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竜姫  作者: 月下部 桜馬
1章 白龍の眠り
23/33

23.

 ハリセンの餌食になってようわからん白い煙を「フシュー」と漫画みたいに噴き上げてる男。全く無駄なファンタジーやと思う。ってこんな漫才みたいに遊んでる暇あらへんねん。とっとと相手の諸事情とやらを聞いて、こっちの質問にも答えて貰わなあかんねん。


 「さっさと諸事情を話して欲しいねんけど?」

 「いやいや…それをお前が言うのはどうかと思うぞ?こんなに時間があったのに竜舎の掃除だけしてるお前が…」


 とりあえず、ハリセンを手放したあかんようや。 パシンパシンてハリセンの音に若干顔を青くして白龍は「いや…竜の生体を知るのに竜舎サイコー」とかほざきだしたからもぅ一発入れといたった。「なんでこんな乱暴な感じに育ったんだか…」なんて言いながら白龍があたしに向けて手を差し出してくる


 「……?」

 「?」


 いやいや…白龍がなんで?って顔すんのおかしいやろ?どうしろっちゅうねん。みてみぃこの微妙な空気。


 「ほらっさっさと手出せ」

 「…いやいや、先説明やろ」

 「やってみりゃわかるって」


 不安や……不安しかない。せやけど…不安やからってこれを拒否しても、話が先に進まへん…何故なら白龍は説明しそうにないからや…。他に選択肢がないんやし、しゃあないねんけど……チャラ男に全部主導権が握られてんのがむかつくわ。


 「…変な事したらぶっとばすで」

 「…お前の中での俺ってどんなだよ」


 美形のしょんぼりした姿に核ミサイル並みの心痛をくらった。あかん……あかんっ!!…いくら姿容姿が良くても中身はお爺ちゃんチャラ男やで…騙されるなあたし!ぶつぶつ言うてるあたしの手を白龍がしっかり握ってきた


 「じゃあ……今からお前の名前の外殻とっぱらうからな」

 

 …は?………ナマエノガイカク?


 「え…外殻って…それってとっぱらっていいもん…なん」

 「いくぞ」

 

 白龍の声色がさっきまでとは変わって、清流みたいな音で言葉が綴られた。


 我、白龍なり

 我が娘の名を言霊に

 我が娘に祝福を

 我が娘の珠へと刻みたまへ……


 言葉が耳に入ってきた途端、あたしの体の中から……言葉で説明しようのない力が湧き出てくんのがわかった。


 「…な、なんなん?これ…」

 「お前の名の封印を解いた」 

 「…あたしの名前?」

 「そうだ…ただ、真名を操れるだけの力量が今のお前には無いからな〜、修行だ修行」


 …ぜんっぜん意味不明やし…しかも意味わからんのに貶められてる気がすんねんけど?何なんこの覚醒イベント……そもそも、あたしは元の世界に帰りたいんであって……こんなイベントいらんねんけど?


 しかも修行せなあかん覚醒って……それ普通に努力やん!


 「まっ、次に会うまでに神域魔法ぐらい使えるようになっとけよ」

 「…は?しんいきまほう?」

 「じゃねぇと話になんねぇからな」


 …そんな話したないねん。


 「さて…と、もぅそろそろ時間だな」

 「はぃ!?」

 「お前の名前の封印は解いたし、後はお前が成長するまでのんびり待っとくからよ。まぁ早くしてくれる方が助かるけどな」

 「いやいや、あんた全然なんも説明してくれてへんやんっ!!」


 わけのわからんイベントだけして…やり逃げか?そうなんか!?


 「魔法の修行は“鈴木さん”に聞けばわかるからよ」

 「ちゃうし!あたしの聞きたいんはそんなんちゃうし!!」


 やばい!マジでこのまま消えるつもりや。両親の事とかさ、あの連れ込んでた女は何やねんとかさ…こっちは聞きたい事一個も聞いてへんねんで!!でもそれよりいっちゃん大事なんは…





 「あたし元の世界に戻れんの!?」






 「そりゃ無理だ。あきらめろ」


 即答なんかいっ!!しかも今までで一番軽いっ!!!


 「ちょぉ待て!こんのチャラ男りゅうぅぅぅ!!」


 叫ぶあたしに白龍が軽く手を挙げた。


 「じゃ、そう言う事で」

 「ふざけんな………バカりゅぅ………」


 視界が真っ白に染まって…あたしの意識が遠のいてく…





 倒れ込むあたしを白龍が抱きとめて小さな声で呟いた。





 「俺とアリシアがつけた名を早く思い出せよ」

  



 薄れる意識の中、辛うじて残っとる視界に白龍が見えた。ほんで白龍のすぐ後ろに巨大な影が迫ってきとって、今にも白の世界を飲み込もうとしとるのがわかる。あれはあかん。危ないて……白龍に危険を伝えようにももう声が出ぇへん。

 





 「待ってるぞ……雅」





 向けられた微笑みが……懐かしい………?




 お…とう………さ……ん?




 …あたしの意識はそこでぷっつり切れた。

謎はまだ謎のまま。

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