73.花の言葉
霧摩先輩は…先輩の事を待っている…
僕はそう思った…
でも…僕だけでも…先輩が居なくても…大丈夫なように…
そう考えていた僕の眼に…ベットの傍にある花瓶が目に入った。
紫一色の花瓶
「そういえば、この花いつも変っているけど…冥乃ちゃんが変えているの?」
僕がそう聞くと、冥乃ちゃんは首を振った
「いつも、入口に置かれているので…花を変えています」
いつも入口に?
「それって、この病室の花なの?」
隣の病室に渡される花を持ってきていないか心配になったが…
「宛名に霧摩と書かれていた…」
送り主は誰なんだろう…僕はそう思った…不意に先輩の姿が脳裏に過った…
なんでこんな事を考えるんだ…先輩じゃないかもしれないじゃないか…
学校で先輩は外を見て…僕がいくら誘っても…先輩は…
“行かねぇ…”
そう呟いて僕の目を見なかった…
「花言葉って…わかります?」
考え込んでいた僕に…冥乃ちゃんがそう聞いてきた…
「知らないけど…急にどうしたの?」
花言葉なんて僕は知らない…むしろ知っているほうがおかしいと思う…男が花言葉なんて…
多分先輩でも、知るか!の一言で済ませるだろう
「フウロソウ、シザンス、ムラサキケマン」
そう呟くと、彼女は花瓶に近づいた
そして…
紫の花を冥乃ちゃんは僕に見せた
「フウロソウの花言葉は変わらぬ信頼、慰める…
次に薄紫の白っぽい小さな花を見せながら…
「シザンスの花言葉は、良きパートナー、貴方と一緒に、」
そして、最後に…また紫色の細長い花がたくさん付いているものを…
「ムラサキケマン…これは…あなたの助けになる」
その意味は…知らなければただの花…
知ってしまえば…意味が…現れ…僕は…先輩の代わりに頑張っている事を…先輩は…
そう考えた時…僕は冥乃ちゃんを見て…
「次来るとき絶対に先輩を連れてくるから!霧摩先輩を笑顔にしようね!」
一人欠けてはだめだなんて…初めから知っていたはずなのに…
僕って馬鹿だ…
「お願いします…その人が誰か私は知りませんので…」
冥乃ちゃんは僕に頭を下げた