21.
色々…恥ずかしい事はあったんやけど、無事扉を開けれたと思た。
「………なんなんここ?“鈴木さん”?」
後を振り返ってもくぐったはずの扉が無い。もちろん“鈴木さん”もおらへん。
辺り一面…白の世界。
「…トンネルを抜けるとそこは…雪国……なわけ無いわな」
別に白の世界言うても雪なんかあらへん。ただ…なんも無い。
「…どないせぇっちゅうねん」
「よぉ!えらく遅かったじゃねぇか」
「誰や!?」
周りは全部見渡してなんも無いの確認したのに、すぐ側で声が聞こえたと思たら、後に人が立っとった……しかも……
「……隣の……部屋の?…何で?」
そこに立っとったんは元の世界でのあたしのマンションの隣人やった。
そういえばこの人もめっさ美形やったな…。異世界に来てすっかり忘れとったけど、多分“鈴木さん”みたいな美形にズッキュン(死語)やられへんかったんはこの人の存在で免疫がついとったからやろうなぁ……忘れとったけど…
年齢は多分あたしより10歳ぐらい上そうで、見た目はサイドが刈り上げられてる割に長めの頭頂部の髪を無造作に6:4ぐらいでまとめてる。……かなりやったらあかん髪型も…美形がやったら絵になるなぁって見本みたいや。
「そんなに見つめてもお前と俺とじゃ何にも生まれね〜よ」
…くたばれじじい。
久々に元の世界の人に会って感動したのに台無しや。それに思い出したけど…こいつの部屋には毎日毎日違う女の人がとっかえひっかえ………
やっぱり…くたばれ。
「今度は腐ったミカン見る様な目つきで…くっく、お前わかりやすすぎ…」
「ほっといてんかっ!!っていうかあんた何でこのタイミングで出てくんねん!」
しかも「えらく遅かった」とかクレームつけてくるしなっ!!
「このタイミング以外出てきようがないだろうが」
「そんなん知らんがなっ!!」
「だろうな」
…あかん。この人と話すんめっさ疲れんねんけど……落ち着けあたし。
「…白龍となんや関わりがある人なん?“鈴木さん”みたいに伝言でも持ってんの」
「…関わりがあるっていうか、本人だしな。ってか「鈴木」って誰だよ?」
……本人?あたしの元隣人が本人………ってか白龍!?白龍って竜だよね!?
「いやいや…んなわけないやん。竜があたしの世界におるなんて……」
「まぁ…あっちの世界では竜化出来ないしな。ちょっと強い人間ぐらいの感覚でいいんじゃねぇの。で、“鈴木”って誰だよ」
「………」
思わず呟いてもた言葉にいちいち返事せんといて欲しい…
「っつうか“鈴木”の正体教えろよっ!!」
「うっさいわ!!アホ!!」
「お前以外にあっちの世界の人間が紛れ込んでたら困んだよっ!!」
「あたしかて紛れ込みた無かったわっ!!!“鈴木さん”はあんたの下僕の名前やっ!!」
はぁはぁって息が切れるほど怒鳴り返してもたけど、後悔はしてへん。
「あんたが名前の封印とかややこしい事するからしゃあなかったやろが」
「*****が“鈴木”………ぶわっはっはっ!!!似合わね〜〜!!!」
「死にさらせ〜〜〜!!!」
あたしの渾身の右アッパーが炸裂した。
目測5mは吹っ飛んでいったけど…あたしは悪うない。




