80.廃墟ビル
俺は血の跡を追いながら…追跡したが…
「くそ!途切れた…」
商店街の交差点からそれらしい跡は残ってはいなかった…
人通りの多いこの辺りに居るとは思えない…おそらく…車の上とかに…落ちて…跡は遠くに流されている…
(おい、どうにか出来ないか?)
俺は石にそう念じた…
(待て…これじゃ…弱い意思だが…これはあの娘の意思じゃ…妾の指示道理に動くのじゃ!)
石の感知に助けられた…だが…そんなに範囲は広くないはず…
(振り切られることはないのか?)
念のために聞くと…
(奴はもう動きを止めておる…何の因果じゃろうな…あのビルじゃ…)
(あのビル?)
俺はそう言われて、周囲を見ると…それは…尾田が潜伏していたビルだった…
(急ぐのじゃ…意思が弱まってきておる…このままでは、あの娘は死ぬ!)
考える暇はないという事か…俺はビルに入った…瞬間…全身の毛が逆立つような感覚がした…
「なんか、ゲームのような展開だな…」
俺は、そう呟き平常心をとりもどそうとしたが…
(げぇむ?…児戯の事かのぅ?)
俺の知識を微妙に取り込んでいたが、石の微妙に理解してない間抜けな声が予想以上にこの張りつめた空気を、和ませてくれた。
「さあ、こんな薄気味悪いビル、さっさと舞華を助け出して出て行こうか!」
俺は、足を踏み出した。
罠は前回に来た時から変化はない
俺はさくさく進んだが、ここで気がついた…相手の足跡が無いのだ。
俺が通った跡と尾田の足跡、そして、桜庭…まあ、相手は、人間じゃないから、ビルの外側から登った可能性がある
そう考えることにして、さらに先に進もうとしたとき、暗い廊下の先が一瞬光ったかと思うと、反射的に上半身をのけぞるように動いた…
そして…俺の額に何かがかする感覚と…ぬるりとしたものが…額から…頬を流れた。
「ちくしょう!!容赦なく攻撃を仕掛けてきやがったか!」
俺は頬をから流れたものを拭う…鉄臭さが鼻に障る…
おそらく、あの光はナイフだろう……
のけぞらなかったら、容赦なく胸か腹に突き刺さってた
「しかも、この長い廊下でこれか…」
障害物の少ない場所での待ち伏せは効果的だ…
ぶっちゃけ、あんなナイフをいつまでも避けきれる自信はない
「ゴールで待ち構えている気がないなら、俺にも考えがあるからな!」
俺は姿勢を前屈みに床に這いつくばるように低い姿勢になる…
まあ、クラッチングなんとかって姿勢だが…俺は、足に力を込め…その力を地面につけた腕の力で押さえつける……
少しの静寂…
(おい!その姿勢じゃと低く投げられたナイフを避けきれぬぞ!!)
紅の石が俺にそう話しかけた瞬間、状況が動いた…俺の前方が光る!
低空で投げられるナイフ…それは、地面すれすれを力強く、俺を襲うために飛来する!
本来この姿勢は、低空に投げ続けることの難しさから取られるが……
俺の場合は!!腕の力をそのままに、足の力を爆発させ、腕の力で支えられなくなった俺の体は、背中を向けた状態で前方の天井へと足から跳ぶ!
そして、天井に両足で着地?した俺は、さらに前方の壁を目指し天井を蹴って飛び…また前方が光る…俺がいた天井に刺さる音…俺はそこから、地面に、壁に、反対の壁へとランダムに飛び移りながら廊下を渡りきった!
そこには、誰もいなかった…どうやら、ただで来させる気がない、アトラクション感覚で起こしたのか?
この程度で、死ぬようなら、どうせ止められはしないからな
急に俺の意思とは別に、前を向いたまま体が後ろへと飛んだ!?
トス…トス…トストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストス
そして、俺がいた場所に…大量のナイフが落ちてきた…
「ちくしょう…やりやがるぜ!!」
俺は頭上を見る
たくさんの穴…いままでナイフが突き刺さっていた穴をみた
残りのナイフを全部頭上に刺していやがったか…
(気を抜いたら、危なかったの…)
「それ以前に、あの野郎っていうか…冥乃の奴…ナイフをこれだけ投げるつもりでいたのかよ!!」
俺があんな奇抜な動きをしたお返しとしては、呆れるぐらいに徹底してやがる
俺は地面刺さったナイフを何本か拾う
「まあ、落し物はちゃんと返してやらないといけないな!!」
俺は軽く息を吐くと、再び走りだした。
そして…俺は見つけた…
予想外の人物と共に…