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「二人乗りの帰り道で」




 文化祭まであと一週間。


 準備に没頭していると、下校を促すアナウンスが校内に流れてきた。



「やべ。帰ろーや」

「ペナくらうし、急ごっか」



 そんな話をしながら昇降口まで来た時に、真美(マミ)が声をかけてきた。



「ねぇ、今日チャリで来たんでしょ?送ってってよ」

「マテ。オマエん()反対方向だろ?」

「2ケツしたらいいじゃん!」

「女の子が『ケツ』とか言うなって!んでバレたら罰金だぞ?」

「ダイジョブっ!もう暗いから!」



 コイツは決して悪いヤツではない。

 それどころか人気者だ。

 だから…

 


「送ってあげないの?」

「真美カワイソー」

「おまえ…ないわー」



 こうなるよな。

 ハイハイ わかりましたよ!



「頑張れ真美ー!」



 解せぬ。

 頑張るのは俺なんだが?



「よーしれっつごー!」

「…股広げて座るなよ」

「だって安定しないし」

「ソウデスヨネー」



 でもなんで俺?

 チャリって俺だけだったっけ?



「ほらガンバレー!」



 いや坂だから!

 重いとか言えないし!


 お?ようやく登り終わったか。



「坂降るから掴まっとけよ 危ないぞ?」

「うん わかった」



 そこまでギュっとしなくてもいいんだが?

 なるべくゆっくり坂を降るけど、それでも風切り音で周りの音が聞こえにくい。



「ねえー?彼女いないんでしょー?」

「フラれたばっか!準備ん時に言ったろーが!」



 だからさー

 お前は何で傷を抉るんだ



「だったら──」

「はいー?聞こえねーぞー?」

「もう!ちょっと止めろー!」



 なんだよもう!

 急ブレーキは危ねーんだぞ?

 ほら「慣性の法則」で背中に顔めり込んだろが!



「ったく、顔大丈夫か?」

「──じゃ、ダメ?」

「はい?よく聞こえな…」









「私じゃ、だめ?」







 はい?




 あ。




 あーつながった。

 だから「頑張れ」…か。




 真美は背中に顔を押し付けたままなので顔は見えないけど、少し震えているのは分かる。

 



「おい。ちょっと手ぇ離せ」

「……顔見られたくないからヤダ」


そうか………ならこのまま話すしかない、か。


「あのさ、今の俺の状況分かってるよな?」

「うん。でも我慢できなくなっちゃった」

「と言われてもなあ」

「……やっぱ、ダメ?」


 俺は少し頭をかいて考える……ふりをする。こーいう返事はなかなか言いづらい。さて、どう答えるものか……。


 頭の中をフル回転させて自分の気持ちと照合させるのには、どれくらいかかったんだろう?その数秒がまるで1時間位に感じた。


 俺は息をゆっくり吐いて、それから伝えるべき言葉を口にした。


「まだ完全に吹っ切れたわけじゃないんだ。だから……」



 締め付けていた腕を振りほどくと、真美の顔は真っ赤で今にも泣きそうだった。


 そんな顔するなよ。

 言いづらいじゃないか。



「責任取って忘れさせてくれ。よろしくな?」


「────!任せて!」


「じゃあもう歩くぞ」


「えー?」


「あのなぁ」



最初の記念日が「罰金の日」なんて嫌だろ?












二人乗り、ダメ、絶対。

だけどなー。


それ言うのは野暮ってもんよ。






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