第七章 地球側の反撃
異世界国家の連合軍と地球側国家の連合軍が衝突する話です。
「奴らが動き出した。次は大規模な侵攻になるだろう」
自衛隊本部に集まった幹部たちは、次々と送られてくる報告書に目を通しながら、事態の深刻さを実感していた。ドランザ帝国はアークザル王国、そしてガラン神聖連邦と手を結び、連合軍を結成したのだ。その総兵力は推定で50万。地球側連合に対し、明らかに圧倒的な数で攻勢を仕掛けてこようとしていた。
「これが、彼らからの最後通牒です」
防衛大臣の手元に届けられた文書にはこう書かれていた。
「異界の地から来た侵略者よ。速やかにこの地を去れ。さもなくば、滅亡が待っている」
これに対し、日本政府をはじめとする地球側連合の結論は明確だった。
「我々はここで生きる道を選んだ。そのために戦う」
侵攻開始の報告があったのは、太平洋上の南部に位置するエルファリア王国周辺だった。
ドランザ帝国を中心とする異世界連合軍が三方向から侵攻を開始し、その圧倒的な数と勢いでエルファリア王国を包囲しようとしていた。
日本はエルファリア防衛のために派遣されていた自衛隊部隊を中心に連合軍を組織し、即座に反撃の準備を整えた。
アメリカ軍はニミッツ級空母のジョージ・ワシントンを中心とした空母打撃群をエルファリア王国の近海に展開させ、制海権を確保。
韓国や台湾からは増援部隊が派遣され、地球側の連携は万全を期していた。
エルファリア平原――その広大な草原地帯が戦場となった。
まず、異世界連合軍は騎兵部隊を先陣として送り込み、地球側の陣地を突破しようと試みた。しかし、それを迎え撃ったのは、オリカルクム製の新型榴弾を装備した自衛隊の迫撃砲部隊だった。
「第1小隊、砲撃開始!」
指揮官の号令とともに放たれた榴弾は、異世界連合軍の騎兵部隊を次々と吹き飛ばし、戦場に土煙を巻き起こした。
「なんて威力だ……」
その光景を目の当たりにしたエルファリアの兵士たちは驚きを隠せなかった。
彼らにとっては「魔法」以上の「奇跡」に見えたのだ。
続いて、上空ではアメリカ軍のA-29攻撃機が、異世界連合軍の後方に爆撃を仕掛けた。
その飛行速度と精密な攻撃に、異世界軍の歩兵たちは混乱し、戦線を崩壊させていった。
だが、異世界連合軍も反撃に出た。
彼らの中核をなす「魔法師団」が、次々と強力な火球や雷撃を放ち、地球側の防御陣地を狙った。
「魔法弾、接近中!全車両、散開せよ!」
90式戦車や装甲車が次々と回避行動を取る中、新型装甲素材「オリカルクム」を採用した装甲車や戦車がその真価を発揮した。魔法弾の直撃を受けても致命的なダメージを負わず、反撃の砲撃を繰り返したのだ。
さらに、地球側は「マナエネルギー砲」と呼ばれる試作兵器を実戦で初めて投入した。この兵器は遺跡で得た技術を基に開発され、エネルギーを凝縮して一気に放出するものだった。
「マナ砲、照準セット。目標、魔法師団!」
放たれたエネルギー光線は、異世界軍の魔法師団を直撃し、一瞬で壊滅状態に追い込んだ。
戦場は徐々に地球側の優位に傾いていった。だが、ドランザ帝国の本隊はまだ動きを見せていなかった。
そして、それは彼らが最後の切り札を温存していることを示していた。
その切り札――「バハムート」と呼ばれる巨大な飛行型生物兵器――が姿を現したのは、地球側が勝利を確信し始めた頃だった。
「空中に巨大な影が……!」
バハムートは空を飛びながら高熱の火炎を吐き、地球側の防御陣地を次々と破壊していく。F-15戦闘機が迎撃に向かうも、バハムートの分厚い鱗には機関砲はおろか、ミサイルすら通じなかった。
「マナ砲を再度使用せよ!」
指揮官の叫び声が響く中、再びマナエネルギー砲が放たれた。しかし、バハムートはその直撃すら耐え抜き、猛攻を続けた。
「これでは持たない……」
地球側の陣営が絶望に沈む中、エルファリア王国の若き兵士が一つの提案をした。
「我々の『大地の女神』の力を使えば、あの怪物を封じることができるかもしれません!」
その提案により、エルファリアの神官たちが精霊の力を呼び起こし、バハムートを地面ごと封じ込める儀式が開始された。
神官たちが女神の力を呼び覚ます中、地球側は最後の時間を稼ぐべく全力でバハムートを引きつけた。
戦車、戦闘機、そして歩兵たちが犠牲を払いながらも攻撃を続け、ついに女神の力が完全に発動した。
「バハムートが……地面に飲み込まれていく!」
地球側とエルファリア王国の共同作戦は成功し、バハムートを封じることに成功した。
この勝利は、地球側連合にとって大きな転機となった。
異世界の連合軍を撃退し、地球側の技術と異世界の力が共存できる可能性を示したからだ。
一方で、ドランザ帝国や他の異世界勢力がさらなる強力な兵器や戦力を準備していることは明白だった。
「これで終わりではない。むしろ、これからが本当の戦いだ」
戦場を見渡しながら、指揮官は静かにそう呟いた。
寒い…