26.
私、コレで人間やめました。
やめたつもりなんか微塵もあらへんかったわーーーー!!!
せやけど…目から流れるもんはどうしようもなく現実を突きつけてくる。
「……おかしいなぁ、涙がコロコロ言うとる」
「みみみっ雅様!?」
…説明しよう、泪晶とは竜が流す涙で出来た結晶であり、一つで城が建つほど貴重な宝石と言われとるもんで。
今現在あたしの目から量産されとる自分ではよぅ認められへん物体Xは……止めよう思てもなかなか止まらんくて、コロコロ床転がっていく。
「雅様!!落ち着いて下さい」
“鈴木さん”が慌てて色んな方向に転がってった物体Xを拾い集めて右往左往しとる姿が、不謹慎やけどおもろい。
「あ…とまった。“鈴木さーーーーん”とまったでぇーーー!!」
「……よ、良かったですーーーー」
結構遠くまで転がってたんか、“鈴木さん”の声は姿が見えへんところから返ってきた。
まだ涙は流れてるものの、さっきみたいに固形になる事はなく液体のまま床に染みてる。それもしばらくしたらとまった。
「はぁ、はぁ……み、雅様」
両手いっぱいにあたしの泪晶を持った“鈴木さん”が青い顔してあたしを見つめてくる。
「なんや…ごめん。」
「いえ…いいんです。ちょっと泪晶の多さに驚いただけですので…」
話を聞いてみて驚いたんやけど、竜の涙であっても全て泪晶になるわけやなくて、いろんな意味で感情が振り切った状態で流した涙しか泪晶にならへんらしい……つまり、今のあたしは暴走状態やったっちゅう事やな……
「あ〜…確かに感情のコントロールきかんかったわ」
「竜はそもそも感情に疎い種族ですので……私もこんなに泪晶が流れるのを見た事がありません……ちょっと動揺してしまいました」
「………はぁ」
「雅様?」
…うん、普通にあたしが竜って前提で話をされてんねんけど…。
「……あたしさ、竜とかに変身すんの?」
「がぁー!」って咆哮かましてる自分を想像して顔が引きつってまう。…いやいや、ネタ以外のなにものでもない。しかも想像しても自分人間のまま咆哮かましてるし…
「いいえ、真名が思い出せない状況では、本来の姿はまだ白龍様によって封じられてると思います。自分で真名が扱えない状況では竜本来の姿に戻られると本能が暴走する可能性がありますからね」
いやや、なんなんその危険生物。
「ま、真名って…そんな重要なん?」
「はい、竜にとっての力の根源ですから」
よぅわからんけど…動力源って事はエンジンが名前やっちゅう事やな。あかん……竜の自分の姿とか想像したらまじ凹むわ。
「…何にせよ、今は変身せぇへんねんな?」
「そうですね」
ひとまず安心や……問題の先送りとか言わんといて、現実に目を向けたらまた涙腺ぶっ壊れそうやから…
「まずは体内魔力の制御からはじめましょう」
「ゴクリ…ま、魔力」
魔力…その言葉は厨二病を引き起こすスイッチであり、無双チートとか夢見る素敵な言葉や……いや、白龍に修行とか言われてる時点でそんなん諦めてるけどさ……つらたんな現実ばっかで、ちょっとは夢もみてみたい…
「早く本来の姿を取り戻せるよう、頑張りましょう!」
「………」
…夢は夢であった方がええねんな…って思ったんは口に出さへんかった。
そら元の世界に戻られへんわな〜…
『だって…竜だもん。By 雅』
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