女子会の醍醐味
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遂に、遂に言ってやった…!
咲は内心ガッツポーズを決めつつ、聡子の顔をうかがった。
彼女は中途半端に口を開けた状態で固まっていたが、徐々に目を見開いていく。
それと同時に首を細かく振り、その振動で顎の肉が揺れた。
「うそ…よ。嘘、うそ!咲ちゃんがそんなこと言うはずがない!」
悲鳴に近い、喉を締め付けたような声が飛び出した。
思い返せば、聡子にきちんと拒絶の意志を告げたことはない。
しかし、やんわりとは伝えていたつもりだ。
まさか…こんなに取り乱すとは。
咲は突っ伏して泣き始めた聡子を見やり、咲は少なからず動揺していた。
「さ、聡子さ…。」
「うそよぉぉぉ!咲ちゃんがぁぁぁー!私の咲ちゃんが…」
幼い子供のように、おいおいと泣き続ける聡子。
そんな姿を目の当たりにした咲は、ほんの少しだけ心が痛んだ。
そして少しだけ、ほんの少しだけ可哀想になってきた。
その途端、まるで察知したかのように聡子は咲に縋りついた。
「ざぁぎぃちゃーん。あだじ、あだじ謝るから。
どうか許してくださいー!迷惑、かけて…ごめんねぇぇ」
涙はもちろん、鼻水まで豪快に垂れ流した聡子は、勢いよく咲に抱き着いた。
「う、え…ちょっと落ち着いて、うわ!鼻水が…」
がっしりと掴まれたままの咲は、なりふり構わず縋りつく聡子の鼻水をもろに食らった。
「ざぁぁぁぎぃぃちゃーーん!!」
尚も縋りつく聡子から逃げようともがく咲と、逃してなるものかとしがみつく聡子の攻防戦はしばらく続いた。
「おや!かーさんが泣いているようだね!!
懐かしいなぁー!!とーさん覚えているかい!?かーさんの異名を!」
「ああ、覚えているとも。…泣き落としの聡子、だろ?」
「そうさっ!2人の間に何かあったのだろうね☆」
「さあな、確か今は女子会中?だろう。…男が首を突っ込むのは無粋だろう?」
「HAHAHAHA~☆とーさん、素晴らしいよ!さすがジェントルマンだね!!」
「ふん。おい、まだ飲めるだろう?」
「もちろんさ☆北園家に!」
「北園家に。」
ワイングラスが軽快に打ち鳴らされた。
2人の夜はまだまだ続く。
「分かったから!分かりましたから!ちょっと…離れて!!」
2人の攻防は咲の根負けという形で決着がついた。
未だ涙を流し続ける聡子は、上目遣いで咲の様子を伺い、そろそろっと離れた。
「咲ちゃん…あの、迷惑かけて、ご、ごめんな…」
「ああああもう!泣かなくて大丈夫です!謝らなくていいですから!
もう…だいじょうぶですから…。」
咲はもはや精魂尽き果てていた。
「咲ちゃん…あのね。」
「…なんですか。」
「あたし、嬉しかったの。」
「なにがですか。」
「咲ちゃんと友達になれて。
こんな老い先短いあたしだけど、咲ちゃんとお話している時だけは若返ったようだった。」
「…よかったですね。」
「だから、これからも仲良くしてもらえると嬉しいの。」
「………」
「やっぱり…む、りなの…?もう元には戻れないの、かな?」
「…わかりません。それは聡子さん次第です。」
「うん…そ、そうだよね…。」
「…まぁ、ちゃんと私の意志を確認してくれたら。
今迄みたいに、聡子さんだけが一方的に話すのは友達とは言えないと思います。」
「うんうん、そうだよね。咲ちゃんの言う通りだね。
あたしが全部悪い!こんなあたしとは友達続けたく、ない、よね…?」
「いや、まぁ…なんというか。きちんと言葉のキャッチボールして欲しいっていうか。
聡子さんばかり話してっていうのは、違うんじゃないかなーっていう。」
「うんうん、そうだよね。あたしばかり話して、あたしが全部悪いんだ。
咲ちゃんに…迷惑か、かけちゃって。本当にごめ、ごめんね…。」
「いや、何もそこまで…」
「ううん、あたしが全部悪いのよ!」
「いや!だからそこまで言ってないですって!」
「じゃあ、あたしだけが悪いわけじゃないのね!?」
「え?いや…え、どういう」
「はっきり言ってちょうだい!ほら!あたしが全部悪いのよ、そうでしょ?!」
「えぇ…」
「じゃあ、咲ちゃんにも悪い所があったということね!」
「え!?」
聡子の顔には満面の笑みが広がった。
涙は瞬時に渇き、痕跡さえ見当たらない。
「なんだ~、喧嘩両成敗ってことじゃない。あたしも悪いし、咲ちゃんも悪い。
あ!そうか、これが女子会の醍醐味だったのね。
喧嘩して仲直り、そしてもっと仲が深まるということなのね!」
「え、え。待って、展開が早すぎて何が何やら。」
「もお、咲ちゃんしっかりして頂戴!
つまり、仲を深める為の喧嘩だったということよ。
女子会ってなんて素敵な集まりなのかしら~!またやりましょうね。
あら、もうこんな時間なの?楽しいとあっという間ね。
咲ちゃん、もう寝るわ!おやすみなさい~。」
そう一方的に捲し立てた聡子は、ものの数秒で寝息を立て始めた。
「もうこんな時間か。おい、雄大そろそろ寝るか?」
「ああ☆そうだね、とーさん!!どうやら彼女たちも終結したらしい☆」
「そうか。」
「あ!とーさん、覚えているかい??かーさんの異名の続き☆」
「泣き落としの聡子、ただでは終わらせない…だったか?」
「ふふふん☆これからが楽しみだね!」




