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田舎暮らし、はじめてみました  作者: 秋野さくら
102/127

どちら様でしょうか

(102)


「ベニ様、どうぞこちらです。」

シメノはベニを急かすように言葉を重ねるが、ベニは釈然としない顔をしていた。


まず第一に、クロノメの言葉だ。

“このような場所で長々と…。”

それは、ベニの居場所を始めから把握していたということ。

しかし“私どもの不手際で”とも言っているように、カラス族内部での指揮系統は何かしら穴があると見て間違いないだろう。

“戯言”という表現を使っている辺り、クロノメにとって不穏因子に心当たりがあるからこその発言とも取れる。

第二に、ブルノとカヤノの会話だ。

ヤチノの人型を巡る彼らの会話は、どこかちぐはぐな印象を受けた。

カヤノの取り乱しっぷりから考えるに、彼の言葉は本当なのだろう。

ヤチノが人型となった直接の誘因は、カヤノの言葉だ。

しかし、ブルノが指摘したヤチノが飛べない原因は未だ分かっておらず、ブルノもまたヤチノの境遇に何かしらの影響を与えたらしい。

結局彼らの会話は、互いが自責の念に駆られているという点では共通しているが、その原因にズレが生じているため、ちぐはぐな印象を与えるのだろうか。

そして第三に、突如現れたシメノというカラスだ。

このカラスに関する情報がまるでない。

ただ、クロノメからのメッセンジャーとして現れているあたり、用心に越したことはないだろう。


ベニは、薄らと焦りが感じられるシメノを見据え、口を開いた。

「お前さ…」

「シメノォー!」

唐突な横入れをしたのはカヤノだった。

「シメノ…お前どうして、ここに?

いやそれより、人間はどうしたんだ?フイノさんは?

あ!もう移送が完了したからか?

それに、どうしたんだ!その姿を見るのは何十年ぶりだろうな。」

口早に捲し立てるカヤノの表情は明るい。

口ぶりから察するに、2体は仲が良いのだろう。

ニコニコとシメノを見る彼は、先程まで泣きじゃくっていたとは思えない。

「おい!なんだよ、じっと見たりして。

俺だって立派に仕事してるって!」

そうカヤノは薄い胸を張ってみせた。

「…どちら様でしょうか?申し訳ありませんが、只今急務の最中です。

お話は後程伺いますので。」

シメノはペコリと頭を下げると、既に視線はベニへと向いていた。

「お、おい。そういうくだらない冗談は好きじゃない。」

カヤノはひょいっとシメノを掴み上げると、目線を合わせて言った。

「…放しなさい。私はクロノメさんの勅令で動いています。」

静かだが、底知れぬ迫力がそこにはあった。

カヤノは驚愕の表情で固まり、シメノを穴のあくほど見つめる。

「警告はしました。…発令します。」

その途端、またしてもシメノの口が開かれ、甲高い音が響き渡った。


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