60.先輩が殺された公園
「一応…まだ、事件の検証が済んでいないから、あまりここには来ない方がいいんだけどね」
桜庭が俺にそう言ったが…俺は…なぜ、奴が俺の行く先々に居るのかが気になった。
だが、そんなことよりも、俺が知りたいことは別にある。
「別に…良いじゃねぇか…そんな事より、聞きたい事があるんだけど…良いか?」
「そんな事って…まったく…わがままだね、まあ、いいよ 何が聞きたいのかな?」
「先輩の家族について何か知らないか?」
もし、冥乃が石と同じような存在なら…なにかしらの不審な点が存在するはずだ。
戸籍等の問題がきっと…
「鷲見君の家族…両親は交通事故で死んでしまっているから…保護者の伯父さんだけしかいないんだけど…いや…妹がいるって…聞いたことが…」
はっきりしない答えに、俺は頭に手をやった…だが…おそらく、冥乃は…人間じゃない…
だから…その確証の為に…俺はいま先輩の妹が俺の家にいることを話した。
「鷲見君の妹の事を?別にかまわないけど…」
「ああ、ありがとう」
「だけど…なんで、君はこういく先々で、僕と出会うのかな?」
缶コーヒーを手渡しながら、桜庭は俺に聞いてきた。
「別に、俺が先回りしているんじゃなくって、桜庭さんの方が、俺のあとに現れると思うんだけどな」
俺は、この不気味な感覚を感じながら、桜庭を見た…
この不気味な感覚はどこから来るのかを警戒しながら、桜庭を調べた…
「んっ?そのお守り…」
俺は桜庭の首にかけられているお守りに気がついた。
朱色のお守りから感じる不気味な気配に…俺は気付くことができた。
「このお守り?羅刹さんがくれたお守りなんだよ、僕が今の記者になった時に、“これを掛けておけば安心だ”って言って僕にくれたんだよ」
その言葉で理解できた。この男は、あの店長に守られているということに…
おそらく、あの不気味な気配に、手出しできなくしているんだろう。
そう考えれば、あの時…冥乃が逃げた理由も…
待て…まだ決まっていないのに…俺はあの刃物を持ったものを冥乃と決めつけて…
馬鹿な…まだ…俺はあいつを信じようとしているのか?
舞華を殺そうとした奴を…俺はまだ庇おうとしているのか?
信じる信じないも確証がどうかって…俺は何を考えているんだ!!
冥乃は舞華を殺そうとした…それが事実で良いではないか!!
俺は…拳に力を込める…
「尾田君の場所がわかったんだよ」
「はぁ?」
あまりの唐突な言葉に、俺は無様な返事をした。