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第三十話 vsダイヤモンド・ダスト①

「また……逃げられた。スノーマン、転移魔法もう少し早く使えないの?」

「無理を言ってくれるな、ダイヤモンド・ダスト。私はあの黒兎のようにサポート特化ではないから」



 支部から魔獣発見の通知。それを優先的にまわしてもらい、契約妖精であるスノーマンの転移魔法で現場に駆けつけていたのだが――。



 向こう――黒アリスの契約妖精である黒兎の方が一枚上手な為か、逃亡されて続けている。上層部や本人、スノーマンの考えでは直接戦闘の面では心配は全くしていない。

 黒アリス側もそれを理解しているのだろう。魔獣の退治に専念するだけで、『連盟』と事を構えようとはしない。



 スノーマンは黒兎のように補助魔法の扱いに長けていない。一日に使える回数は一回程度。魔獣の魔力反応があった場所に跳ぶのが精一杯。

 支部の情報部から指令を受けてからの行動になる為、対応がどうしても後手になってしまう。



 今日もダイヤモンド・ダストは、魔獣及び黒アリスの目撃情報があり出撃したのだが、今回もまんまと逃げられてしまったようだ。



 人気がなくなってしまった倉庫街で、舌打ちをするダイヤモンド・ダスト。流石に何度も逃げられてしまえば、感情的に起伏の少ない彼女であっても、少々苛立ちが多くなってきたようだ。

 そんな彼女を過度に刺激しないように、スノーマンは優しげな声でをかけた。



「ダイヤモンド・ダスト。今日はこの辺で引き上げるべきだと思うが……」

「……了解。帰還準備に――! まだいる……!」

「それはどういう――! なるほど……向こうも戦闘の意思があるみたいだね」



 スノーマンの飛行魔法によって支部への帰還しようとした時、彼らの周囲を取り囲むように多数の魔力反応が出現した。



 剣や槍に、斧。様々な武器を装備したトランプ兵の集団に、ダイヤモンド・ダスト達は包囲されていた。

 その段階で彼女達は、襲撃者の正体に思い至る。黒アリスだ。撤退したと思わせて、何体か使い魔を放っていたようだ。



「しかし逃げ上手だと思っていたが、相手側から仕掛けてくるとは……黒兎の入れ知恵かな」

「……そんなことはどうでもいい。まとめて吹き飛ばす。――『ブリザード』」



 瞬間的に辺り一帯を吹雪が襲う。異常を察知したトランプ兵達がダイヤモンド・ダストに攻撃をする前に決着がついてしまった。

 トランプ兵達は武器を振り上げた姿勢のまま、凍りついていた。ダイヤモンド・ダストは面倒くさそうに片手で何かを握り潰す仕草をする。

 それと同時に、パリン。トランプ兵達の体が硝子のように砕け散った。



 所詮D級の魔獣にも届かない使い魔。それが数十体いたとしても、ダイヤモンド・ダストには障害にもならなかった。



「時間稼ぎもできない雑兵を集団で寄越して……」



 結果自体はスノーマンの想像通りだった。黒アリスの使い魔でまともな戦闘にできるのは、精々チェシャ猫ぐらいだろう。

 もしくはトランプ兵はただの囮で、他にも使い魔による不意打ちを狙っている可能性もある。既に帰る気満々の契約者に代わり、スノーマンは周囲を警戒していた。





「アリス。結果は予想通りとはいえ、次はどうするんだな?」

「そうだね……」



 ダイヤモンド・ダストの戦闘の様子を離れた場所で、悟と黒兎は観察していた。

 トランプ兵がたった一撃の魔法で全滅させられた。一個体がどれだけ弱くても集団で襲いかかれば、相手の手の内を少しだけも見ることができる。そんな考えの元、投入されたトランプ兵はその役割をかろうじて全うした。



「でもやっぱり無謀ではないか、なんだな? 『連盟』の追撃が多いからとはいえ、こっち側から仕掛けるとは――」

「……問題ないとは言わないけど、過去の『魔女』達を調べて気がついたことが一つあるんだ。危険人物という印象さえ払拭できれば、『魔女』認定は解除される。『連盟』の魔法少女と戦わずに、魔獣討伐だけに専念していれば、今の状況は改善されるはず……」

「だったら、ダイヤモンド・ダストに喧嘩を売るメリットがないんだな」

「それは分かってるけど……いつまでも逃げ続けるのも気分が悪いでしょ? それに僕は意外と負けず嫌いなんだ」



 視界の先には、佇むダイヤモンド・ダストとその肩に乗るスノーマン。自分達が絶対強者だと思っている彼らを対象に、悟は追加の使い魔を仕向けた。


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