12.
…え~っと、どうしたらええんやろうなぁ?下手したら即チーンってなりそうやん?チーンって何って?そりゃ仏壇前のあれやん…
『……「見習い君?」』
あかん…タイムアップみたいやけど、全くといっていいほど口が動かへん…。
『この度の』
とりあえず…黙っとったらグランが横から会話に入ってくれた…まじ感謝
『竜王様のご降下により、竜が予定外の帰還しましたので設備の確認に来ていたところです』
『ふーん…』
どうかそのまま納得して帰ってくれますように…
『「…じゃあもう下がっていいよ」』
「………え?」
「一度でちゃんと聞け人間。下がれと言ったんだ」
人間って言われてるのが自分に言われてるってわからんくて思わず一瞬きょとんとしてもた…
「はっ!」
敬礼は眉上で手の先まで神経を行き渡らせて!
「失礼しましたっ!!」
お辞儀は90度直角で!とりあえずこの環境から抜け出せるんやったら何でもええわっ!!レイレイを置いていくのはちょっと不安やったけど…竜が竜を傷つけるなんて事はないやろし、この場はとりあえず…退避!
違和感がでぇへんように顔を見ないように竜舎を後にする。竜舎から外に出たらもうすっかり日が暮れてた。
…それにしても「人間」って呼ばれんのは何や結構ダメージがあるなぁ。別に人間やからええんやけど。なんやあの偉い人の言い方はめちゃ見下してるっていうか…竜はかっこええなぁってちょっと思っとっただけに、さっきのあれが竜から人間への態度の常識やったらちょっと残念やわ…
「まっ!辞めるんやし…もぅ竜に会うこともないやろからえっか。あ…ほなレイレイにもぅ会われへんのか…しまったな…」
せやけど竜舎に戻るなんて選択はとてもやないけどでけへん。
「レイレイがまたぶらっと外に遊びに来てくれるん待つしかないなぁ…」
しまった言うてるけど、実はそんなに気にしてないねんけどね。クルンで瞬間移動みたいなん出来る竜やで?何か用事があったらクルンでやってくるやろうしな。
「それにしても辞表出したらすぐ帰るつもりやったのに、ほんま疲労困憊やでぇ…」
さっきの肉でお腹はけっこう満たされてるから、あとは軽く野菜系を食べれたらもぅ宿に帰って寝よ…
思いっきり両腕を空に向って伸ばしたら、すごい数の星が瞬いとった…
「おぉ~きれ~なぁ~」
地球やったら拝まれへんような星の数に見上げた顔がそのままになる
「星の輝きは地球と変わらんのになぁ~、星ありすぎて星座とかよぅ見つけんわ…ってそもそも星座しらんやろっ!!」
…一人のりつっこみはむなしい。
「なんや久しぶりに地球の事思い出したわ…」
郷愁が無い言うたら嘘になる…ハワイかてせっかく楽しみにしててんから行きたかったし…
「せやけど、今生きてんのはこの世界やから…頑張らなあかんよな…」
…無職やし、明日からの事とか考えなあかんねんけど、今日はそんな体力微塵も残ってへんわ。
「明日から…頑張ろ。…………疲れた」
…宿でサラダだけ食べて部屋に戻ったら、ベッドに見知らぬ美形が座っとってんけど…
「おたく…………誰ですか?」
疲れた一日はまだ終わらんらしい…