『ブラッシュアップ考』より『おどろきモモの木(改稿)』
アホな中学2年生どもがメンドくさい。
思春期だか第二次性徴期だか知らんが、自分が発情しとるんだと思う。
下校時間になってボクが隣の2年2組に桃ノ木美咲を迎えに行くと、男子の「ひゅーっ」と囃す声がどこかから聞こえる。
無視。
どこから聞こえたかも確かめない。
それまで美咲と喋ってた女子もキラキラテカテカした表情で「ほら、ミサっチャン! 轟クンが迎えに来たよっ」と美咲に言う。
何の報告だ?
教室の入り口から「美咲ぃ! 帰るぞォ」ってデカい声で呼んでんだから、報告せんでも本人に聞こえてるっちゅーのに。
美咲は美咲で、照れ笑いしながらパタパタと帰り支度をして立ち上がり、ボクの方へ小走りして来て振り返って女子たちに手を振る。
思いっきり広げた右手を小刻みに振って。
この時の美咲とボクとの距離が重要。
1メートルぐらいなら、ボクはそのまま廊下を歩き出せて美咲がまた小走りで追いついてくる。
2メートルからは危険だ。
その距離で先に歩き出そうものなら、美咲はプチパニックを起こして「功太クゥンっっっ!!!」と悲鳴みたいなデカい声でボクの名前を呼ぶ。
だいたい、こんな情緒不安定な言動を見たら、誰だって察せられそうなもんだろうに。
ボクの周りの友だちは、だいたい知ってる。
美咲は信じられないぐらい臆病で、パニックを起こすことがあって、そのきっかけが多種多様。
恐怖症?
喩えるなら“世界恐怖症”。
さっきまで楽しそうにケラケラ笑っていたのに、突然、体がすくんで泣き出し動けなくなることがある。
それをなだめることができるのは美咲の家族と幼馴染みのボクとボクの家族ぐらいだと思う。
ボクは美咲のママ、紗友理さんにすべてを託されているのだ。
だからボクと美咲はずっと同じクラスだった。
幼稚園も小学校も。
たぶん、、紗友里さんから先生たちに頼んでいたんだろう。
中学2年生になって別のクラスになったのは、学校側としては本人のためを想っての挑戦だったろうと思う。
リハビリみたいなもの。
それでも念のためなんだろう、ボクは隣の2年1組。
ボクらの中学校は1学年6クラスあるのに。
1組と2組は体育の授業とか、いろいろ合同なものが多いからだろう。




