16.
あたしの動揺を悟ることなく、“鈴木さん”は嬉しそうにニコニコこちらに笑いかけてくれるんやけど……
「…はよ白龍様に名前の封印を解いてもらわな、ねっ」
…はよせなあたしの胃が壊れてまう。
「………」
「…え?」
…さっきまでニコニコしてた顔がなぜにそこで顔が曇んねん。
「…白龍様はっ」
言葉を詰まらせて、何かを堪えるような表情を一瞬見せた“鈴木さん”は俯いてもた。
…あぁ、嫌な予感しかせぇへん。
飛行機事故もわからんかったあたしの第六感がエマージェンシーを訴えとる。これはかなり危険やつとちゃうん
「………白龍様は、眠っておられます」
眠りって言葉が抽象すぎて正確にわからへんし…けど、そこ重要やん。
「…………え、永遠の眠り的な?」
「いえ…私が生きているという事は白龍様も生命維持はされているはずです」
ふぅ…とりあえず良かったで。死んでしもてたらどうしようかと思たわ。
「…私が生きているって、白龍様と“鈴木さん”はなにかしらでつながってんの?」
「はい。私は白龍様の下僕でございますから…」
下僕てなんなん…重過ぎやろ。召使い的なもんかと思たら命とかもかかってんのかい!
「ちなみに……白龍様はどれぐらいお眠りに?」
「……もぅ、千年ほどになります」
「わぁっ!?」
それ死んでるのと一緒やないの!!千年寝てるって何!?寝すぎやろ!!
「せ、千年も食事とらずに寝ててなんで生きてられんの!?」
「霊峰デュアレシアの神気で生命維持はされております」
「し、神気?」
「はい。神がその地に降り立たれた場所と言われており、大気に神気が充満しているのです」
大気って……空気の事やろ?空気だけで千年生きれるって凄過ぎやろ……やっぱ竜ってやっぱ未知なる生物や。ドラゴンミラクルやな…
「ちなみに…竜ってみんなそうなん?」
「いぇ、さすがに神気だけで生命維持出来るのは古龍だけです」
古龍すげぇ〜。さっきまで暗い顔を見せとった“鈴木さん”もやっぱ主人の事を語るのは楽しいんか、いつの間にか目がキラキラして笑顔になっとる。
「古龍は……七竜帝でさえ及ばない力を持つと言われています。その咆哮は大地を割り、吐息は全てを氷炎の世界へと誘い、口から放たれる衝撃は世界を無に帰すと、そして姿を変え、あらゆる魔を使いこなすとも言われています」
…それ、なんの最終兵器やねん?もう存在自体がアウトやんか。眠ってもらってて正解の域やん。
「ただ…古龍の生命維持には神気が必要ですので、神域から離れて力を使用してしまうと寿命もかなり短くなるようです」
「ちなみに…白龍様はおいくつなんやろか…」
「…正確に聞いた事はありませんが、私が使えて千年と少し、少なくとも1万年以上生きられているかと…」
鶴亀の亀越えたで〜!!寝てる間だけで鶴いってもたで〜!!
イチマンネンて…シーラカンスもビックリな生きる化石やん…今は寝とるけど…。元の世界のマンモスやらホモサピエンスやら…氷河期の時代やで…
「…じゅ、寿命ってあんの?」
「わかりません…古龍は神位にいるとも言われていますので」
…神様なんかいっ!そら人の尺で考えたらあかんやつやん。…あかん、未知の話すぎて理解の範囲を越えとるわ。ちょっと白龍とか古龍の話は置いといて、今後の自分の事を考えなあかんのとちゃう?レイレイとはぐれてもたけど、もし“鈴木さん”に元の世界に戻して貰えるんやったらラッキーやし…
「……ところでな話変わんねんけど」
「はい」
ぶっちゃけて話さななんも進まへんし、回りくどいのも性に合わん。
「あたし……この世界とは別の世界から来たみたいなんやけど、そんなんわかる?」
直球勝負や!