65.対話(拳)
暗い部屋…だが、俺は足下から壊れた壁の破片を掴むと、入口にめがけて投げる…
カチッ
暗室のスイッチが作動する音が鳴り、薄赤い光が部屋を照らした。
赤い光の下に壁にもたれかかっている男が居た。
男は、白い患者の服のような物を着ていた。
「あんたが、尾田か?」
俺の言葉に、その男は身を縮める
ビンゴだ…この男が尾田史一だ
念のために、桜庭の方を見る
「君なの…尾田君…やつれたね…」
桜庭が尾田に話しかけるが…
「なんだよ…何しに来たんだ!!」
尾田は、俺に掴みかかってきた
抵抗しようとしたが、危険な感じがしなかったから、そのまま隣の部屋に投げた。
「うわぁ!!」
桜庭が飛んできた尾田を避けるために距離をとり、尾田は、無様に地面を転がった。
「ちくしょう!!」
尾田が体勢を立て直し、立ち上がる
俺は立ち上がった、尾田の足を払って倒す!!
「どうした?無様に倒れるだけか?」
俺は相手を見下しながら挑発した。
先輩を傷つけた奴だ、ただ会話するなんて、もともと考えてはいない。
むしろ、あんな罠を仕掛けていて、殴る口実が出来て、感謝すらしている。
「クソ!!」
尾田が、滑稽に後ろに転がりながら立ち上がり、ドアから逃げようとしたが、
「遅い」
奴が立ち上がった時には、既に俺はドアに前に居た。
「どうした?あんな罠を仕掛けていたくらいなら、罠を突破されたら、こうなる事ぐらい想像できただろ?」
俺は、また隣の部屋へ逃げ出させるように追い詰める
さあ、もとの穴倉に逃げろ…逃げて…選択しろ…
尾田が隣に部屋へ走り出し、俺も追い詰めるように、歩き出すが、そんな俺に腕を、
無様に床に腰を着いていた桜庭が、掴んだ
「落ち着いてよ!!二人とも!!月影君!!僕らは会話に来たんだ!!捕まえるために来たんじゃないんだよ!!」
俺は、桜庭の言葉に、内心舌打ちをした。
「はいはい、俺はただの護衛だったな〜」
俺は、さぞ、思い出したかのような口調で言うと、
「だからこそ、今、奴を痛めている」
感情を消した声で言い放った。