【辞書との差】言葉は「生き物」であり変化していく【衝撃の国語調査結果】
「国語に関する世論調査」の令和5年度の結果が9月17日に公開されました。
(標本数6000件)
今回はその中であった「慣用句」について見ていこうと思います。
早速ですが、次の5問を見て「辞書にのっている正しい表現」はAとBのどちらでしょうか?
※5問下に回答とどれぐらいの人がどちらを選んだか書いてあります
1 悲喜こもごも
A 悲しむ人と喜ぶ人が様々にいること
B 悲しみと喜びを次々に味わうこと
2 悪運が強い
A 悪い行いをしたのに、報いを受けずにいる様子
B 悪い状況になっても、うまく助かる様子
3 煮え湯を飲まされる
A 信頼していた者から裏切られる
B 敵からひどい目に遭わされる
4 うがった見方をする
A 物事の本質を捉えた見方をする
B 疑って掛かるような見方をする
5 失笑する
A こらえ切れず吹き出して笑う
B 笑いも出ないくらい呆れる
皆さんお答えになられましたか?
それでは答えを発表します。
1 悲喜こもごも
A 悲しむ人と喜ぶ人が様々にいること ×不正解 回答率49.7%
B 悲しみと喜びを次々に味わうこと 〇正解 回答率43.4%
2 悪運が強い
A 悪い行いをしたのに、報いを受けずにいる様子 〇正解 回答率24.3%
B 悪い状況になっても、うまく助かる様子 ×不正解 回答率67.2%
3 煮え湯を飲まされる
A 信頼していた者から裏切られる ×不正解 回答率68.5%
(H23年回答率64.3%)
B 敵からひどい目に遭わされる 〇正解 回答率24.4%
(H23年回答率23.9%)
4 穿った(うがった)見方をする
A 物事の本質を捉えた見方をする ×不正解 回答率60.7%
(H23年回答率48.2%)
B 疑って掛かるような見方をする 〇正解 回答率32.7%
(H23年回答率26.4%)
5 失笑する
A こらえ切れず吹き出して笑う 〇正解 回答率26.4%
(H23年回答率27.7%)
B 笑いも出ないくらい呆れる ×不正解 回答率67.0%
(H23年回答率60.4%)
いかがでしたでしょうか皆さん。驚きですよね?
(全部正解だった方は全く日本語的には問題ありません。おめでとうございます)
ドヤ顔でこの問題を出しておいて大変恐縮ですが、僕も4と5に関しては誤った用法を散々使ってきました……。(そもそも間違っていたという意識が無い)
◇言葉は「生き物」
ただ、間違いが多かったからと言って悲観する必要は無いと思います。
(誤答があったから言い訳がましいと思われるかもしれませんが)
なぜなら、語彙・語句は時代の中でも変化していくからです。
1960年に発行された「三省堂国語辞典」の初版で『女』ということばを引くと、『人のうちで、優しくて、子どもを産み、育てる人』と今では信じられないことが書いてあったほどです。
それが2022年の第8版では、『人間のうち、子を生むための器官を持って生まれた人(の性別)。 生まれたときの身体的特徴と関係なく、自分はこの性別だと感じている人もふくむ』
と時代に合わせてここまで一つの単語が変化しています。(意味の大きな変更を4回経ている)
『男』も同様に『人のうちで、力が強く、主として外で働く人。』から、
『人間のうち、子種を作るための器官を持って生まれた人(の性別)。男子。男性。〔生まれたときの身体的特徴と関係なく、自分はこの性別だと感じている人もふくむ。〕』
へと変化しています。
今現在6割や7割ぐらいの人が「誤答」している用語に関しては辞書に今掲載されていなくとも、「言葉に新しい意味を持った」と言っても過言ではないと僕は考えます。
(ひとつの単語で複数の意味を持つこともあるため)
実際のところ過去に出題された3問は全て「誤答率」が上昇していますからね。「周知」は進んでいるのでしょう。
一過性の「勝手に作られたイメージ」とは全く異なることを示していると思います。
もしかしたら、「辞書的に正しい意味」が「誤った使い方」と「誤字・脱字」などで指摘されてしまっているケースすらあるかもしれません。
どうしてこのようなことが起きてしまっているのかと言いますと、
言葉は生きている人間が扱い・活用されていくために「生き物」に近いのです。
ほとんど使われなくなった言葉は「死語」と呼ばれることもあるぐらいですからね。
2回目なのでかなり言い訳がましいかもしれませんが、辞書的な言葉を知らなくとも問題は無いと思います。
◇「辞書的な意味」について受験生は知っておく必要はある
ただし、学校の入学試験などで問われるのはやはり現在辞書に書いてあるような「本来の正しい言葉の意味」だと思います。
そのために、「言葉は生き物である」という感覚とは分けてしっかりと学習し、習得する必要があると思います。
もしかしたらその誤解や意味の違いの回答のせいで「合否の1問」に関わってくる可能性がありますからね。
また、正しい言葉の使い方をしなければ、話している相手方が年代が上の方ほど「こいつは無教養の奴だなぁ」と思われてしまうと言ったリスクもあると思います。
これについての判断は辞書などで引いた(検索した)うえで語学力を向上していく必要があると思うのですが、どんな言葉を検索すれば良いのか分からないと思います。
今回僕が参考にさせていただきました文化庁に掲載されている
「国語に関する世論調査」の過去の分を受験生の方は見ていくと、「本来の辞書の意味」を学ぶことが出来るかもしれません。
例えば、
「涼しい顔をする」
×大変な状況でも平気そうにする(回答61%)
〇関係があるのに知らんぷりする
「姑息」
〇一時しのぎ
×卑怯な(回答73%)
「敷居が高い」
〇相手に不義理などをしてしまい行きにくい
×高級過ぎたり,上品過ぎたりして,入りにくい(回答56%)
「憮然」
〇失望してぼんやりとしている様子
×腹を立てている様子(回答56%)
「檄を飛ばす」
〇自分の主張や考えを,広く人々に知らせて同意を求めること
×元気のない者に刺激を与えて活気付けること(67%)
恥を忍んで書きますが、これらには驚きましたね。
通念上は浸透していても、辞書的には間違っていた方を僕は勘違いして使っていましたからね。
皆さんも「驚いた辞書的な本来の意味」や「間違いやすい表現」などを教えていただければ幸いです。
「無教養だ」と陰で思われることほど屈辱的なことってありませんからね……。
今回は執筆に関して何かお役に立ちましたでしょうか?
今後も執筆側として表現方法に関するエッセイも書いていきますのでどうぞご覧ください。