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「夏の終わりの花火大会は心拍数が爆上がり?」

 


「ねえ早く早くー!」


 毎年夏の終わりに開催される花火大会。塾の地獄の夏期講習を乗り切ったご褒美に、少しだけでも良いから羽根を伸ばしたい!と悶えている受験生にとって、唯一のイベントだ。俺と奏音(かのん)も当然行くことになった。



 それはまあいいんだけど。


 ……二人きりじゃなくて、俺達の友達の恵士(けいじ)とサクラも一緒に、なんだよなー。


「みんなで行こうよ!きっと楽しいよ!」って奏音が言い出したから、嫌とは言えず。二人きりで出かけられなかったのは、少しだけ……ほんのすこーしだけ不満だけど、まぁしょうがない。これはこれで楽しいから良しとしよう。







 ………。






 良しとしよう。







 Q、本音は?


 ウソをつきました!ちくしょー来年こそは二人きりで来てやるぅ!


 いや別にシタゴコロとかはないぞ?たださぁ……ほら、友達いると、どうしても同性同士で話すじゃん?歩くじゃん?そーすっと例えば………例えば!手をつないで歩くとかなんか出来なくね?恵士とサクラは別に付き合ってねーから、尚更なんだよなあ。そう、純粋に二人きりの時間というものを大切にしたくてだな……ゴニョゴニョ



蒼矢(そうや)、さっきから何言っとるん?」

「い、いや?ナンデモナイヨ?」

「ほーなん?それじゃ早く席取ろうよ!それから屋台ね!」

「うぃっーす」


 まぁ奏音は喜んでるからこれはこれで良いかぁ。




 この太田川花火大会は、駅のホームを降りると目の前の河川敷が会場になっている。宮島の水中花火大会に比べれば小さな規模だけど、アクセスの良さで結構人出はある花火大会だ。


「相変わらず多いねえ」

「く〜!あの屋台の灯り!祭りはやっぱこうだよなあ」

「ちょっと!場所取りが先じゃけえね」

「分かっとるって」


 ここの花火は小さい頃から来てたけど、カノジョと来るのは初めてだ。浴衣姿の奏音は、またいつもと違った雰囲気がこう……いい!でも花火を見た方が良いのか、奏音を見た方が良いのか分かんなくなるのが困ったもんだ。


「あ、ねえねえ、イチゴ飴あるじゃん!」


 それにしても、来年はどうなるんだろう。大学は一応一緒のところ目指してるけど、どうなるか分からない。というか、今のところ自信ないなあ。


 ないけど、イマイチやる気起こんないんだよなあ。


「ねえ?さっきから何考えとるん?」

「え、あ、いや、なんでも?どうした?」

「もー。イチゴ飴、じゃんけんで勝ったら2つ貰えるんじゃって」

「よっしゃ任せろ」


 オッチャン、走ってるバスに乗ってても奏音を見つけ出せる俺の動体視力を舐めるなよ?


 はい、最初はグー!

 じゃーんけーんぽい!


「オラァ勝ったぁぁ!」

「やったねー!」

「くっ、やるな少年!だがこの倍々チャンス、受けてみるか?」


 おっとオッチャン、ソイツは悪手だぜ?


「その挑発、受けて立とう!」

「ちょっとぉ!?」


 止めてくれるな!

 避けては通れない時があるのだ!


 はい、最初はグー!

 じゃぁぁーんけーん!ぽぉぉーい!





☆☆☆



「………イチゴ飴、16個ってどーすんのよ」

「オッチャン、悔しがってたなー」

「かわいそー」

「原価100円もしねーから大丈夫だろ。おーいサクラ、恵士…………ってお前ら、その手……なんで繋いどるんじゃーや?」


 えーっと?

 コイツら付き合ってなかった……よな?


「さっき告白されました」

「さっき告白しました」


 はぁぁぁぁ?

 いつの間に?


「わぁサクラおめでとうー!」

「ありがとー!」


 さては奏音、これ狙ってたのか?

 やるなあ。


「おう、おめでとう。お祝いにコレやろう」

「ありがとう?てかナニソレ。イチゴ飴多くね?」

「戦利品だ」


 まだ行けたけどな。オッチャン、泣きが入り始めたから………あ。


「花火!」 

「上がり始めたね。早く行こう!」


 オープニングの連続花火が川面に映って辺りを一際明るく照らし始める中、奏音が俺の手を掴んで観覧席へと引っ張る。小さく柔らかな手に、ドキッとすると共に手汗をかいてないか心配になる。



「………ちょっと待て。そーいやお前らに託したたこ焼きは?」


「手が足りなくてー♡」

「と、いうことじゃ♡」


「ほいじゃあ、その手を離せやぁあ!」






 。o○。o○゜・*:.。. .。.:*・゜。o○。o○゜・*:.。. .。.:*・゜



「綺麗だったねー」

「そうだな。やっぱ近くで見れるって良いよな。………けど、帰りのこの人の多さがなぁ」



 帰りの電車は超混雑中。


 他のヤツラに奏音を触らせないために、なるべく隅っこの方に行ってガード!うーん……体勢的には「壁ドン」なんだが、ちっともそんな雰囲気じゃない。周りの物理的な「圧」に負けないように体を支えるのが精一杯だ。



 ガンバレ俺の上腕三頭筋ー!




「……ねぇ あのね」

「ん?」



 満員電車の中、奏音が背伸びして、耳元で囁く。列車内に充満している屋台の匂いを打ち消す奏音が着けてる香りがハッキリとする。


 コレはヤバイ。

 心臓の音がバレそうだ……!



「来年は()()()()()来ようね?」

「………! モチロン!」



 ちょっと顔が赤くなってる奏音。カワイすぎて思わず抱きしめたくなるのを必死にこらえる。でも今しちゃうと二人とも潰れちゃうし!人前だし!


 ガンバレ俺の上腕三頭筋と理性ー! 




 ……でもよし、来年の約束の為にお勉強頑張るとしますか。やってやろーじゃん!


 それにしても、もう少し人数減ってくれねぇかなぁ?これじゃ雰囲気も何もあったもんじゃない!


 ええぃ!ガンバレ俺の上腕三頭筋と大胸筋と前鋸筋ンンンー!






「次はー〇〇駅にぃーとまりーます」


 どわ!増えただと⁉

 いかん!これでは()()してしまう! 


「んっ…押しつぶされちゃったね……なんか抱きしめられてるみたいじゃねぇ」

「~~~~~‼」






 だめだ!

 これはアカーン!

 筋肉以上に理性の耐久力が保たんわぁ!

 

 浴衣越しに伝わる柔らかさと鼓動が!

 ほいで目の前で頬をほのかに染めて上目遣いしてくる奏音が可愛すぎる!



 というか神様アリガトウゴザイマス!

 明日から死ぬ気でガンバリマス!



 

 









残念な事に太田川花火大会はもうやってないんです。


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