11.
いやぁほんま美形って得やね。立ってるだけで絵的にばっちりって…けっ!爆ぜてまえ。しかもこの人妙に威圧感とか出しててさ…さっきから頭の中で「おと~さん♪おと~さんっ♪」って魔王がずっと永遠リピートしてんねんけど…
『…サリュス様。このような場所に』
おぉ!この雰囲気の中で話しかけられるってグラン勇者やね!!
『う~ん。何だかえらっそうなのが次から次へとやってきて挨拶だけして帰るってつまんないじゃん?抜け出てきちゃったよ。それよりも「おちびちゃん達がきちんと受け入れられてるか現地調査に来たんだけど」グラン、竜語は人語に訳さなくていいよ』
『…サリュス様に気にかけて頂けるとは、ありがたき幸せです』
ん?失礼男の視線がどうもあたしに固定されとる気がすんのは気のせいやろか?しかも器用に竜の言葉と人の言葉を使い分けしとるねんけど…これはわからんフリすんのが正解なんやろうな…
『我々はこの国で手厚く歓待されています』
『そう?よかったよ。バルク?お腹いっぱいご飯貰ってる?』
『っが!!』
「………」
…アホ子。「がっ!」って返事は何やねん。ちゃんとご飯食べとるて言ってくれへんとあたしがきちんと準備出来てへんみたいやんか!まぁさっきまでの大量の涎を止めたんは偉いけどな…ってかほんま自由自在な涎やな…
『バルク?』
『…だっだっだっ大丈夫で…です』
『くすっ。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ?とにかく「ちゃんと生活出来てるみたいだね」………ところでさぁ、このちっこい子は何?』
「………」
え~っと…視線は相変わらずあたしに向いてるけど、竜語で喋られてるし…答えんのあたしとちゃうよな?
『………我らの身の回りの世話をするものです』
『ふぅ~ん…幼体の竜を人の前に出すのはどうかと思うけど?しかも大事な最後の語部だよ?』
あらら…あたしがレイレイと会うのってそんなやばい事なんやろか?うぅ…美形が目を細めて怒っとる感じやねんけど…
『…この者は偶然ここで散歩中のレイジルと鉢合わせただけでございます』
OK。そういう事にしといた方がええんやね。
『随分気に入ってるんだね~この人間を。なんで?』
『……我らの寝床を快適に整えておりますので』
…うん。話の流れで言ってるみたいやけど、ほんまにこの寝床はあたしが作ったんやでし…何も嘘ついてへんわ。ってか竜舎全部整えたんあたしやしなっ!
『そう…そういえば、さっきさ、門で会ったよね?』
「………」
あかん!あかんでぇ…竜語で話しかけられてんねんから…答えたあかんねんっ!!ちょっとあたしに話しかけてる?みたいに首傾げんのがベストや…ほんで
「……えっと?」
危ない危ない。もう少しで一人称間違えるとこやったわ…。あたしは今は「マサ」やからね
『ふぅん竜語はわかんないのか…「うん。そこの人間の君。さっき扉のとこで会ったよね?覚えてる?」この子さ~門の前で尻痛めたみたいでうずくまってたんだよね~』
ぐはっ!!ここにもデリカシーの無い子発見!!
ぐぬぅ…しかも竜語で竜だけに語るとは……
「あぁ…まぁ」
出来ればあのイケメンに尻具合を心配されるなんて暗黒歴史は記憶の彼方、もしくは宇宙の果てにやってまいたいけどなっ!!
『この者はまだ見習い故、道に迷っていたのでしょう…』
『…見習いねぇ「…見習い君がどうして今ここにいるの?」…竜舎ってこんなに気軽に人間が入れるようになってるわけ?』
…嫌やわぁ~変な汗がめちゃ背中に流れてんねんけど…さて困ったで?何言うて誤魔化したらええんやろ。