24.
二日酔いみたいな酩酊感と割れるような頭の痛みがする……今は何も考えたくないしこのまま寝てたい。
「……さ……さま、…やび、……雅様!!」
聞こえてくる声が“鈴木さん”なんは頭のどっかで理解出来た
「雅様!!」
せやから……そんなに揺らさんとって欲しい……
「……ぎ。ぎぼぢ……わるい…」
「っ!?」
意識が戻ったあたしの状況に気付いてくれたんか、揺らすのは止めてくれたんやけど…もうちょっと早よして欲しかった。
「……み、雅様」
…うん。“鈴木さん”顔色がどんどん青くなっていくのを見ると……あたしの様子はたいがいなんやろうなって想像出来た。とにかく話したり出来る状況やなかったんで“鈴木さん”には悪いけどそのまままた目をつぶった。
「雅様。抱き上げても大丈夫ですか?」
どうやら床に寝てるらしいあたしをどっかに移動したいらしいねんけど…今動かされたらモザイク必要な惨劇が生まれる
「……無理」
「わかりました。……少しお一人にしますが大丈夫ですか?」
了解を求められて声出すのも億劫やったから右手を軽く振って「ええよ」って合図した。側の気配が消えて“鈴木さん”が離れたんがわかる。気分最悪やし、寝て体力回復せなって思うねんけど、全然意識が落ちてくれへん
「……さ、最悪や」
ぐるぐるさっきまでの白龍の会話が頭を巡るし、最後に見たあの気持ち悪い影もめっさ気になる。何より……白龍に言われた「元の世界に帰れない」っちゅう言葉があたしに多大な心労をかけとる。
「ほんま……無理なんかなぁ…」
いくら竜がいる世界やったり、変な下働きみたいな事させられても…「帰れる」っていう思いがあったらいくらでも頑張れた。でも…それを白龍にポッキリ折られてもた。
せやけど…………どっかわからんけど…体のどっかで…この状況を受け入れてる自分もおんねん。
「……これからどうしたらええんやろな」
…白龍が言うてた事を実行する気力は今すぐは無い。「帰られへん=悲劇」やったら泣けばええ、「帰られへん=前に進む」やったら立ち上がって次の目標を見つける力にすればええ……せやけどそんな相反する思いが体ん中で喧嘩するわけでもなく二つ居るっちゅうのは、感情の行き場が無くて途方にくれて………余計にしんどい。
いつの間にか戻った“鈴木さん”が目をつぶってるあたしの頭に枕を差し込んだり、額に濡れタオルを置いてくれたり、かいがいしくお世話をしてくれる。
「…“鈴木さん”ありがとう」
「…起きてらしたんですね。大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫。ちょっと頭がパニくってるだけやし…」
過度な心配を見せずに落ち着いた声で「そうですか」って言うてくれた“鈴木さん”からの静かな返答があたしの心の傷を癒してくれる気がした。
「………ゴメン。白龍に会うたのに、“鈴木さん”の名前戻してもらうん忘れたわ」
「私の事など別に構いません。そんな事は気にせず、今はゆっくりお休み下さい」
ゆっくりと“鈴木さん”の手で頭を撫でられると、頭の痛みも薄れてく気がした。
「……しばらく側にいてくれる?」
大の大人が何言うてんねんと恥ずかしいんやけど…この優しい気配に側に居って貰えたら、さっきと違って優しい眠りにつけると思てもたからしゃあない。
あたしの今の弱った心にはこういう薬が一番効きそうやん…多分。
“鈴木さん”の少し「くすっ」と笑う感じがした。
「ゆっくり…お休み下さい」
ありがとう…って返事出来たんかは……覚えてへん。
ちょっぴりシリアス?…でもそれはきっと続かない自分のコメディ体質が微妙。