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田舎暮らし、はじめてみました  作者: 秋野さくら
70/127

女子会の醍醐味

(70)


遂に、遂に言ってやった…!

咲は内心ガッツポーズを決めつつ、聡子の顔をうかがった。

彼女は中途半端に口を開けた状態で固まっていたが、徐々に目を見開いていく。

それと同時に首を細かく振り、その振動で顎の肉が揺れた。

「うそ…よ。嘘、うそ!咲ちゃんがそんなこと言うはずがない!」

悲鳴に近い、喉を締め付けたような声が飛び出した。


思い返せば、聡子にきちんと拒絶の意志を告げたことはない。

しかし、やんわりとは伝えていたつもりだ。

まさか…こんなに取り乱すとは。

咲は突っ伏して泣き始めた聡子を見やり、咲は少なからず動揺していた。

「さ、聡子さ…。」

「うそよぉぉぉ!咲ちゃんがぁぁぁー!私の咲ちゃんが…」

幼い子供のように、おいおいと泣き続ける聡子。

そんな姿を目の当たりにした咲は、ほんの少しだけ心が痛んだ。

そして少しだけ、ほんの少しだけ可哀想になってきた。


その途端、まるで察知したかのように聡子は咲に縋りついた。

「ざぁぎぃちゃーん。あだじ、あだじ謝るから。

どうか許してくださいー!迷惑、かけて…ごめんねぇぇ」

涙はもちろん、鼻水まで豪快に垂れ流した聡子は、勢いよく咲に抱き着いた。

「う、え…ちょっと落ち着いて、うわ!鼻水が…」

がっしりと掴まれたままの咲は、なりふり構わず縋りつく聡子の鼻水をもろに食らった。

「ざぁぁぁぎぃぃちゃーーん!!」

尚も縋りつく聡子から逃げようともがく咲と、逃してなるものかとしがみつく聡子の攻防戦はしばらく続いた。



「おや!かーさんが泣いているようだね!!

懐かしいなぁー!!とーさん覚えているかい!?かーさんの異名を!」

「ああ、覚えているとも。…泣き落としの聡子、だろ?」

「そうさっ!2人の間に何かあったのだろうね☆」

「さあな、確か今は女子会中?だろう。…男が首を突っ込むのは無粋だろう?」

「HAHAHAHA~☆とーさん、素晴らしいよ!さすがジェントルマンだね!!」

「ふん。おい、まだ飲めるだろう?」

「もちろんさ☆北園家に!」

「北園家に。」

ワイングラスが軽快に打ち鳴らされた。

2人の夜はまだまだ続く。



「分かったから!分かりましたから!ちょっと…離れて!!」

2人の攻防は咲の根負けという形で決着がついた。

未だ涙を流し続ける聡子は、上目遣いで咲の様子を伺い、そろそろっと離れた。

「咲ちゃん…あの、迷惑かけて、ご、ごめんな…」

「ああああもう!泣かなくて大丈夫です!謝らなくていいですから!

もう…だいじょうぶですから…。」

咲はもはや精魂尽き果てていた。


「咲ちゃん…あのね。」

「…なんですか。」

「あたし、嬉しかったの。」

「なにがですか。」

「咲ちゃんと友達になれて。

こんな老い先短いあたしだけど、咲ちゃんとお話している時だけは若返ったようだった。」

「…よかったですね。」

「だから、これからも仲良くしてもらえると嬉しいの。」

「………」

「やっぱり…む、りなの…?もう元には戻れないの、かな?」

「…わかりません。それは聡子さん次第です。」

「うん…そ、そうだよね…。」

「…まぁ、ちゃんと私の意志を確認してくれたら。

今迄みたいに、聡子さんだけが一方的に話すのは友達とは言えないと思います。」

「うんうん、そうだよね。咲ちゃんの言う通りだね。

あたしが全部悪い!こんなあたしとは友達続けたく、ない、よね…?」

「いや、まぁ…なんというか。きちんと言葉のキャッチボールして欲しいっていうか。

聡子さんばかり話してっていうのは、違うんじゃないかなーっていう。」

「うんうん、そうだよね。あたしばかり話して、あたしが全部悪いんだ。

咲ちゃんに…迷惑か、かけちゃって。本当にごめ、ごめんね…。」

「いや、何もそこまで…」

「ううん、あたしが全部悪いのよ!」

「いや!だからそこまで言ってないですって!」

「じゃあ、あたしだけが悪いわけじゃないのね!?」

「え?いや…え、どういう」

「はっきり言ってちょうだい!ほら!あたしが全部悪いのよ、そうでしょ?!」

「えぇ…」

「じゃあ、咲ちゃんにも悪い所があったということね!」

「え!?」

聡子の顔には満面の笑みが広がった。

涙は瞬時に渇き、痕跡さえ見当たらない。

「なんだ~、喧嘩両成敗ってことじゃない。あたしも悪いし、咲ちゃんも悪い。

あ!そうか、これが女子会の醍醐味だったのね。

喧嘩して仲直り、そしてもっと仲が深まるということなのね!」

「え、え。待って、展開が早すぎて何が何やら。」

「もお、咲ちゃんしっかりして頂戴!

つまり、仲を深める為の喧嘩だったということよ。

女子会ってなんて素敵な集まりなのかしら~!またやりましょうね。

あら、もうこんな時間なの?楽しいとあっという間ね。

咲ちゃん、もう寝るわ!おやすみなさい~。」

そう一方的に捲し立てた聡子は、ものの数秒で寝息を立て始めた。



「もうこんな時間か。おい、雄大そろそろ寝るか?」

「ああ☆そうだね、とーさん!!どうやら彼女たちも終結したらしい☆」

「そうか。」

「あ!とーさん、覚えているかい??かーさんの異名の続き☆」

「泣き落としの聡子、ただでは終わらせない…だったか?」

「ふふふん☆これからが楽しみだね!」


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