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訂正があります。前話で。
流星の学年は、高2と言っていましたが、高3です。
ミーティングも終わり、帰ろうと思い、かばんをロッカーから取ろうと手を伸ばすと、誰かが私の腕を掴んだ。見てからして、男の人の手。この手…は…、
「…悠樹!?」
周りの女子たちが、こそこそと話し始める。私は、悠樹と一緒に廊下へ出た。
「どうしたの…?」
私は、顔を俯いたまま、喋った。なぜか、悠樹の顔が見れない。もしかすると、あのキスの事がバレているかも知れない、という不安が頭の中を埋め尽くす。
「…アホが…」
「え…?なんて?」
「アホつってんだよ!何知らない男にキス奪われてんだよ!!」
やっぱり知られていた。そりゃあそうだ。あんだけ、人が多い廊下で思いっきり公開キスやって、噂にならないはずがない。私は、下に俯いたまま、
「…ごめんなさい……」
沈黙が続く中、悠樹の力が段々と、強くなってくる。腕から、聞こえる、鼓動は、早かった。
「知ってるよ。アイツの事。俺と流星先輩は友達だ。」
「え…。嘘!そんな事知らなかった…」
「俺の中学んときの部活の先輩。結構仲良かった。」
悠樹とアイツが友達…。そういえば、中学校で見たことがあったかも…。
ずっと、下を俯いたまま、沈黙が続く。未だに、腕は掴まれたまま。痛いほど強い力を込められている。
「悠樹、痛いよ」
「あっ…ごめ…」
悠樹は、そっと手を離した。
でも、よく考えれば、悠樹とアイツが友達だとしても、私には関係なかった。でも、なぜか胸が締め付けられた。元々、なんで私は悠樹に、キスされた事知られて欲しくなかったの?こんなんじゃ、まるで、私が悠樹に恋してるみたい。双子なのに。私は、悠樹とくっついちゃいけない。
「悠樹には、関係ないでしょ…」
そっと悠樹に向けて呟く。私は、そう言い切った後、悠樹の顔をそっと見てみると、悠樹の顔はまるで、凍りついていた。悲しそうな目。なんでそんな顔をするの?
「そうだよな。俺には関係ない…。関係ないんだ…。」
そう言うと、悠樹は、自分の教室へ戻っていった。
私は、ペタンと、壁にもたれかかる。なぜだろう。悠樹の背中が、お兄ちゃんの背中じゃなくて、男の人の背中に見えてきたのだ。こんな感情を持っている自分が恐ろしく思える。
「辛いよ…」
そっと、呟いた。これはきっと、絶対持ってはいけない感情。
”双子の兄が好き”
私は、昇降口で、ボーッと立っていた。雨が降っている。傘忘れたし…。雨が止むまで待つ…って言っても夜になってしまう…。私は、仕方がなく、濡れる覚悟で足を踏み出す。すると、私の目の前に大きな影ができた。そして、私の頭は濡れなくなる。私は、即座に後ろを向くと、そこには、アイツがいた。
「傘忘れたんでしょ?相合傘して帰ろ♪」
「止めて下さい。先輩。濡れても結構ですから…。」
と走り出そうとすると、大きな手で私の腕を捕まえる。
「…っ離して!!」
「あのさ。もっと優しくしてよ。これでも君の事想ってるんだからさ。」
「私は、あなたに好かれても何の特にもならないんです。だから離して」
「ねえねえ。先輩とかあなたとか止めて流星って呼んでくれよ」
しつこい。すぐに話を変えようとする。
「じゃあ、流星先輩。離してください。」
流星先輩は笑顔で、
「い や だ♪」
あまりにもしつこいので、深雪はしょうがなく一緒に帰ることにした。
「あのですね。流星先輩。手を繋ごうとするの止めて下さい。カップルじゃあるまいし…」
さっきからずっと、私の手を触ってくる。私は、触ってくるごとに追っ払っている。
「じゃあさ、カップルになろ♪俺、深雪の事だーいすき♪」
「軽々しく、そんな事言わないで下さい。私は流星先輩の事好きじゃないです。」
「じゃあ、好きにさせる!付き合おうよ」
「しつこいですよ」
私は、呆れながらも、話している。さっきから、手を、繋ごうとしないので、手の事を意識しないでいると、バシッといきなり掴まれた。
「やった!捕まえたっ」
「や、やだっ!離してーーーー!」
私は、必死に手をバタバタと振らせる。すると、流星先輩はいきなり、力を入れて
「離さない…」
真剣な目で私を見つめてくる。家の前につき、早くその目から逃れようと、目をそらし、家の方へ走ろうとすると、腕をまた掴まれ、強引に引き寄せられ、口を合わせる。
「…っ!!んっっ」
そして、唇を離した。
「本当に、好きなんだ…。深雪のこと。」
そっと耳元で呟き、私の頭を体に引き寄せる。抱きつかれている。強い力で逃れられない。
そして、なぜか、流星先輩の気持ちが中途半端な気持ちでは無いと感じた。
「でも、今日会ったばっかりでしょ!!どうやって、本当に好きになるの?」
「今日、会ったばっかりじゃない。俺が中3で、深雪が中1の時…何回も廊下ですれ違った。いつも、可愛い子だと思ってた。深雪が友達と喋ってたときも、こっそり、声を聞いてた。それに、悠樹の妹だって知って、よく悠樹の家に上がらせてもらってた。玄関に飾ってる写真や、深雪が載ってる写真のアルバムを見るためだけに…。深雪とは、実際、家で会った事ないけど。」
嘘だ…。こんな人が、私の事を本気で…?
こういう告白も良くある事だけど、なぜか、流星先輩の告白だけは、すぐに、振れなかった。運命ってやつ…なの?