからね」
“鈴木さん”………軽く主人と眷属どっちも傷ついてるで
遅くなりました…すみません




