第九章 最終兵器の覚醒
今回の話は遺跡の最深部から発見された兵器が最終兵器として、決戦で使用される話です。
遺跡の最深部に到達したのは、エルファリア防衛戦が終わった直後だった。
地球側連合の科学者と技術者たちは、連合軍が占拠を阻止したこの施設を徹底的に調査していた。
そして、ついに発見されたのが「アーク=ゼニス砲」と呼ばれる最終兵器だった。
その構造は、地球の科学技術でも解明できない部分が多かったが、兵器としての能力は一目瞭然だった。
膨大なエネルギーを一点に収束し、敵陣を丸ごと消し去るほどの破壊力を持つ光学兵器――それは、地球のどの兵器よりも強力で、かつ危険だった。
「これは……文明をも滅ぼしかねない力だ」
日本の科学顧問である片山博士は、青ざめた表情でそう呟いた。
各国の指導者たちは、この兵器を使用することの是非について激論を交わしていた。
「こんな兵器を使用すれば、我々が異世界の脅威と同じになるのではないか?」
韓国の代表はそう主張した。
「だが、この力を使わなければ、次の侵略に耐えられないのも事実だ。我々は自衛のためにこの兵器を使用すべきだ」
アメリカの国防長官が反論する。
議論は紛糾したが、最終的には「アーク=ゼニス砲」を切り札として使用することで全会一致となった。
ただし、それはあくまで最後の手段として使うという条件付きだった。
「目標は敵の中枢――敵連合軍の本拠地だ。これを無力化できれば、異世界の勢力均衡を崩すことができる」
兵器を起動するための準備は膨大な時間を要した。
アーク=ゼニス砲は、膨大なエネルギーを蓄えるためにマナエネルギーを大量に必要とし、その供給のために日本、アメリカ、韓国が共同で特別な発電施設を建設した。
同時に、この兵器を運用するための地球側の部隊が結成された。
その中核を担うのは日本の自衛隊である。
そしてかく言う異世界連合軍も、その動きに感づき始めていた。
一方、異世界連合軍の中でも、この巨大な砲が開発されつつあるという情報が伝わっていた。
「奴らが作り上げているのは、一体何なのだ?」
ドランザ帝国の皇帝は、苛立たしげに報告書を叩きつけた。
その内容は断片的だったが、地球側が何らかの強力な兵器を手にしつつあるという事実を示唆していた。
「これ以上の情報を集められなかったのか!?」
「申し訳ありません。彼らはこの『兵器』に関する情報を極めて厳重に管理しています。全貌を掴むには……相当な時間が必要です」
皇帝は不機嫌そうに唸りながらも、すぐに新たな指令を下した。
「くっ…ならば、完成する前に叩く。全兵力を投入し、奴らを殲滅するのだ!」
こうして、ドランザ帝国を中心とする異世界連合軍は全兵力を動員し、地球側の拠点への総攻撃を開始した。
決戦の地となったのは、エルファリア王国北方の「ネヴァル高原」。ここは広大な平原地帯で、アーク=ゼニス砲を安全に運用できる地形だった。地球側連合軍は、この地点を最終防衛ラインとし、兵力を総動員して敵軍を迎え撃つ計画を立てた。
「ゼニス砲の充填には最低でも3時間が必要だ。それまでに防衛ラインを維持しなければならない」
日本の防衛大臣は全軍に指示を出し、作戦を開始した。
異世界連合軍は、地球側防衛ラインに対して一斉に攻撃を開始した。
異世界連合軍の攻撃は凄まじかった。
魔法師団が天空を焼き尽くす火球を放ち、ゴーレム部隊が地響きを立てながら前進する。
その背後では、巨大な飛行生物兵器――「スカイドラゴン」部隊が上空から爆撃のような火炎攻撃を仕掛けていた。
「敵の火力が凄まじい!第一防衛ラインが突破されそうです!」
地球側は新型のマナエネルギー兵器を駆使して反撃を開始した。
戦車部隊がゴーレムを狙撃し、ステルス戦闘機がスカイドラゴンを次々と撃ち落とす。
しかし、敵軍の数は圧倒的で、第二防衛ラインも危険な状態に追い込まれた。
戦況が最悪の状態に追い込まれる中、地球側は持ちこたえた。
そして遂に――。
「アーク=ゼニス砲、エネルギー充填率80%!」
防衛ラインの背後に設置された巨大な砲台が、徐々にその威容を現していく。
全長150メートルを超えるその砲身は、天空に向けて鋭く突き出され、周囲には強力なマナエネルギーの閃光が満ちていた。
「残り15分で発射可能だ。それまで耐えろ!」
各国の部隊は、最後の力を振り絞り、敵軍の猛攻に耐え続けた。
「充填完了!アーク=ゼニス砲、発射準備完了!」
全軍に退避命令が下されると同時に、ゼニス砲の照準が敵軍の本隊にロックオンされた。
「撃て!」
天空を引き裂くような光が砲口から放たれた。
そして光は、地面を焼き尽くしながら一直線に敵軍の中枢に向かっていく。
その光景は、戦場にいる者たちに「神の裁き」とも言える畏怖を抱かせた。
「……なんだ、あの光は?」
ドランザ帝国の前線指揮官がそう呟いた直後、光の奔流が彼の視界を埋め尽くした。
そして、それが最後の光景となった。
光の直撃を受けた異世界連合軍は壊滅的な被害を受け、異世界連合軍の司令部を含む広範囲が一瞬にして焼き払われた。
その衝撃は戦場全体に波及し、地球側の兵士たちだけでなく、敵連合軍の残存兵もその威力に戦慄していた。
ゼニス砲が放たれた後の戦場は、恐怖と混乱に包まれていた。
「これが……地球側の力なのか」
生き延びた帝国軍の兵士がそう呟き、その威力に震え、武器を投げ捨てて逃げ去っていった。
ドランザ帝国を中心とする連合軍は辛うじて全滅を免れたものの、士気は完全に崩壊していた。
生き残った将軍は、震える声でこう呟いた。
「もはや地球側に逆らうことは不可能だ……だが、これを許せば、この世界の未来はどうなる……」
戦闘終了後――。
戦場に静寂が訪れる中、地球側連合軍はついに勝利を収めた。
この勝利は、地球側が異世界における軍事的優位を確立する大きな一歩となった。
しかし、その勝利は重い代償を伴った。
だが同時に、アーク=ゼニス砲の破壊力は「地球側もまた脅威になりうる」という恐怖を異世界に植え付ける結果ともなった。
「この兵器は、圧倒的な力を持つ兵器だ。しかし、その力が異世界に与えた恐怖と混乱もまた計り知れない」
日本の総理大臣は、そう語りながら深い決意を胸に秘めた。
「この力を誤って使えば、我々もまた侵略者となる。これからは、地球側の理念をどう伝え、平和を築くかが問われるだろう」
総理大臣のその言葉は、地球側全体の心に深く刻まれた。
そしてアーク=ゼニス砲の発射がもたらした影響は、戦場だけにとどまらなかった。
ドランザ帝国の皇帝がその報告を受けたとき、その表情は驚愕で満ちていた。
「我々が築き上げてきた軍勢が……壊滅だと?」
彼は震える声で言葉を続けた。
「これが……奴らの持つ力なのか……!」
その場に集まっていた軍部の将軍や大臣たちも、誰一人として声を上げることができなかった。
一方、アークザル王国やガラン神聖連邦では、さらに大きな動揺が広がり様々な憶測が飛び交っていた。
「異界からきた奴らは、神をも超える強大な力を手にしているのではないか?」
「もし、奴らが我々に牙を剥けば、我々には成す術がない……」
そして異世界の諸国家は、地球側を「制御不能な脅威」と見なすようになり始めた。
こうしてアーク=ゼニス砲の使用によって、地球側は異世界での立場を確固たる物にした。
しかし、その威力がもたらしたものは、勝利だけではなく、未知なる未来への大きな不安でもあった。
はい、どうでしたでしょうか。ちょっと個人的にはあまり上手くできてないって思いますがお許しください
それではまた次回会いましょう。
Good bye.