74.世の中の裏
僕は先輩を連れて行こうと…そう決めていた…
二人を仲直りさせる事が…僕が今すべきことだと思っていた…それなのに…
「ごめん…先輩を見つける事が出来なかった…」
前回から一週間後…僕は先輩を連れていこうと思ったのに…先輩はその日に限って姿を見せなかった…
だから…しぶしぶと…悔やむ気持ちで独り冥乃ちゃんに頭を下げた…
「良いんですよ…人の運命なんて…わからないんですから…」
冥乃ちゃんは…力無く笑って、俺を慰めたが…
「僕がもっとしっかりしていたら先輩を捕まえる事が…」
「良いんですから…本当に…そこまでしてくれて…ありがとう…」
冥乃ちゃんが…僕に頭を下げた…
今度こそは…絶対に…そう思った時…
「あっ…正義の味方さん…」
顔を上げた冥乃ちゃんが…急にそんな言葉を言って…
「やべぇ!?」
聞き覚えのある声が…僕の背後から聞こえた…
僕が後ろを振り向いたときには…その人物は見当たらず…ただ…壁を横切る…長い黒髪だけが見えた…
「なんで…逃げたんでしょう…?」
冥乃ちゃんが…不思議そうに首をかしげ…僕はそんな彼女に尋ねた
「冥乃ちゃんさっきの人…」
「正義の…味方…です…本人がそう言ってました…」
本人いわく、冥乃ちゃんに絡んできた入院見舞?に来ていた不良から、彼女を助けた人物らしい…
だけど…あの声は…先輩だった…
先輩は…もしかしたら…すぐ近くまで来て…帰っている?
そう考えるとあの花束も…先輩と考えられた…
「なあ…省略して要点だけ、わからねぇか?」
俺はあまりの回想の長さに我慢が出来なくなった
「そうじゃな…これはあまりにも長すぎる…妾が要点だけをまとめて見せよう」
石がそういうと…
映像が早送りされ…意識的に…先輩が霧摩と呼ばれる女性と仲直りした映像が流れた…
「つまりじゃ、初めから鷲見という女は、あの霧摩を憎んだわけではなかった。
少し驚いて、それを言うタイミングを失っていたんじゃ」
「つまり…冥乃は…それに力を貸していた…」
「小僧、この病院に向かってみるのじゃ…何かわかるかもしれん…」
俺は石の提案を受け、意識を外に戻した。
「おい…もう話は良い…その病院はどこにあるんだ?」
「なんだよ…良いところだったのに…まあいい…時間がないからな…すぐそこの病院だよ…この街で唯一残った病院だから、わかるだろ?」
そう言われ…俺は…焦った…その病院は…
舞華のいる病院……だった…