第4章「危険な接近」
貴族専用サロンに漂うバラの香りが強すぎて、むせるような感覚だった。濃厚な甘さが喉に絡みつき、空気そのものが重く感じる。
「こちらのお菓子はいかがですか、アイリス様?」
ミランダ・クリムゾンの甘い声が、部屋の優雅な静けさを破った。華やかなブロンドヘアを指で巻きながら、彼女は上品に紅茶を注いでいる。カップに注がれる琥珀色の液体が、午後の日差しを受けて輝いていた。周囲には数人の令嬢たちが取り巻き、私を囲む花のような陣形。しかし、その笑顔の下には明らかな敵意が潜んでいる。まるで猟犬が獲物を取り囲むような警戒感。
「ありがとう」
簡潔に返し、差し出されたケーキに手を伸ばす。指先が微かに震えているのを隠すように、慎重な動きを心がけた。最近、ミランダが突然懐柔してきた理由が気になっていた。彼女の眼差しには、何かを知っているという自信が浮かんでいる。
「それにしても、あの平民の子と親しげなのは意外でしたわ」
思った通りの話題。ミランダの唇が意地悪く歪み、周囲の令嬢たちが息を潜める。彼女たちの間に流れる緊張感が、サロンの空気をさらに重くする。
「親しいわけではないわ」
フォークでケーキを小さく切りながら、冷静に答えた。心臓の鼓動が早まるのを感じる。
他の令嬢たちの目が光った。「でも実技で組んだり、時々話しているのを見かけますけど?」
「彼女の魔法を研究しているだけよ。光属性はめずらしいから」
冷淡に答えつつ、警戒心を高める。ここ二週間、セレスティアへの秘密の指導を続けていた。魔法理論室の裏庭での特訓、図書館での密談。誰かに見られていたのだろうか。背中に冷たい汗が伝う。
「あら、それだけ?」ミランダが小さく笑う。その笑みは表面上は愛らしいが、目は笑っていない。「噂では、彼女をかばったともいわれてますけど」
「噂を信じるのは馬鹿のすることよ」
会話は表面上は穏やかだが、水面下では剣が交わされているようだった。一言一言が相手の弱点を探る試金石。サロンに流れる静寂の中で、紅茶を啜る音だけが響く。
「そうですわね」ミランダは優雅に頷いた。彼女の薔薇色のドレスが、動くたびに光を反射して輝いている。「でも面白いのは、レヴィン王子様が彼女に特別な関心を持たれていることですわ。婚約者として、気にならないんですか?」
心臓が跳ねる。喉が急に乾く。王子とセレスティアの特別レッスンは週二回になり、噂によれば和やかな雰囲気だという。彼らが学院の中庭を歩く姿を、遠くから見たこともある。王子の笑顔は、私と一緒の時よりも自然に見えた。
「政略結婚に感情を持ち込むつもりはないわ」
そう答えながらも、胸の奥が痛んだ。指先に力が入り、ケーキフォークが皿に触れて小さな音を立てる。実はここ一週間、レヴィンとは文通を続けていた。魔法理論について議論する、知的な内容の手紙だ。でも彼が心を開いているようには思えない。返事は丁寧だが、どこか距離を感じる。
「それで結構ですわ」ミランダが微笑む。「それに、転校生のエリオット・シャドウメアとも仲良くしていらっしゃるようで」
その名前に、思わず指が震えた。カップを持つ手が止まる。彼とも秘密裏に会話を続けていた。「闇の結社」についての情報を得るために。夜の図書館、朝早い「星の間」、誰もいない屋上。会う場所を変えながら、少しずつ情報を集めていた。
「彼もただの研究仲間よ」
「まぁ、アイリス様は研究熱心ですこと」ミランダの言葉には、見透かされているような皮肉が含まれていた。
サロンを後にする頃には、皮肉めいた視線が背中を刺すのを感じた。壁に掛けられた肖像画の目さえも、私を追いかけているような錯覚に陥る。
———
「お嬢様、これは…」
リディアが震える手で手紙を差し出す。「ご実家からです」
夕暮れの自室。窓から差し込む赤い陽光が、リディアの不安な表情を照らしている。重々しい黒い封蝋が押された書状。フロストヘイヴン大公家の紋章が浮き彫りにされている。父からの手紙だ。
指先がわずかに震える中、封を破り、丁寧に書かれた文字を読み進める。眉が徐々に寄っていく。父特有の硬質な筆致と、厳しい言葉の数々。
「なんですって…」
リディアが心配そうに尋ねる。「何かございましたか?」彼女の声には、すでに何かを察している色がある。
「父が心配しているわ。『アイリスの態度に変化があると聞いた。フロストヘイヴン家の名に恥じぬ振る舞いを期待する』だって」
手紙には他にも「軽率な交友関係は避けるように」「身分不相応な者との接触は控えるように」といった警告が並んでいた。父の怒りが文面から滲み出ている。
「誰かが報告したのね」
手紙を握りしめる手に力が入る。ミランダの仕業だろうか。いや、彼女だけでは父に直接報告できない。もっと大きな力の働きを感じる。
「継母、ドロシアの差し金かもしれません」
リディアの言葉に頷く。継母ドロシア・フロストヘイヴンは政治的野心家で、私を常に監視しているという噂だ。黒く冷たい瞳と、薄い唇の微笑み。子供の頃から感じていた彼女の視線の重みが、今も背中に感じられるようだ。
「彼女は何を狙っているのかしら」
窓を開け、夜の空気を吸い込む。風が部屋に入り込み、カーテンを揺らす。事態は複雑化していた。表の顔と裏の顔を使い分けながら情報を集め、闇の結社について調査し、セレスティアを密かに助け、王子との関係を修復し…全てを同時に進めるのは難しい。頭が痛くなるほどの緊張感。
「お嬢様」リディアが真剣な面持ちで言った。静かな声だが、強い決意が感じられる。「今夜、お母様の書庫から新たな資料を見つけました」
「どんな?」
「『永劫の檻』についての記述です。特に創設者について…」
彼女が取り出したのは、古い羊皮紙に書かれた記録。ところどころ焦げた跡があり、何かの火災から救出されたものか、あるいは意図的に焼却されかけたものなのか。
その夜、私はまた一つ真実に近づいた。母の残した記録によれば、闇の結社「永劫の檻」は500年前に設立された組織で、失われた原初魔法の復活を目指している。そして創設者の名前は「オブシディアン」。現在も生きているという噂があるという。
「不老不死?そんなことあり得るの?」
ろうそくの灯りが揺れる中、私の影が壁に大きく映る。
「原初魔法の力があれば…不可能ではないかもしれません」
リディアの言葉に、背筋が冷たくなった。おとぎ話のような神秘的な力が、現実に存在する可能性。そしてそれを求める秘密結社。すべてが現実離れしているようでいて、なぜか心のどこかで納得してしまう。
———
翌日、図書館の奥まった書架の間で、エリオットと待ち合わせていた。古書の埃と革の匂いが鼻をくすぐる静かな空間。日差しは高い窓から斜めに差し込み、埃の粒子が舞う光の筋を作っている。
「来たね、アイリス」
彼は相変わらずの砕けた物言いで、まるでこの世界の貴族社会のルールなど知らないかのようだ。銀髪が光に照らされて輝き、赤い瞳が神秘的な色を放っている。常に周囲とは違う空気を纏う不思議な存在。
「あなたに聞きたいことがあるの。『永劫の檻』と『オブシディアン』について」
エリオットの赤い瞳が一瞬だけ驚きの色を見せた。その表情の変化を見逃さなかった。「調査が進んでいるんだね」
「母の遺した資料から。彼は本当に500年生きているの?」
彼は周囲を警戒するように見回し、声を落とした。書架の影で、二人だけの秘密の会話。
「オブシディアンは確かに生きている。彼の目的は『世界のリセット』だ」
「リセット?」思わず声が上ずる。図書館の静寂がその言葉を増幅させたようだ。
「原初魔法には『時間』と『空間』を操る力がある。彼はある時点まで世界を巻き戻し、歴史そのものを書き換えようとしている」
信じがたい話だった。まるで子供のおとぎ話か、荒唐無稽な冒険譚のよう。それなのに、エリオットの表情には真剣さがあり、その言葉に嘘はないと感じる。
「なぜ?」
「それを知るには、君たちの役割を理解する必要がある」
エリオットは静かに言葉を紡いだ。「アイリス、君は『氷翡翠の巫女』。セレスティアは『光の守護者』。二人で『運命の鍵』を構成している」
「運命の鍵?」その言葉を口にした瞬間、首に下げた氷翡翠のペンダントが僅かに脈動するのを感じた。幻覚だろうか?
「世界の均衡を保つための存在だよ。光と闇、時間と空間…それらの調和を守る力を持っている」
まるでファンタジー物語のような話に、半信半疑ながらも、どこか真実を感じた。まるで記憶の奥底から湧き上がるような、既視感。
「でも私たちが何をすべきなのか、具体的には?」
「まだその時ではない。だが忠告しておく。近々、君の魔力に変化が起きる。驚くかもしれないが、恐れないで」
「変化?」
彼は答えず、不意に身を乗り出してきた。その動きに驚き、思わず後ずさる。彼の呼吸が頬に触れるほど近く、心臓がどきりと跳ねる。
「誰かが君を見張っている。今日はここまでだ」
その言葉を私の耳元で囁くと、彼は素早く身を翻した。銀髪が光を反射して一瞬まばゆく光る。
彼が立ち去った後、書架の陰から視線を感じた。振り向くと、学院の制服を着た人影が一瞬だけ見えた気がした。足音さえ聞こえない静かな気配。誰だろう?マーカス教授?それとも…
———
「集中して、セレスティア。光を一点に集める練習よ」
人気のない裏庭で、また特訓を続けていた。日が傾き始め、木々の影が長く伸びている。誰にも見られない安全な時間帯。彼女の上達は早く、光の魔法をより安定して扱えるようになっていた。
セレスティアの掌から放たれる光は、最初の頃と比べて安定し、より美しい輝きを放っている。彼女の成長に、密かな誇らしさを感じる。
「フロストヘイヴン様、質問があります」
彼女の真剣な眼差しに、少し緊張する。翡翠色の瞳に映る夕陽の光が、彼女の決意を表しているようだ。「何?」
「王子様が…あなたのことを質問されるんです」
心臓が跳ねる。耳の奥でドラムのような鼓動が鳴り響く。「レヴィン王子が?」
「はい。特訓の時に、時々『フロストヘイヴン令嬢と何を話すか』とか『彼女はどんな人か』とか…」
嬉しさと驚きが入り混じる感情が胸を満たす。頬が熱くなるのを感じる。「何て答えてるの?」
「真実を」セレスティアは微笑んだ。その笑顔には偽りがない。「優しくて、賢くて、でも何か秘密を抱えた人だって」
その言葉に胸が熱くなる。彼女の素直さに心が震える。「そんなことないわ」
「でも本当です。あなたが私を助けてくれなかったら、私はとっくに学院を辞めていたかも」
彼女の素直な感謝の言葉に、罪悪感を覚えた。前世では彼女はゲームの主人者で、私はその障害としての悪役令嬢だった。なのに今は…運命は皮肉なものだ。
「王子とあなたは…」尋ねるべきか迷ったが、言葉が漏れた。心の奥に溜まっていた疑問が、自然と口をついて出る。「仲良くなってる?」
セレスティアは少し頬を赤らめた。白い肌に浮かぶ淡い紅色が、夕日に照らされてさらに美しく見える。「王子様はとても優しいです。でも…」
彼女は迷うように瞳を泳がせた。何かを言うべきか悩んでいる様子。「王子様の心は別の人にあると思います」
「別の人?」心臓が早鐘を打つ。
「はい。いつも研究の話になると目が輝くんです。特にあなたとの文通の内容については…」
それ以上の言葉は交わさなかったが、胸の中に小さな希望が灯った。まるで冬の朝、窓辺に差し込む最初の日差しのような、温かく、まだ弱々しいけれど確かな光。
———
決闘大会前の最後の練習日。全校生徒が参加する大会で、私とセレスティアはペアを組む予定だった。
実技場で準備していると、突然、私の契約精霊フリーズが現れた。青い光がかすかに周囲の空気を震わせる。
「アイリス、危険が近づいている」
その声には普段の軽さはなく、真剣な色が混じっている。「どういう意味?」
「君の魔力に変化が…」
彼の言葉が終わる前に、私の体に異変が起きた。手のひらから青い光が漏れ始め、氷の結晶が勝手に生成される。指先から広がる冷気、そして皮膚の下で脈打つような魔力の波動。
「これは…」
制御しようとするが、魔力が暴走し始めた。意思とは関係なく、力が溢れ出す感覚。周囲の温度が急激に下がり、床に霜が広がる。呼吸が白い霧となって目の前に浮かぶ。恐怖と共に、奇妙な高揚感も感じる。
「フロストヘイヴン様!」
セレスティアが駆け寄るが、私は手で制止した。彼女の姿が霜の向こうで揺れて見える。「近づかないで!危険よ!」
制御不能の氷の魔法が渦巻き、私の周囲にクリスタルの壁が形成されていく。氷の結晶が光を屈折させ、虹色の模様を壁に映し出す。痛みはないが、恐怖で体が震える。まるで真冬の湖に落ちたような凍えるような感覚なのに、内側からは熱い何かが押し寄せてくる矛盾した感覚。
「フリーズ、これは何?」震える声で尋ねる。
「君の本当の力が目覚め始めている」精霊は落ち着いた声で言った。青い光が優しく脈動している。「抵抗せず、受け入れてみて」
その言葉に従い、深く呼吸して魔力の流れに身を任せた。体の中心から指先へと流れる氷の魔力の道筋が、明確に感じられるようになる。すると不思議なことに、氷の結晶が形を変え始め、美しい幾何学模様を描き出した。床から天井へと伸びる氷の柱、壁に広がる六角形の結晶、そして空中に浮かぶ透明な氷のレンズ。
そして驚くべきことに、レンズの中に小さな景色が見えた。学院の廊下、レヴィン王子の姿、そして見知らぬ部屋での会話…断片的だが、明らかに現在ではない光景。
「これは…未来?」
息を呑む驚きと共に、不思議な確信が心の中に生まれる。
「時を映す氷翡翠の力だ」フリーズが静かに言った。「一部が目覚め始めた」
魔力の波が収まり、氷の結晶は徐々に消えていった。残されたのは床の薄い霜と、空気中に漂う微かな光の粒子だけ。肩で息をしながら、その体験の意味を理解しようとする。体から力が抜け、膝がかくんと折れそうになる。
「大丈夫ですか?」
セレスティアが心配そうに近づいてきた。彼女の眉間に寄るしわに、本当の心配が見てとれる。彼女の手が私の肩に触れた瞬間、不思議な共鳴が起きた。彼女の光の魔力と私の氷の魔力が一瞬繋がり、小さな虹色の輝きが生まれた。温かさと冷たさが混ざり合う感覚。
「これは…」
彼女も驚いた表情で手を見つめている。その指先から広がる光の筋が、私の氷の魔力と絡み合っている。
「二人の魔力の共鳴ね」
振り返ると、マーカス教授が立っていた。いつからそこにいたのだろう。彼の鋭い目は、まるで私たちの魂を見透かすようだ。
「フロストヘイヴン嬢、素晴らしい魔力ですが、少し不安定なようですね。決闘大会前に調整しておきましょう」
教授は何も言わなかったが、その目には「見た」という色があった。魔力暴走の真の性質を。彼の微かな笑みに、何か不吉なものを感じる。
「はい、ありがとうございます」
教授が去った後、セレスティアが小声で尋ねた。誰かに聞かれることを恐れるような、慎重な声音。「あれは何だったんですか?」
言うべきか迷ったが、彼女を信頼することに決めた。これまでの二重生活に疲れていたのかもしれない。「『氷翡翠の力』…私の本当の魔法かもしれない」
セレスティアの眼が輝いた。「素晴らしいです!私も…最近、光の魔法で不思議な感覚があるんです。まるで過去の記憶が見えるような…」
彼女の言葉に、エリオットの言った「運命の鍵」という言葉が思い起こされる。二人の力が連動している可能性。それがこの世界の何かを変える鍵になるという予感。
———
その夜、部屋に戻ると、実家からの使者が待っていた。フロストヘイヴン家の制服を着た男性は、背筋を伸ばして立っていた。
「お嬢様、大公様から緊急のお呼び出しです。明日、御館へご帰還いただきたいとのこと」
その言葉に、胸が締め付けられる感覚。「明日?でも決闘大会が…」
決闘大会はセレスティアとの共同作業の集大成。二人で準備を重ね、魔法の連携を完璧にしてきた。それを放棄するなんて…
「大変申し訳ありませんが、延期できないとのことです」
使者の表情は固く、議論の余地はないようだ。彼の手にする手紙には、父の公印が押されている。
使者が去った後、リディアが不安そうに言った。「お嬢様、これは継母様の策略かもしれません」
「わかってる」
窓辺に立ち、夜空を見上げる。星々が冷たく瞬いている。今日の魔力暴走のことが父に報告されたのかもしれない。または、セレスティアとの親交、エリオットとの秘密会談…全てが筒抜けになっている可能性がある。胸に広がる不安と焦燥感に、息が詰まりそうになる。
「行くしかないわ」
決闘大会を欠場すれば、セレスティアは一人で戦うことになる。彼女を守れなくなるだけでなく、二人の間に築いてきた信頼関係にも影響するだろう。それでも父の命令は絶対だ。冷たい現実が、胸に重くのしかかる。
「でも、私には選択肢がない」
窓の縁を握る手に力が入り、指先が白くなる。心の中では反抗したい気持ちと、父への恐れ、そして何より継母の策略への怒りが渦巻いていた。
就寝前、氷翡翠のペンダントを手に取ると、中の結晶が淡く光った。これまでにない青い輝き。魔力暴走の際に見た未来の断片が思い出される。
レヴィン王子が廊下で何かを話していた光景。彼の表情は真剣で、何か重大な決断をしたようだった。そして誰かと会話する見知らぬ部屋。暖炉の火が揺れる中、秘密の話し合いが行われているような雰囲気。それらは何を意味するのか?
「お母さま…私はどうすれば」
そっと呟いた時、窓の外で何かが動いた気がした。カーテンを引くと、月明かりの中、学院の塔の上に人影が見えた。シルエットだけだが、誰かが立っている。
そして一瞬、その人物が私の方を見て、手を挙げたような気がした。風が吹き、その人影は月の光に溶けるように消えた。
エリオットだろうか?それとも他の誰か…?何かを伝えようとしていたのだろうか、それとも警告?
部屋を暗くし、ベッドに横たわりながら、明日の帰宅で待ち受ける事態に思いを巡らせた。父と継母の真意、そして闇の結社の動き。氷翡翠の力の目覚め。全てが交錯し、未知の方向へと私を導いている。
眠りに落ちる直前、ペンダントが再び淡く光った気がした。そして母の声が聞こえたような…錯覚だろうか?「氷翡翠の巫女よ、目覚めよ」
明日、何が起きるのだろう。そして私は運命に立ち向かう準備ができているのだろうか。閉じた瞼の裏に、氷の結晶と光の渦が交錯する光景が浮かぶ。
(第4章 おわり)