『新時代記』より『戸田修平 味覚変化』
世の中では、“神様”や“宇宙人”の存在を信じる人が、増えてきたように思う。
不思議な“力”に目覚める人間が、増えてきたことに合わせるように。
みんな、この不思議な現象と説明不可能な“力”に、何か理由を求めていて、それが、“神様”や“宇宙人”に向けられていったんだと思う。
たけど、“神様”や“宇宙人”のせいなら、尚更、わからない。
どうして、ボクにこんな“力”を与えたのか?
いや、“力”か?
何か、病気とか、体調不良じゃないのか?
ボクの“力”とは、“ソースと醤油の味の区別ができない”ことだ。
と言うか、ソースの味がしない。
お醤油との味の区別がつかない。
お刺身にソースをかけても納豆にソースをかけても、全然、フツーに食べられる。
と言うか、美味い。
大根おろしだって、焼き魚だって、ソースでも充分に美味しい。
ただ、和食以外がつまらない。
と言うか、もうソースをかけなくなってしまった。
だって、お醤油の味しかしないんだもの。
ソースをかけることで、味の深みが増すコクが増すように感じられたいろんな料理に、ソースをかけることを諦めた。
チャーハンも。
カレーも。
アジフライも。
サツマイモの天ぷらも。
って、あれ?
サツマイモの天ぷらは和食か。
ああ、神様!
いや、宇宙人なのか?
どーしてボクをこんな目にっ!?
なんの為に!?
こんな、ボク以外の他人に証明しにくい“力”を。
それが、何の役に立つのかもわからない“力”を。
そう思って、つい最近まで、ボクは暗い気持ちで過ごしていたのだ。
つい最近まで?
そう、つい最近まで。
最近、ワイドショーで話題になった男の子。
5才。
名前はY君と紹介された。
顔はモザイク加工。
何でも、“周りの人間の肌年齢を若返らせる力”が、科学的検証で証明されたそうだ。
“力”を持った人間は増え始めているが、なぜ“力”を持つ人間が生まれるのかが不明の現状。
男の子の両親や祖父母の検査、聞き取り調査が行われた。
その結果、男の子の父親は、数年前から“ソースの味がわからない”ことに悩んでいたことがわかった。
他の親族は、フツーの人と何も変わらない。
ただ、父親だけが、“味覚変化”を訴えていた。
父親には、“肌年齢を若返らせる力”は無い。
男の子の味覚はフツーだ。
だから、男の子の“力”と父親の“症状(力)”に、何か因果関係があるのかはわからない。
ただ、マッチングアプリなどの男性のプロフィール欄に、“味覚変化”だと自己紹介する文章が増えてるそうだ。
きっとウソだ。
世の中に、そんなにたくさん居るもんか。
だから、そんなウソつきたちに負けたくないから、この“他人に証明するのが難しい力”を、どーやったら証明できるか?
最近、そればかり考えて過ごしている。




