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62.過去の虚像


「来るな!!来るな!!」

ビルで…俺は…怯えていた

無様に頭を抱え…鈍く光る刃物の幻覚に怯えていた…


奴が俺を殺しに来る…

奴が俺を殺そうとしている…


俺は悪くないのに…俺のせいじゃない

俺が…俺が殺したんじゃない!!


俺が危害を加えたわけじゃない…


悪いのは…あの女だ…あの女が…あの女が忘れるから…忘れるからいけないんだ!!


俺は…幻覚と分かっているのに…そのナイフの先を見た…


「俺は、彼女の事を忘れた事なんてない!!なのに…なぜ俺を…俺を追い詰めるんだ!!

俺を拒絶するんだ…」俺は…地面を叩く…叩く…


「俺は…死にたくない!!死にたくない!!あの女が生きているのに…」

幻覚が…俺に言葉を紡ぐ…

「あの女が…先輩が…死んだ…死んだ…」

気が狂いそうだった…先輩が死ぬなんて…信じられなかった…


「死んだ?殺した?誰が?俺が?お前が?えっ?えっ?えっ…」

公園で…死んだ…その話は…彼女と同じ…


「誰が…誰が…罪を償う前に死ぬなんて許せない!!誰が殺した!!誰が殺した!!」

恐れが怒りに飲み尽される…恐れが狂気に染まっていく…


「殺す…殺す…殺す!!ブチ殺す!!誰だ!!誰が殺したんだ!!誰が!!」

俺は吠えた!!そして…幻覚を睨みつけると…俺は…手を伸ばした…

「力だ…力が欲しい…先輩を殺した奴に復讐する力を…彼女を殺した奴らに復讐する力を…」

俺は…幻覚に…手を伸ばす…幻覚のナイフに…

「だから…復讐の力を…寄こせ…寄こせ!!」

俺の手は…幻覚である筈のナイフを…掴んだ…そして…掴めたと思った…一瞬後…ナイフは消え…


俺の脳裏に…過去の…あの幸せだったあの時代が見えた…

先輩と彼女…そして、俺がいた…

先輩は、いつも無理難題を俺に命令していた…

町の都市伝説を探せ、謎の組織を見つけろ、など子供みたいに、笑いながら、俺と彼女を引っ張り回した…

授業とかもお構い無しで、遊びまくっていた…


だから、一度先輩を注意しようとした

「先輩!!いい加減にしてください!!これ以上授業を放棄したら…俺と同じ学年になりますよ!!」

「はぁ〜ありえねぇ事だな」

それなのに、先輩は、俺の注意を聞こうともせず、のほほんと受け流した。

「だから!!そんな悠長なことを言っていると…」

「だー!!うるさいな!!おい!!司!!俺の試験の点数をこの馬鹿に教えてやれ!!」

先輩が彼女…司先輩が、紙を取り出した

「444点」五教科の合計点がそう書かれていた…が…その点数を口に出した瞬間、司先輩は、急に顔を真っ赤にさせて、その紙を懐に収め…

「ごめん、これ私の…」と恥ずかしそうに言った。

そして、今度こそ、先輩のテストを見せてもらった…

名前なしに付き…0点だったが…そのテストは…500点に横棒で0点となっていた。

「見たか!!馬鹿後輩!!俺はここまで完ぺきなんだぜ!」

そう先輩は俺に笑った…


思い出は終わったのに、

俺の目の前に先輩の姿が見えた…胸にナイフが…突き刺さった姿が…俺には見えた…

俺は先輩の胸に刺さったナイフに触れる…冷たく硬い…俺はナイフを掴み引き抜こうと…

先輩の体に手で触れようとしたが、俺の手は…先輩…幻影をすり抜け…先輩の姿が消えた…そして、ただ…そのナイフの重みが…俺の腕に残った…

「おい尾田…尾田史一…俺は…復讐する力を手に入れた…復讐する権利を得た…

俺は…俺は…俺の復讐を邪魔するものを殺す…」

俺は…ナイフを片手に笑った…これで復讐ができると…嗤った


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