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田舎暮らし、はじめてみました  作者: 秋野さくら
82/127

若と嫌悪感

(82)


「お主…何モノか。」

ピクリと目元を震わせた天狗は、低く構えたまま尋ねた。

「何モノ、ねぇー…。」

ベニは天狗の反応を楽しむように目を細め、少し考えてから口を開いた。

「ちょいと長く生きているだけの、ただの狐さ。」

含みを持たせたその言い方は、天狗の機嫌を損ねたらしい。

天狗の目に明らかな苛立ちが灯った。

「貴様ぁ…」

元々気が短い質なのか、彼は既に怒気をはらんでいた。

「まぁまぁ…お主、何か知っておるようだのう?もしや関係者であるか?」

ピりつきだした空気を変える為か、小柄な天狗が横から口を挟んだ。

そしてゆったりとした動きで大柄な天狗の前に立ち、にこやかにベニと対峙する。

ベニはじっと小柄な天狗を見ていたが、ふっと力を抜いた。

「…お前さん、強いね。サシでやったら、あたしの負けかねぇ~?」

ふふふと笑うベニに、同じくふふふと笑い返す天狗。

「そんなことはあるまいよ。褒めても何もでんぞ。

…して、わしの質問に答えてくれぬか?」

ベニは、ああと反応した。

「いんや、あたしは通りすがりってとこさね。ただ、お前さんらと目的地は一緒のようだ。」

そう答えたベニは、ついでと言わんばかりに言葉を繋げる。

「あたしも一つ聞きたいんだけどねぇ。…お前さん等、寄ってたかって何を企んでるんだい?」



な…に?

やってほしいこと?拒否権はない…?

漠然とした戸惑いを感じていた咲は、ブルノの言葉で反射的に危機感を覚えた。

逃げなきゃ!

そう思うのと同時に、咲の足は駆け出していた。

「ヤチノ。」

咲の行動を予想していたのか、ブルノは至極冷静に指示を下す。

ヤチノは微かな躊躇いを見せたが、すぐに咲を捕獲した。

「は、なして!ヤチノさん、いやだぁ!」

暴れる咲を無理やり押さえつけたヤチノは、咲のことを忘れてしまったかのように冷たい目をしていた。

「…初めからこうしておけば良かったのだ。まったく手間を取らせおって。」

そうブルノは吐き捨て、もはや隠さなくなった嫌悪感に顔を歪めた。



「き、貴様ぁ!先ほどから黙っておれば、ぬけぬけと…!わしが成敗してくれようぞ!!!」

突如、大声を張り上げた大柄な天狗は、掴みかからんばかりの勢いで罵った。

「ほ~う。あたしは別に構いやしないさ。いいのかい?お前さん、負けちゃうよ~?」

敢えて挑発するような言い方をし、大柄な天狗をおちょくるベニ。

天狗は顔を怒りに染め、腰に差していた扇を引き抜いた。

「若っ!落ち着きなされ。貴方がかなう相手ではありませぬ。」

小柄な天狗の声はもはや彼には届いておらず、怒りに支配された彼は小柄な天狗を突き飛ばした。


一歩また一歩と踏み出す度に地面には亀裂が入り、突風が吹き荒れる。

「若っ!!いけませぬ!我らの目的をお忘れか!」

ベニの読み通り、大柄な天狗が次期領主であり、小柄な天狗がそのお付きだったようだ。

やはりそうか、とは思いつつも、ベニは煽り過ぎたことを少し後悔していた。

このままでは話どころではない。

さて…どうしたものか。

「若っ!」

必死に止める小柄な天狗を振り切った彼は扇を構える。

ベニも臨戦態勢に入り、攻撃の備えへと入った。

ピタリと風はやみ、睨み合った両者は1秒、2秒と相手の出方を探る。

その時、凄まじい地響きと共に稲光が落ちた。


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