とびらの様あらすじ企画『始まりの2人 台湾魔戦』
「師……師父……」
台湾の夜市で、皆に慕われて働く青年、周星海。
目の前に現れた老人の姿は、台湾大地震で被災孤児となった自分と兄を引き取ってくれた道観で、父親のように自分たちを愛し育ててくれた燕道士の霊。
消えた師父の霊と入れ替わるように現れたのは、道観で道士の修行をしてるハズの兄、周徳華。
痩せこけ目を血走らせた姿の異様さに、いきなりの兄の剣撃をなんとか かわせた星海。
気づいた夜市の仲間が騒ぎだし、兄は逃走する。
同時に鳴るスマホ。
相手は道観で仲の良かった若者、陳冠軍。
ついさっき、兄が師父を刺殺し、逃走中だと言う。
ここから道観まで数十キロの距離、あり得ない。
自分に起きた出来事を伝える星海。
冠軍は「そちらに向かう」と答える。
電話を切った星海の回想。
兄弟は道観で道士としての修行をしていた。
マジメな兄。
直感的に真理を理解する天才肌の星海。
やがて星海は、真実に気づき兄に話す。
あらゆる信仰の儀式や呪文、厳しい修行や生け贄は、術者の潜在的な力を引き出すための手段に過ぎない、と。
「これをしたのだから」
「これだけの代償を払ったのだから」
そんな意識によって人の能力は引き出される。
しかし報酬として起こせる奇跡は、微々たるもの。
「やってられない。
俺は自由に生きる」
そう言って、星海は道観を旅立ったのだ。
翌朝、合流した冠軍から聞いた真相。
冠軍は生まれながらの微弱なテレパス能力を持ち、夢見の相談などを受ける占い師として成長していた。
そして徳華から相談されていた。
『強大な魔によって世界が滅びる夢を見続けている』
その悩みに「予知夢の可能性がある」と答えたと。
星海は理解する。
兄は、魔と戦える強い力を手にいれるための大きな代償として、敬愛する師父を殺害し、更なる力の覚醒のために自分を殺そうとしている。
そこへ更なる凶報。
道観が徳華に急襲され、皆殺しにされた。
星海は兄との死闘を覚悟し、策を練る。
再び現れた徳華。
飛行能力、念砲、使い魔の使役まで身につけた徳華。
街を逃げ回り、消火栓の破壊などで使い魔に応戦する星海。
この世ならざる存在は、流水に弱いのだ。
やがて戦いは拮抗し始める。
兄の起こす“奇跡”を目の当たりにした星海は、固定観念の枷が外されていき、その意識が自らの能力を引き出し始めたのだ。
街を跳梁し繰り広げられる死闘。
人々は目撃し、緊急報道番組によって世界に向けて中継される。
雑居ビルの屋上で対峙する2人。
星海は告げる「街の異変に気づいているか?」
人々は2人の戦いを目撃し、物理的に平常だった世界を保ってきた固定観念が壊され始めていた。
あり得ないハズのものを肯定し始めた人々の意識は、魔や霊的なものを活性化させる妖気を生み出し始めている。
「兄貴が夢で見ていた世界の破滅の引き金は、オレたちじゃないのか?」
愕然とする徳華。
懸命に心を殺して行ってきた凶行への想いの反動で、精神が崩壊する。
生ける屍のようになった兄と屋上に立つ星海の元へ現れる冠軍。
「魑魅魍魎が跋扈する世界の訪れだ。
人々は道士の助けを求め敬うだろう。
期待に応えねば」
「ホントは、お前の企みだったんじゃないのか?」問う星海。
大地震の悲劇をトラウマに持つ徳華の精神に、テレパシストの冠軍が働きかけて見せていた、偽りの予知夢だったのだ。
人々に畏れ敬われた道士の復権を目論んで。
始まる死闘。
人々の怯えなどを敏感に感応する冠軍の、覚醒された力は圧倒的だった。
やがて一切の物理的攻撃も効かなくなる。
「人を超えた存在になった」という冠軍の意識は、己の存在を変貌させ始めたのだ。
「私は神になったのだ!」哄笑する冠軍。
「“人じゃあ なくなった”って?
かわいそうに」と星海。
屋上の貯水槽を破壊する星海。
噴き出す流水にまみれる冠軍。
徳華との闘いに備えていた策。
タンクの裏には符が貼られて聖別までされている。
この世ならざる存在は、流水に弱い。
悲鳴を挙げながら溶解し爆散する冠軍。
虚ろな目の兄を抱き上げる星海。
街では妖気が充満し、怪異が人々を襲い始めている。
それは、やがて世界に広がるだろう。
あらゆる“この世にあらざるもの”が目を覚まし、あらゆる信仰の下の霊的戦士たちが、それと戦う世界の始まり。
後に、その霊的戦士たちに彼ら兄弟は、こう呼ばれた。
始まりの2人──。




