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第8章「断罪の前夜」


暗い夜空の下、アイリスは王宮の外壁に沿って息を切らしながら走っていた。冷たい石壁が月明かりに青白く輝き、影のように彼女は壁に沿って動いていた。セレスティアを罠に残してきた苦しみが胸を締め付け、一歩ごとに自責の念が重くのしかかる。


「どこ…レヴィン王子は…」


荒い息の間から漏れる言葉は、白い霧となって夜空へと消えていく。王宮の北側を目指しながら、彼女は何度も振り返った。追手はないか、友を置き去りにした森の方向を見つめる目に、涙が浮かんでいた。


突然、近くの茂みが不自然に揺れ、アイリスは反射的にペンダントを握りしめた。指先に冷たい魔力が集まる。「誰?」


「アイリス、こちらだ」


その瞬間、安堵感が彼女の全身を包み込んだ。レヴィン王子が慎重に茂みから姿を現した。彼の手には古びた銀の縁取りがされた鏡—「真実の鏡」が大切そうに抱えられていた。


「レヴィン!」


名前を呼び、駆け寄ると、彼は一瞬アイリスの姿を見て安堵の表情を浮かべた。しかしすぐに、彼女が一人であることに気づき、表情が緊張に満ちたものに変わる。


「セレスティアは?」


その問いに、アイリスの言葉が詰まった。喉が乾き、罪悪感が重くのしかかる。「捕まった…彼女が私のために時間を稼いでくれて…」


その言葉を口にした瞬間、現実がより重く感じられた。友を見捨てたという事実が、心に深く刻まれる。


レヴィンの表情が曇る。月明かりに照らされた彼の顔に、怒りと心配が交錯していた。「『永劫の檻』の仕業か」


「彼らは私たち二人を罠に誘き寄せたの。ミランダがリディアに化けて…」アイリスの声は震えていた。そして罪悪感と共に怒りが湧き上がる。「彼女を助けなきゃ…」


「落ち着いて」レヴィンはアイリスの肩に手を置いた。その手の温かさが、冷え切った彼女の体に染み渡る。「まずは安全な場所へ。ここでは話せない」


彼に導かれ、アイリスは王宮の秘密の通路を通って隠れ家へと向かった。狭い石の通路は冷たく湿っており、トーチの明かりが壁に揺らめく影を作り出す。レヴィンは心配そうに何度も振り返り、アイリスの状態を確認していた。その優しさに、彼女は胸の奥に温かいものを感じた。


「ここなら大丈夫だ」


到着したのは王宮の地下深くにある小さな部屋。古い石造りの壁には古代の魔法の紋様が刻まれ、空気そのものが魔力で震えているのを感じる。部屋の中央にはテーブルと数脚の椅子、壁には本棚と魔法の道具が並んでいた。


「守護者の隠れ家」レヴィンが誇らしげに説明した。「何世紀も前から、闇の魔法に対抗する者たちの秘密の場所だ。第一代の王が築いたと言われている」


「真実の鏡」を大切そうに台の上に置く彼の姿に見入る。銀の縁取りがされた古い鏡は、一見普通の古びた鏡に見えたが、よく見ると表面がわずかに波打ち、内側から青い光が脈動しているのが分かった。まるで生きているかのようだ。


「セレスティアを救わなければ」アイリスは焦りを抑えきれず言った。彼女の青い瞳に決意の色が宿る。


「わかっている」レヴィンは真剣な表情で頷いた。彼の紫の瞳に強い光が宿った。「だが無謀な行動は禁物だ。彼らはそれを望んでいる」


「どういう意味?」アイリスは困惑した表情で尋ねた。


「『永劫の檻』の目的は光と氷の力を使った大儀式だ」レヴィンは壁の地図を指さしながら説明した。「セレスティアを囮にして君を誘き出す可能性が高い。それは…」


レヴィンの言葉に胸が締め付けられる。友を救いたいという感情と、冷静な判断の間で揺れる心。床に小さな霜の結晶が広がり始める。


「では、彼女を見捨てるの?」アイリスの声が震えた。彼女の手が無意識にペンダントを強く握りしめる。


「いいや」レヴィンの目に決意の色が宿った。彼は一歩近づき、アイリスの両肩をしっかりと掴んだ。「救出する。だがその前に、君は明日の『断罪の儀』を乗り切らなければならない。それが彼女を救う最善の道だ」


彼の言う通りだと理解しつつも、アイリスの心は友を置き去りにした罪悪感で押しつぶされそうになる。目に涙が溢れそうになるのを必死に抑える。


「どうすれば…」


話している最中、部屋の扉が勢いよく開き、エリオットが滑り込んできた。彼の銀髪は乱れ、普段の余裕のある表情はなく、緊張感に満ちていた。赤い瞳に焦りの色が見える。


「聞いた」彼は息を切らせながら言った。「セレスティアが捕まったと」


「ああ」レヴィンが厳しい表情で答える。「状況は予想以上に悪い」


「彼女はどこ?」アイリスは切羽詰まった声で尋ねた。その青い瞳に恐怖と決意が混じり合う。


エリオットは深く息を吐き、疲れた様子で壁にもたれかかった。「『永劫の檻』の本拠地に連れて行かれたと思われる。西の森の奥、古城跡だ」


「知っているの?」アイリスは驚いて問いかけた。


「以前、偵察したことがある」彼は言った。その声には千年の時を生きてきた疲労が滲んでいた。「しかし、侵入は容易ではない。強力な結界で守られている。オブシディアンの魔法はただものではない」


レヴィンとエリオットが救出計画について議論を始める中、アイリスは窓辺に立ち、夜空を見つめた。満天の星が冷たく輝いている。セレスティアは今、どんな状況にあるのだろう。恐怖に怯え、孤独の中にいるのだろうか。思い出されるのは、彼女の最後の言葉と笑顔。「友達と呼んでくれて嬉しかったです」


「フリーズ」


小声で契約精霊を呼ぶと、空気が冷たくなり、青い光が現れて小さな氷の結晶の姿が形作られた。まるで小さな人型のように、星のような目を持つ氷の精霊。


「アイリス、大変なことになったね」彼の声は風鈴のように透明感があった。


「セレスティアを感じる?私たちの魔力には繋がりがあったはず」アイリスは希望を込めて尋ねた。


フリーズは静かに光を放ち、まるで瞑想するように一瞬目を閉じた。「かすかに…西の方角。彼女は生きている。光の波動が弱いが、確かに存在している」


その言葉に少し安堵するアイリス。肩の力が抜ける。「ありがとう」


「しかし、彼女の光の魔力は弱まっている」フリーズは懸念を示した。表情が曇る。「『血の封印』によって抑制されているようだ。時間がない」


マーカス教授が持っていた黒い結晶のこと。セレスティアの自由を奪う禁忌の魔法具。アイリスは胸に痛みを感じた。


「なぜ彼らは彼女を殺さないの?」恐ろしい質問だが、知る必要があった。アイリスの声は震えていた。


「彼らには生きた『光の守護者』が必要なんだ」フリーズが説明する。「大儀式には、光と氷の生命力そのものが必要とされる。単なる魔力では足りない。二人の本質、魂の繋がりが鍵となる」


その瞬間、レヴィンとエリオットの議論が一段落したようで、二人が近づいてきた。レヴィンの表情には決意が、エリオットの目には複雑な感情が宿っていた。


「アイリス、作戦が決まった」レヴィンが力強く言った。「明日の『断罪の儀』で真実を公開し、そこから直接セレスティア救出に向かう」


「でも、儀式は学院で行われる。西の森まで距離があるわ」アイリスは実際的な懸念を示した。


「私たちには味方がいる」エリオットが意味深に言った。彼の赤い瞳が妙に輝いている。「ミランダ・クリムゾンだ」


「ミランダ?」アイリスは驚きを隠せず、声が上ずった。「彼女は私たちを罠に誘き込んだのよ!」


「家族を人質に取られていたからだ」レヴィンが説明した。「彼女からの密かな連絡があった。家族が解放され、今、彼女は選択をした。内部から私たちを助けることを」


「信用できる?」アイリスの目に疑念が浮かぶ。


「完全には」エリオットは正直に言った。彼の顔に影が落ちる。「だが他に選択肢はない。彼女は『血の封印』を解く方法を知っているかもしれない」


計画の詳細を聞きながら、アイリスの中に決意が固まっていく。視線がペンダントから「真実の鏡」へ、そしてレヴィンとエリオットの顔へと移る。セレスティアを救い、『永劫の檻』を止める。それが彼女の使命だ。


「真実の鏡」をじっと見つめながら、もう一つの疑問が浮かぶ。「この鏡で何ができるの?」


「過去の真実を映し出せる」レヴィンが答えた。彼は鏡に近づき、指先でその縁を優しく撫でた。「しかし強い魔力が必要だ。君の『氷の記憶』と私の風の魔法を組み合わせることで、本来は見えないものを多くの人に見せることができる」


「セレスティアの助けなしでも?」アイリスの声に不安が混じる。


「難しいが、可能だ」レヴィンは彼女の目をまっすぐ見つめ、自信を持って言った。「いや、必ずやり遂げる」


レヴィンの決意に満ちた言葉に、アイリスの心が温かくなる。彼の紫の瞳に映る強さと優しさに、彼女は力をもらった気がした。


「もう一つ質問がある」アイリスはエリオットに向き直る。彼の赤い瞳をまっすぐ見つめ、長い間疑問だった事を尋ねた。「あなたの真の目的は何?レヴィンは『世界の再構築』と言っていたけど、それってオブシディアンの目的と同じではないの?」


部屋に緊張が満ちる。エリオットはレヴィンを一瞥し、深く息を吐いた。彼の銀髪が月明かりに青白く輝いている。


「真実を話す時が来たようだ」


彼は窓辺に歩み寄り、夜空を見上げた。星々が彼の目に反射して、まるで宇宙そのものを映しているかのようだった。


「私とオブシディアンは…かつて同志だった」その声は遠い過去からの響きを持っていた。


「同志?」アイリスは息を呑んだ。


「千年前、私たちは『時の魔法』を追求する研究者だった。永遠の命を求めて」彼の声に懐かしさと深い悲しみが混じり合う。「若く、愚かだった。永遠に生き、すべてを知りたいという欲望に取り憑かれていた」


「それで?」アイリスは身を乗り出した。


「研究の結果、世界に歪みが生まれた」エリオットは窓から差し込む月明かりに手をかざした。その指の間から漏れる光が、床に不思議な模様を描く。「時間と空間の境界が曖昧になり、異なる世界線が交錯するようになった」


「世界線?」


「異なる可能性の世界だ」彼は説明した。「この世界が『乙女ゲーム』のように見える理由の一つがそれだ。君の前世の記憶は、別の世界線からの断片なのだ」


驚きの事実に息を呑むアイリス。彼女の青い瞳が見開かれた。「前世の記憶が、単なる偶然ではないの?」


「そうだ」エリオットは頷いた。「『世界の歪み』が異なる世界線の記憶を混在させている。君が『佐々木美咲』の記憶を持つのも、その影響だ」


「では、私の転生は…」アイリスの声が震えた。彼女の世界観が一変する衝撃に、言葉を失いかける。


「世界の修復のための鍵だ」彼は真剣な眼差しで言った。「『氷翡翠の巫女』の血を引く者に、別の世界線の記憶を与えることで、歪みを認識し、修正できるようにしたのだ」


レヴィンが側に来て、静かに補足する。「言い換えれば、君はこの世界の運命を変える力を持っている。それがオブシディアンが君を狙う理由でもある」


複雑な真実に、アイリスの頭が混乱する。しかし同時に、これまでの謎が解け始めた気がした。「悪役令嬢」として目覚め、その運命を変えようとしてきた日々が、もっと大きな目的のためだったとは。


「私とオブシディアンの違いは、方法と目的だ」エリオットが続けた。彼の表情が厳しくなる。「彼は世界を完全に『リセット』し、自分の理想の形に作り変えようとしている。すべての存在を彼の意志の下に置こうとしているのだ」


エリオットは一歩近づき、アイリスの目をまっすぐ見つめた。「一方、私は歪みを修復し、世界線を正しい軌道に戻そうとしている。人々の意志と選択を尊重したまま」


「どちらにしても、世界は変わるのね」アイリスは冷静に分析した。


「ああ」彼は素直に認めた。「だが、変化の程度と影響が全く異なる。オブシディアンの方法では、多くの命が失われ、自由意志が奪われる」


「私はどうすればいいの?」アイリスの声に迷いが混じる。


「それは…君自身が決めることだ」エリオットの赤い瞳が優しく光った。「本来なら選択を強いるべきではないのだが、時間がない」


レヴィンが近づき、アイリスの肩に手を置いた。その温かな感触に、彼女は少し身を寄せた。「アイリス、君の選択が何であれ、私は支持する」


彼の温かさに、アイリスの心が揺れる。かつては政略結婚の相手としか思えなかった王子が、今では頼れる存在になっていた。


「いくつかの質問がある」アイリスは背筋を伸ばし、決意を固めた。「まず、私の母について。彼女も『氷翡翠の巫女』だったの?」


「そうだ」エリオットが頷く。「エレノア・フロストヘイヴンは、強力な『時の魔法』の使い手だった。そして『永劫の檻』に対抗する『守護者』の中心人物でもあった」


「彼女が殺された理由は?」アイリスの声が冷たくなる。


「彼女は『永劫の檻』の計画に近づきすぎた」レヴィンが答えた。彼の目に怒りが宿る。「そして何より、君を守るために身を投げ出したのだ」


「私を?」アイリスは驚いて目を見開いた。


「君には特別な力がある」エリオットが説明する。光と影が交錯する彼の顔に、畏敬の念が浮かぶ。「通常の『氷翡翠の巫女』の力に加え、別の世界線の記憶という特殊な要素を持つ。それが『世界の歪み』を修復する鍵になる」


次々と明かされる真実に、これまでの人生が違う角度から見え始める。アイリスは手の震えを抑えきれなかった。彼女の指先から小さな氷の結晶が床に落ち、月明かりに青く輝いていた。


「フリーズ」アイリスは小さな氷の精霊に向き直る。「あなたも知っていたのね?」


「ああ」フリーズは静かに認めた。青い光が揺れる。「私は君の母親から託された『守護者』の一人だ。君が目覚める日まで見守るようにと」


「なぜ早く教えてくれなかったの?」アイリスの声に怒りが混じる。


「時期が重要だった」彼は答えた。「力は一度に目覚めさせると危険だ。そして何より、君自身の選択が必要だった。強いることなく、自ら道を選べるように」


アイリスは深く息を吐いた。自分の運命と向き合う時が来たことを感じる。窓の外では、夜空に満月が近づいている。銀色の光が部屋を柔らかく照らす。あと三日後、冬至の夜、「永劫の檻」の大儀式が行われる。


「さて」レヴィンが話を戻した。「明日の『断罪の儀』の準備をしよう」


彼は「真実の鏡」を中央のテーブルに置き、私たちはその周りに集まった。鏡の表面が夜の闇のように深く、時折青い光が内側から波打っている。


「アイリス、『氷の記憶』を鏡に向けて詠唱してみて」レヴィンが優しく促した。


アイリスはペンダントを取り出し、深く息を吸い込んだ。「Memoria Glacialis」(氷の記憶)と唱える。ペンダントから青い光が星屑のように放たれ、鏡の表面に触れると、鏡全体が淡く光り始めた。


「今度は過去の映像を思い浮かべて」エリオットが静かに言った。「集中して」


アイリスは目を閉じ、記憶を呼び覚ます。母の死の瞬間、ドロシアが毒を渡す場面、そして父が「永劫の檻」に対抗していた証拠—全てを集中して思い浮かべる。胸が痛むような記憶だが、真実を示すために必要だった。


鏡の表面がさざ波のように揺れ、映像が水面に浮かぶように形成され始めた。母エレノアの美しい顔が一瞬見え、ドロシアの冷酷な笑みが垣間見える。しかし、すぐに映像が波紋のように消えてしまう。


「力が足りない」フリーズが残念そうに言った。「セレスティアの光の魔法がないと、安定しない」


「私の力を使おう」レヴィンが前に出て、杖を高く掲げた。「Ventus Spiralis」(螺旋の風)と唱えると、青白い風の渦が杖から生まれ、鏡の周りを回り始めた。


風の魔法が鏡の周りを回り、アイリスの氷の魔力を増幅する。映像が少し長く持続するようになり、母の書斎での最期の場面がより鮮明に見えるようになった。しかし、まだ不安定で、すぐに波紋となって消えていく。


「十分ではないな」エリオットが懸念を示す。彼の表情に影が落ちる。「『断罪の儀』では、もっと安定した映像が必要だ。大勢の前で真実を示すには力不足だ」


「何か足りないものは?」アイリスは焦りを隠せなかった。


「『光の守護者』の力だ」エリオットは真剣に言った。「つまり、セレスティアを救出しなければならない」


三人の顔に緊張が走る。当初の計画を変更する必要がある。レヴィンが窓際に立ち、夜空を見上げながら考え込んでいた。


「明日の朝、『断罪の儀』の前にセレスティアを救出する」レヴィンが突然振り返り、決断を下した。「そして二人揃って儀式に臨む」


「でも、時間が…」アイリスは不安を隠せなかった。


「危険は承知だ」彼は断固として言った。紫の瞳に決意の炎が燃えていた。「しかし、これが唯一の道だ。時には最大のリスクが、最善の選択となることもある」


エリオットも同意し、頷いた。「救出作戦の詳細を詰めよう。時間がない」


深夜になり、三人は救出計画の細部を詰めていた。エリオットが古い羊皮紙に描いた西の森の古城への侵入経路、結界の突破方法、内部の予想図まで。彼の千年の知識は、今こそ真価を発揮していた。


計画の合間に、レヴィンがアイリスに熱いお茶を差し出した。蒸気の立ち上る茶色い液体から、ハーブの香りが漂う。「少し休んだ方がいい。明日は長い一日になる」


彼の優しさに心が震えるアイリス。手を伸ばしてカップを受け取ると、彼の指と触れ合い、電流のような感覚が走った。「ありがとう」


静かな瞬間を共有した後、アイリスは勇気を出して尋ねる。「私のこと…どう思ってる?」


彼は少し驚いた表情をしたが、すぐに柔らかな微笑みを浮かべた。彼の頬にわずかに赤みが差す。


「最初は政略結婚の相手として、距離を置いていた」彼は正直に言った。窓際の月明かりが彼の横顔を照らし、美しい影を作り出す。「だが今は…違う」


「違う?」アイリスは小さく息を呑んだ。


「君の勇気、知性、そして優しさに惹かれている」彼の紫の瞳が真摯な色を帯びる。彼は一歩近づき、アイリスの手を取った。「政治的な理由ではなく、一人の女性として。初めて会った時から感じていた、君の中にある強さと優しさ」


その言葉に頬が熱くなり、アイリスは目を伏せた。心臓が早鐘を打ち、耳まで熱くなるのを感じる。「私もレヴィンに惹かれているわ。最初は『ゲームの王子様』という先入観があったけど…」


「ゲーム?」彼は小さく笑った。その笑顔は初めて見るほど柔らかく、少年のような無邪気さがあった。「私はゲームのキャラクターではなく、血の通った人間だよ」


「知ってる」アイリスは見上げ、微笑み返した。「それがいいの。本当のあなたを知れて」


エリオットが咳払いをして、二人の会話を中断させた。彼の赤い瞳に、どこか寂しげな色が浮かんでいた。「申し訳ないが、作戦の続きを。時間は限られている」


少し恥ずかしく感じながらも、アイリスとレヴィンは計画に戻った。しかし、二人の間に生まれた新しい絆は、この瞬間から強まったように感じられた。


時間が経つにつれ、疲労が押し寄せてきた。レヴィンの勧めで少し休息を取ることにした。部屋の隅にある小さな寝台に横になりながら、アイリスは明日の行動を思い返す。


夜明け前に出発し、西の森へ。古城に潜入し、セレスティアを救出。そして「断罪の儀」に間に合うよう戻る。綱渡りのような計画だが、他に選択肢はなかった。友のため、父のため、そして世界のために。


目を閉じると、セレスティアの笑顔が浮かぶ。金色の髪、翡翠色の瞳、そして優しさに満ちた笑顔。「友達と呼んでくれて嬉しかったです」という最後の言葉。彼女の犠牲を無駄にはしない。必ず救い出し、真実を世に明かす。


半睡状態で、聞こえてくる声。レヴィンとエリオットが小声で話している。


「本当に彼女を信じているのか?」エリオットの懐疑的な声。


「もちろんだ」レヴィンの確信に満ちた返答。「アイリスには特別な力がある」


「彼女が選択を誤れば、世界は破滅する」エリオットの声には千年の重みがあった。


「アイリスは正しい選択をする」レヴィンの声に温かさと信頼がある。「私は彼女を信じている」


その言葉を最後に、アイリスの疲れた意識が闇に沈んでいった。レヴィンの信頼が、心地よい安心感をもたらし、彼女は久しぶりに深い眠りに落ちた。


---


夜明け前、冷たい空気が肌を刺す。星々がまだ空に瞬く中、アイリスたちは王宮の裏門から忍び出て、西の森へと向かった。朝露が草木を濡らし、足元の小道は滑りやすくなっていた。


「真実の鏡」はレヴィンが大切そうに布に包んで携帯し、アイリスはペンダントを首に下げている。エリオットは闇の魔法で三人の気配を隠しながら先導していた。彼の銀髪が朝の微かな光に青白く輝いている。


「どれくらいかかる?」アイリスは小声で尋ねた。息が白い霧となって空気中に漂う。


「一時間ほど」エリオットが答えた。彼は周囲を警戒しながら足を進める。「『断罪の儀』は正午。時間的には余裕があるはずだ」


森の奥へと進むにつれ、周囲の空気が変わっていく。木々が密になり、日の光がほとんど届かなくなる。魔力を帯びた重い空気が肌に触れ、不快な感覚をもたらす。「永劫の檻」の結界が近いことを示している。


「あれだ」


エリオットが指さした先に、朝霧に包まれた古い城の輪郭が見えてきた。灰色の石壁に覆われた巨大な建物は、一見すると廃墟のように見える。しかし魔法の目で見ると、強力な結界が赤い糸のように張り巡らされているのが分かった。


「どうやって中に?」アイリスは緊張した面持ちで尋ねた。


「裏口がある」エリオットが説明した。彼の表情に決意の色が宿る。「かつて『永劫の檻』のメンバーだった私は、弱点を知っている。彼らは千年経っても、同じ過ちを繰り返す」


彼の導きで城の裏手に回り込む。壊れた塔の下、一見すると壁しかないように見える場所で、エリオットが特殊な魔法を詠唱する。彼の赤い瞳が異質な光を放ち、指先から赤い魔力が流れ出る。


「Tempus Aperio」(時を開く)


壁に亀裂が走り、まるで石が溶けるように小さな通路が現れた。魔法の光が通路を照らし、冷たい風が内部から吹き出してくる。


「急いで」彼は言った。「結界が閉じる前に」


三人で素早く通路を通り抜け、城内に潜入する。内部は想像以上に保存状態が良く、古代の魔法装置が稼働しているのが見える。壁に掛けられたトーチが青白い炎を灯し、不気味な影を作り出していた。


「セレスティアはどこ?」アイリスは小声で尋ねた。


「地下牢だろう」レヴィンが言った。彼は剣を用意し、警戒している。「この手の組織は常に囚人を地下に置く。そこが最も結界が強いからな」


慎重に廊下を進み、階段を探す。城内は不気味なほど静かで、人の気配がない。足音さえも魔法で消しながら、三人は影のように移動していく。


「おかしい」エリオットが突然立ち止まる。彼の表情に不安の色が浮かぶ。「警備が少なすぎる」


「罠?」レヴィンが剣を構える。


「可能性は高い」エリオットは周囲を警戒した。彼の目が暗い廊下の隅々まで探る。「しかし、前に進むしかない。彼らの狙いは私たちを引き寄せることだからな」


地下への階段を見つけ、三人は慎重に降りていく。湿った空気と、かすかな魔力の波動、そして何より強い「血の封印」の気配を感じる。誰かがいる。


「あそこ」


レヴィンが小声で言った。指さす先の薄暗い廊下の奥に、鉄格子の牢がいくつか並んでいる。一番奥の牢に小さな人影が見える。金色の髪が青白い魔法の光に照らされていた。


「セレスティア!」


思わず声を上げそうになるアイリスだが、レヴィンに肩を掴まれ止められる。「慎重に」彼は警告した。


三人で慎重に近づき、牢の中を覗く。セレスティアが床に横たわっていた。彼女の胸元には「血の封印」の黒い結晶が埋め込まれ、赤い光が脈動している。無傷のようだが、意識がないように見える。青白い顔は、苦悩に歪んでいた。


「どうやって開ける?」アイリスは焦りを隠せなかった。


エリオットが鍵を調べる。「魔法の封印だ。複雑な構造をしている」


彼が複雑な詠唱を始めようとした時、不意に廊下の松明が一斉に明るく燃え上がり、周囲の空間が眩しいほどに明るくなった。三人は反射的に目を守るように顔を背ける。


「よく来たな」


背後から冷たい声がする。振り向くと、マーカス教授が数人の黒いローブの人物と共に立っていた。彼の目は冷酷な光を放ち、口元には勝ち誇った笑みが浮かんでいる。


「罠だったか」レヴィンが剣を抜き、構える。その刃が青い光を放った。


「もちろん」教授は冷笑した。「永遠に生きる者の計画を甘く見るべきではない。千年の経験には敵わんよ」


彼の背後から、さらに一人の人物が現れた。高齢に見える男性だが、驚くほど強い魔力を放っている。白髪に覆われた頭と、鋭い眼光。彼の周りの空気が歪んでいるように見える。


「オブシディアン…」エリオットの声が震えた。赤い瞳に恐怖と懐かしさが混じる。


「久しぶりだな、古き友よ」オブシディアンと呼ばれた男が穏やかな声で言った。その声と裏腹に、彼の目は氷のように冷たかった。「千年ぶりか」


彼の存在だけで空気が重くなる。アイリスは息苦しさを感じた。圧倒的な魔力と、千年の時を生きた老獪さを感じさせる存在。彼女の脳裏に浮かぶのは、前世で見た古代の賢者の姿だった。


「『氷翡翠の巫女』と『光の守護者』、そして裏切り者」オブシディアンが三人を見渡した。彼の目がアイリスに止まると、冷たい視線に見つめられる感覚に身震いする。「全員揃ったな。素晴らしい。計画通りだ」


「セレスティアを解放して」アイリスは勇気を振り絞って言った。彼女の声が少し震える。


「彼女は重要な駒だ」オブシディアンは親しげに笑った。しかしその笑みには温かさがなかった。「さて、どうする?抵抗するか?それとも大人しく運命を受け入れるか?」


エリオットが突然アイリスとレヴィンの前に立ちはだかった。彼の銀髪が風もないのに舞い上がり、全身から闇の魔力が放出される。「アイリス、レヴィン、逃げろ!」


彼の手から強力な闇の魔法が放たれ、廊下全体が黒い霧に包まれる。「Umbra Maxima!」(極大闇)


闇の中から、オブシディアンの怒りの声が響く。「またか、エリオット!千年経っても同じ手だ!」


「行くぞ!」レヴィンがアイリスの手を強く握った。「私についてこい!」


「でもセレスティアは!」アイリスは抵抗した。友をまた見捨てるわけにはいかない。


「彼女は囮だ!本物は別の場所にいる!」エリオットが闇の中から叫んだ。「私が時間を稼ぐ!」


混乱の中、レヴィンがアイリスの腕を引っ張り、牢の中を指さした。「見ろ!」


よく見ると、「セレスティア」の姿が徐々に霧のように消えていく。床から立ち上がったかと思うと、人形のように形が崩れ、最後には赤い霧となって消えた。幻影だったのだ。


「くそっ!」アイリスは怒りを爆発させた。彼女の周りに氷の結晶が舞い始める。


エリオットの魔法のおかげで一時的に敵を混乱させられたが、すぐに追っ手が来るだろう。廊下の奥から黒いローブの集団が押し寄せてくる。


「急いで!」レヴィンが叫んだ。


三人で階段を駆け上がり、城内を逃げ回る。「本物のセレスティアはどこ?」アイリスは息を切らしながら尋ねた。


「彼女の魔力を感じる?」レヴィンが肩越しに問いかける。


アイリスはペンダントを強く握りしめ、心を落ち着かせて集中した。目を閉じ、セレスティアの光の魂を探る。かすかな光の波動が感じられる。「かすかに…東の塔?上の方に」


「行こう」レヴィンが先導する。


城内を駆け抜け、東の塔へと向かう。背後からの追っ手の足音と怒号が迫ってくる。廊下を曲がるたびに、エリオットが闇の魔法で追っ手を惑わせる罠を仕掛けていた。


塔の入り口に辿り着くと、赤い光を放つ強力な結界が張られているのが見えた。まるで生きた血管のように脈動する魔法の壁。


「これは…」アイリスは思わず足を止めた。


「『血の封印』だ」エリオットが言った。息を切らし、疲労が顔に現れている。「強力な禁忌魔法。人の生命力で動く結界だ」


「どうやって突破する?」アイリスは焦りを隠せなかった。セレスティアの気配がすぐそばに感じられるのに。


「力ずくだ」レヴィンが剣を構えた。「三人の魔法を一点に集中させる。他に方法はない」


三人が魔法を準備する。レヴィンは風の剣を高く掲げ、エリオットは闇の力を集中させ、アイリスはペンダントから氷の魔力を解き放つ。


「一、二、三!」レヴィンの号令と共に、三人は一斉に詠唱した。


「Ventus Gladio!」(風の剣)

「Umbra Fractum!」(砕かれた闇)

「Glacialis Lanceam!」(氷の槍)


三つの魔法が一点に集中し、渦巻く竜巻のような力となって結界に激突する。まばゆい光と轟音と共に結界が砕け散り、扉が弾け飛んだ。


「セレスティア!」アイリスは叫びながら先頭に立って駆け込んだ。


螺旋階段を駆け上がり、塔の最上階へ。足音が石段に響き、息は乱れるが、彼女の心には決意しかなかった。友を見捨てない。二度と同じ過ちは繰り返さない。


最上階に到着すると、そこには小さな円形の部屋があった。中央には赤い魔法陣が床に描かれ、その上にセレスティアが横たわっていた。彼女の金色の髪は乱れ、顔は青白い。


「セレスティア!」アイリスは彼女に駆け寄った。


近づいてみると、セレスティアの体は冷たく、青白い。しかし、胸がかすかに上下しているのが見える。生きている。安堵の涙が込み上げてくる。


「彼女の胸元…」レヴィンが指摘した。


黒い結晶—「血の封印」が彼女の胸に埋め込まれていた。そこから赤い糸のような魔力が無数に伸び、魔法陣と繋がっている。まるで蜘蛛の巣のように彼女を包み込み、生命力を吸い取っているようだった。


「彼女の生命力を吸い取っている」エリオットが説明した。「大儀式の準備だ。血の封印が彼女の光の魔力を抽出し、保存している」


「どうすれば?」アイリスは震える手でセレスティアの頬に触れた。冷たい。


「結晶を取り除かなければ」エリオットは慎重に魔法陣を観察する。「だが危険だ。間違えれば彼女の命も危うい。結晶と魔力が完全に一体化している」


決断の時。アイリスは深く息を吸い、「やってみる」と決意を固めた。


彼女はペンダントを握りしめ、「氷の記憶」の力を結晶に向ける。「Memoria Glacialis」(氷の記憶)


青い光がペンダントから放たれ、結晶に触れる。その瞬間、結晶の内部が透明になり、複雑な魔力の流れが見える。赤い糸が絡み合い、セレスティアの命と繋がっている。


「これは…解除できる」アイリスは集中して言った。「『血の封印』は時の流れを止めている。私の力で流れを戻せる」


「慎重に」エリオットが警告する。「一度に全てを解除すると、反動で彼女が傷つく。少しずつ、時の流れを元に戻すんだ」


アイリスは目を閉じ、全神経を集中させた。ゆっくりと、少しずつ魔力を流し込む。結晶の赤い光が徐々に薄れていき、魔法陣との繋がりが一本一本弱まっていく。


「うまくいっている」レヴィンが励ます。


最後の繋がりが切れた瞬間、結晶が砕け散り、紅い粉となって消えた。セレスティアの胸から黒い煙が立ち上り、それと同時に彼女がゆっくりと目を開いた。


「アイリス…様?」その声は弱々しく、かすれていた。


セレスティアの翡翠色の瞳にアイリスの姿が映る。彼女の声に安堵の涙があふれる。「セレスティア!よかった…本当によかった」


アイリスは思わず彼女を抱きしめると、セレスティアも弱々しく腕を回した。「来てくれたんですね…わたしのために」


「当然よ」アイリスは涙ながらに答える。「私たちは友達でしょう?約束したもの」


二人の触れ合いから、かすかな光と氷の共鳴が生まれ、周囲に小さな光の粒子が舞い始めた。感動的な再会も束の間、階段から足音と怒号が聞こえてきた。


「急ごう」レヴィンが二人の元に来た。「彼らが来る。エリオットはできるだけ時間を稼いでくれるが、長くは持たない」


セレスティアを抱き起こし、レヴィンが彼女を背負った。彼女はまだ弱く、自力で歩くことはできないようだった。


「学院へ戻れる?」アイリスは心配そうに尋ねた。


「私は大丈夫です」セレスティアは弱いながらも微笑んだ。「皆さんと一緒なら…」


急いで階段を降りる。しかし、入り口には既に黒いローブの集団が待ち構えていた。マーカス教授が先頭に立ち、冷たい笑みを浮かべている。


「行き場はないぞ」彼の声が廊下に響く。「大人しく降参しろ。お前たちの運命は既に決まっている」


絶体絶命の窮地。アイリスは周囲を見回し、逃げ道を探したが、出口は完全に塞がれていた。レヴィンはセレスティアを背負ったまま剣を構え、最後の抵抗を試みようとしている。


そのとき、予期せぬ助けが現れた。廊下の壁が突然動き、隠し通路が開いた。


「こちらよ!」


通路の奥からミランダが現れた。彼女の赤い髪が松明の光に照らされて燃えるように見える。彼女は隠し通路の扉を大きく開け、急かすように手招きしていた。


「信じられる?」レヴィンがアイリスに確認する。彼の目に疑念が浮かぶ。


「他に選択肢はない」アイリスは決断した。「行きましょう」


彼らはミランダの指示に従い、隠し通路へと飛び込んだ。彼女も続いて入り、重い石の扉を閉める。それと同時に、外側から激しい衝撃音と怒声が聞こえた。


「なぜ助けてくれるの?」アイリスは息を切らせながら尋ねた。


「罪滅ぼし」ミランダは簡潔に答えた。彼女の目に決意の色が見える。「家族は解放された。もう彼らの言いなりにはならない」


「エリオットは?」レヴィンが心配そうに振り返る。


「彼なら大丈夫よ」ミランダは小さく笑った。「千年生きてきた魔法使いよ。簡単には捕まらないわ」


「この通路を進めば森に出られる」彼女は先を指さした。「急いで。『断罪の儀』はもうすぐよ」


「ありがとう」アイリスは真摯に感謝した。


「気にしないで」ミランダは小さく微笑んだ。その笑顔には、初めて見る本物の優しさがあった。「行きなさい。アイリス、あなたの本当の力を世界に示す時よ」


細い通路を抜け、彼らは森へと出た。朝の光が森を黄金色に染め、新しい一日の始まりを告げていた。レヴィンがセレスティアを背負い、一行は全速力で学院へと向かった。


時間との戦い。「断罪の儀」まであと僅か。彼らは森の中を走り抜け、時折立ち止まってはセレスティアの状態を確認する。彼女は徐々に力を取り戻しつつあるようだが、まだ完全ではなかった。


走りながら、アイリスは心の中で誓った。今日こそ真実を明らかにし、「永劫の檻」の計画を阻止する第一歩を踏み出す。そして何より、母の名誉を回復し、父を救出する。


空を見上げると、雲間から太陽が顔を出していた。陽光が彼らの姿を照らし、長い影を地面に落とす。「断罪の儀」の時間が近づいている。運命の日が始まろうとしていた。


「準備はいい?」レヴィンがアイリスに問いかけた。


「ええ」彼女は強く頷いた。「真実を示す時よ」


そのとき、セレスティアが弱いながらも声を上げた。「アイリス様…私も力になります。光の守護者として…」


三人の決意と絆が固く結ばれた瞬間だった。真実の鏡と二人の魔法で、世界を変える時が来たのだ。


(第8章 おわり)

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