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田舎暮らし、はじめてみました  作者: 秋野さくら
68/127

講演会

(68)


北園雄大。

北園家の4男として生を受けたこの男は、とにかくよくしゃべる。

「ああ、君!名前は…そう!SAKIだね?

親愛の証としてファーストネームで呼ばせてもらうよ!

僕のことは好きに呼んでもらって構わないさっ!」

「では、北園さ…」

「ノンノン!君と僕の仲だろう??

雄大と呼んでくれよ!」

君と、僕の、関係…?

出会って開始2分の会話がこれである。

もしかして彼と私の間には時空のひずみでもあるのか?

危うく現実逃避世界に逃げ込みそうになった咲は、一応の礼儀として彼の話に集中した。

「サキは、この近くに引っ越してきたんだって?!

君も物好きだね!いや、そうか、そうだよね!!

HAHAHAHAHA~!君は本当に面白いレディだね!」

咲は一言も発していない。

もはや彼は人間なのか、そのレベルで意味が分からない。

「HAHAHAHA~!ああ、おかしい☆最高だよサキ!」

目元に涙を浮かべ笑い転げる雄大。

その姿を微笑ましく見守る北園夫婦。

え、怖いんですけど。

咲は本能的な恐怖を感じた。


一刻も早くこの空間から脱出しよう、そう固く心に誓った。

「じゃあ私はこのへ…」

「そうだ!!かーさん良い事を思いついたよ!!」

またしても咲の言葉に被さって叫ぶ雄大は、人智を超えた何かと繋がっているのだろうか。

咲のイライラは募る一方である。

「サキの歓迎会をしよう!僕の親友サキを盛大に祝おうじゃないか☆」

出会って5分、咲と雄大は親友になったらしい。


咲の歓迎会、という名の雄大の講演会は3時間にも及んだ。

もはや感動の域である。

よくもまぁそこまで舌が回るものだ。

咲はどこか、未知なる生物を観察している気分になっていた。

「なんて素晴らしいのかしら。雄大ちゃんは我が家の宝よ~!」

お酒が入った赤ら顔の聡子はうっとりと見つめる。

「ありがとう!かーさん!!

僕は北園家の名に恥じない男になるよ!

そして、いつでもユーモアを忘れない男にもね☆」

雄大はバッチと音がしそうな激しいウィンクをしたが、咲はすっと避けた。

この親にしてこの子あり、だな。

「おや!もうこんな時間かい!?楽しい時間はあっという間だね!」

ふと時計を確認した雄大は、肩を大げさに上げてみせた。


時刻は21時を少し回ったところ。

咲はぼんやりと時計を見上げ、切なさに包まれていた。

“せっかくの休みが…!”

今日やる予定だった、あれやこれやが悲し気に手を振っている。

ああ、私だって私だって…。

がっくりと項垂れる咲を気遣う者などいるはずもなく、講演会は更に続いた。


そして、咲は運命の時を迎えるのである。

「お泊り会と言えば!…夜の女子会よね~。

ああ、私一度でいいからしてみたかったのよ。女・子・会♡」


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