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『新時代記』より『梅沢佳奈  味視覚同調』

 テレビで、“サヴァン症候群”って人たちを扱った番組を視たことがある。


 信じられないような才能を発揮する人たち。


 その偉大な才能は、努力の積み重ねと言うよりは閃きに近い。

 真に天から与えられたとしか表現できないような才能の人たち。



 その中に、数字の計算能力に優れている人が居た。

 膨大な数字の計算を、アッと言うに解いてしまう天才。


 彼は、その秘密(?)を、こんな風に語った。



「ボクは、すべての数字に色が付いて見えるんです」


 “1”には“1”の色があり、“2”には“2”の色が見えるんだそうだ。


 だから、桁数の多い大きな数字を見たり聞いたりした時、それは単なる情報ではなくて、その人には色鮮やかなデザインに見えるらしい。



 ただ……、そんな風に見えることと、アッと言うに計算ができることに、何の関係があるのかが、アタシにはわからないけれど。




 アタシの“力”を誰かに説明するなら、この計算の天才の話に似ている。

 いや、この天才の話よりも、わかりやすいかも。



 アタシには、食べたもの舐めたものの味と香りが“色”で見える。

 だから、1度食べたものなら、大まかな材料と市販の調味料だけで、同じ味を再現することができる。


 食べた時に見えた“色”を、再現すればいいのだ。



 ただ、アタシの調理というか再現の作業は、割と根気を必要とする。


 世間の常識では、味はだいたい5つぐらいの要素に分けられているけど、アタシに見える世界はもう少し繊細で、だいたい8つぐらい。

 香り、風味はもう少し複雑で、だいたい20種類ぐらいに分別できる。


 どんなお料理も素材も、いや、発酵系の調味料も、この30種類ぐらいの“色”のドットでできている。


 そう、ドットだ。


 この世のすべての味は、LEDライトで巨大スクリーンに描かれるイラストのようなものなのだ。

 すべての色合いは、決まった色しか放たない小さな点の配分で、作り出されているのだ。



 だから、有名チェーン店の牛丼の味つけも、高級料理店のデミグラスソースの味も、アタシには再現可能。

 アタシの将来のダンナさんが望むなら、彼の“オフクロの味”を死ぬまで食べさせてあげられるのだ。




 ただ……、ただ、アタシにはカレシが居ない。


 なんだろう?

 会社を辞めちゃったのが良くなかったかなぁーっ。

 だって、ユーチューブの収入だけで充分に食べていけるようになったからさ、別にいいかな?って思っちゃったんだよなぁー。


 『佳奈ヘイのクッキング・ラボ』。


 通勤の必要もない仕事ってさ、出会いが無いのよねー。

 高校時代の友だちとか、男のコを紹介してくれるって言うけどさ、そーゆーのと違うのよ。

 自然に、自然に、男のコとして意識できる出会いが欲しーんだよなぁー。


 アタシ、絶対に“いいお嫁さん”になる自信があるのに。


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