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「悠樹ぃぃぃぃぃぃぃ!」
女の子は、男の子に飛びつき。ギュッと抱きしめた。
「なんだよ。深雪。」
「嬉しいのっ!」
深雪は、バッと顔を上げて、ニコッと笑顔を浮かべた後、また、悠樹を抱きしめ、静かに囁いた。
「…本当に、悠樹と同じ高校に行けたんだね…」
悠樹は、深雪の頭を撫でて少し微笑むと、小さく、後ろで騒いでいた女子の固まりが
「あの2人…超似合ってるじゃん…?」
「てゆーかー男の方、超好みかもお~」
「ダメだよ。恋人いるんだから。抱きついてるじゃん。」
小さな声だけど聞こえてる。悠樹は少し顔を赤くした。深雪はそれを見て、女子の固まりを睨み付けた。
女子の固まりは、嫌な顔を浮かべながら、去っていった。深雪はホッとして、悠樹に抱きつこうとすると、悠樹は私の肩を掴み、抱きつかせてくれなかった。悠樹は深雪の頭をまた優しく大きな手で撫でて、
「俺たち、カップルに見えてるみたいだね。抱きつくの止めた方が良い。」
低い声が、私の真上で聞こえる。悠樹は背が高くて、綺麗な茶髪をしてて、顔立ちも良くて、頭も良くて。良いとこだらけなのに私は、まだ良いのは顔だけ。頭が悪いし、ド天然だし、迷惑かけてばかり。なのに悠樹は、どうしても一緒の高校行きたくて必死に勉強教えてくれて、絶対行けないと先生から言われてたところにこうして入れた。もしも、悠樹との間にある壁がなかったら、絶対私は、悠樹とカップルになりたい。でも、その壁は、絶対に乗り越えられない。絶対に、絶対に…。
「…。悠樹ぃぃ…。」
深雪は、泣きながら、また悠樹に抱きつこうとした。悠樹は、また深雪の肩を掴み
「抱きつくなって。」
と、傍から離した。
「やっぱり同じクラスじゃないね…。うぇぇえん」
深雪は、高い声で泣き出す。すると、深雪は後ろから、誰かに頭を撫でられた。悠樹とは、また違う手。
「そう泣くなって。深雪ちゃん。俺と同じクラスじゃん?」
深雪は、バッとその人から離れ、悠樹の腕を掴み、叫んだ。
「触らないで!!」
「いいじゃん。別に。深雪ちゃんのサラサラな髪、俺好きだな~」
深雪はジッとその男を睨み付ける。深雪は悠樹以外の男から触れられるのは全て嫌がる。深雪はモテるせいか、色んな男から、触られる。痴漢にもあった事があるし、ラブホテルに誘われた事もある。悠樹は、深雪の腕を掴み、自分の腕から、離させた。深雪は、下にうつ向いた。
「アタシ、トイレ行って来る」
暗い感じの様子で走って行ってしまった。
「かわいいよね~深雪ちゃん。あのツンツンしてるとこも好きだなあ…」
何が言いたいのかこの男。
「お前、深雪に近寄るな。気持ち悪い」
悠樹はハッキリと男に言った。睨みながら。
「なんだよ~。それよりさ兄さん。俺のことは誠也って呼んでくれや。」
馴れ馴れしい。しかも兄さんって。お前に兄さんて呼ばれる筋合いはない。俺は、またさらに睨んだ。
誠也は、悠樹の睨みに気づいていないのか、また話始める。
「兄さん!俺さ、深雪ちゃんの事まぢ狙ってんだよね。手伝ってくんない?」
悠樹の怒りは最頂点まで登った。悠樹は、誠也を殴り倒した。そして、上から、また睨み、そっと呟いた。いつもより低い声で。
「深雪にこれ以上近づいたら俺が許さない。消えうせろ!」
悠樹はそう叫んだ。誠也は、そこに、ペタンと座り込んだまま動けなくなった。
悠樹は、すぐにその場を去った。
久しぶりだ。こんなに人に向かって怒ったのは。あの誠也って言う奴は、深雪のストーカーだ。体育祭の写真でも、深雪のだけ大量に買い込んでたし、家の住所を深雪の友達に聞いたりしてた。電話もたまにかけて来てた。深雪は、元々嫌がってたけど。
もしかしたら、たかが妹に、こんな感情を抱くのは異常なのかもしれない。深雪と一緒に寝るときは、なぜか眠れないし、深雪に抱きつかれてきた時は、ゾクッとする。もしかすると、本能が深雪の方に動いているのかもしれない。でも、絶対本能にまかせてはいけない。ヤッちゃいけない。だって、僕達は
双子だから…