新展開
細かい横穴は所々あるが、大体は高いとことか、狭そうなので行け無さそう、まーほぼ、一本道と言っていい、道?を歩いていると一気に広い空間に出たが道がなくなり下を見れば80メートルはありそうだ。
「これはもう行き止まりだな、反対に行って何もなければ、ふー考えないようにしようここまで来るのに休憩抜いて体感で５時間くらいかな、戻るのかー」
その時、何かが動いている音が聞こえてきた。
「なんだ？」
崖下を覗き込んだとき言葉を失った。
「………嘘だろ!？、ドラゴンかあれ」
そこにいたのは、いびきをするように火を口から出してる、見たことも無いような大きさのドラゴンなんて考えていたが。
「そもそもドラゴンなんか見たことないけどな」
男は少しずつ後ずさりしながら、崖から離れていく、ふー、一息ついた男はここが異世界であることを確信した。
「ドラゴンなんて地球にいるわけが無いし、そもそも地上で五重塔くらいある奴が生きられるわけが無い、どう考えても自重で死ぬだろ」
来るときより早い速度で男は来た道を戻って行く。
「はー、異世界半端ねー、あんなのどうしようもないな」
愚痴りながら歩いていると卵の殻が見えてきた。
「やっと戻れた、軽く毒味のとき仮眠（実際は熟睡）取ったけど少し寝たい」
男は特に考えることもなく無意識に卵の中に入って眠りだした。
「ふぁ、今何時だやばい今日納期なのに遅刻なんて出来ねーぞ」
起きた男はいきよいよく頭を動かしゴンとぶつけ殻が割れた。
「いてー。は、ここ何処、あーそうだ異世界だ夢じゃなかったのか、くそが」
男は苔を食べながら、昨日とは反対側に歩き出した。
「あー、喉が渇いた、昨日の帰りに飲んだけど水を貯めておける物、何もないからな神が転生させたならもっとサービスしとけや、チートも無しでドラゴンがいる洞窟で全裸な奴なんて俺以外いるのか」
また愚痴を言いながら歩く男の前に分かれ道が出てきた。
「あー、分かれ道かどっち行けばいいんだ、確か漫画でつば付けた指で風を感じるほうが外とつながってんだよな」
男は風を感じるために指を濡らし目を閉じ集中する。
「多分左だな」
男はかすかに感じたような気がした左に行くことを決め歩き出した。しばらく歩いていると苔とは違う光が見えて来た瞬間に走り出した。
「……………………」
男はただただその目に見える景色の美しさに言葉を失っていた。見渡す限りの蒼穹、豊かで青々とした森何より男の目を奪ったのは美しい湖だった
「綺麗だ」
男は一言そう言うと、座り込み喉の乾きも不安も全て忘れ、ただただその景色に心奪われた。その後男が気付いたときはもう夕日が沈みかけていた時だった。
「生まれてはじめて美しいと思った、ただ生まれ歯車のように生き死んでいく人生だと思っていた」
男の心は生まれて初めての喜びに震えていた。男の人生は別に特別なことなどなにもなかった普通の両親の元に生まれ普通に愛され普通に勉強し普通に就職しこのまま結婚して子供を作り死んでいくと思っていた。
それがまさか異世界で苔食って、森と湖と蒼穹を見ながら黄昏れることになるとは人生何があるかわからんな
「ふぅ、取りあえず洞窟戻るか暗い中動けないし」
今のところろくでもない体験しかしてないけど男は異世界に初めて喜びを見出した
男は喉の乾きを誤魔化すように苔を噛みながら来た道を戻る。
