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57.道場

俺は電話を切ると、朽木たちの家にある道場へ向かった

「それにしても、どう説明するか…」

俺はまた気を失った朽木姉を見るが…気持ち良さそうに眠ってやがる…

不意に俺の顔が熱くなる


「クソッ…落ち着け…あれは事故だ…他意はない…それに俺の勘違いだったら…

それこそこいつは俺を馬鹿にするじゃねぇか…」

俺は自分にそう言い聞かせると…目の前にある道場の門を見た。


その門は、古い厳格な雰囲気を感じさせるような木製の門

まあ、一般的な道場の門よりも少し小汚いと…いや、厳格だと考えれば良いのだ!


断じて、前に古臭いと言って、舞華たちの親父に何度も組み手をされて言う気が失せたなんてことは…無くはない…


リハビリで道場に着ていた俺に、いろんな技を仕掛けてくるものだから、俺はそれを避ける事しか出来なかったが…本調子なら良い勝負が出来ると思う!


だが、それよりも…舞華は凄かった…

俺は初めて同い年の相手の攻撃を本気で避けたんだからな…


並みの不良なんてドラクエのスライム並みの強さにしか思えないくらいだ


初めの頃は、俺は嫌われていた

もちろん、俺も舞華のことを気に入らなかった…初めて見たときに…無性に腹がたった。


理由は解らないが…たぶん、人との付き合いを拒絶しているような雰囲気だったからか…

まあ、当時の俺も似たようなもんか…


男だったら殴れるのに…と何度も悔やんだ事はあったが…話をしてみると…

俺が組み手のとき避けてばっかりで、攻撃してこないのが不満だったらしい


母さんの英才教育の賜物で本気で攻撃できなかったからな…

確かに見下された感がして、俺も腹がたつな…

まあ、それから先輩と舞華の二人がかりで、今日のようにある程度の力で相手を殴れるようになったが…

表立って「俺は女を殴れるようになった」なんて鬼畜発言を言えるはずが無い

言ったら…きっと両腕を母さんに折られてしまう!!



まあ…そんな事より…

「おっさん!!門を開けてくれ〜」

俺はおっさん…舞華たちの父を呼びながら、門を叩いた。

しばらく叩いていると…


「誰じゃ!こんな時間に!!」道場の門を飛び越え独りの男が飛び降りてきた


「ワシの可愛い娘たちがまだ帰ってきておらんのに!!…なんだ…雅春」

相変わらず、ムカつくおっさんだ

「うるせー、ほら、配達ものだ」

俺は背中に背負っている朽木姉をおっさんに見せた…が…

「ワシの可愛い小さい方の娘!!」

変に感極まって…目、鼻、口から汚ぇ液を吐きながら飛びかかってきやがった!!

あまりのキモさに、俺は反撃しようとしたが…それよりも先に…

「誰がチビだ!!」

チビという言葉に反応した朽木姉のカウンターがおっさんの喉に打ち込まれた

「ギョッフー!!!」

そして…汚い花火が…おっさんの口から俺たちの頭上に降り注がれ…俺は慌てずにいつもの様に回避し、足元を見る。


「相変わらず、狂ってんな…」

俺は独り汚く汚れ、地面を転がるおっさんを見てそう思った

「まったく!!父様は!!僕はチビじゃないんだからな!!ただ…可愛いだけなんだからな…もふっ…」

「耳元で怒鳴りながら俺の背中に顔を埋めるな!!」

何を調子に乗っているのか…このチビめ…

「それにしても…遅かったではないか〜愛しい小さい方の娘」

そう思っている間に、おっさんはさっきまでのダメージがまるで、嘘のように回復して、俺たちに話しかけてきた。

「それは…」さすがに…言い難かった…

あんたの娘が襲われそうだったのを助けたって言えれば良いけど…それは、朽木姉のプライドを…

「ボクが暴漢に襲われているところを、こいつが助けてくれたんだ」

このチビ!!恥ずかしいとかないのか!!

いきなり、喋りやがった!!

「ふむ…暴漢とな?」

流石のおっさんも、いまいち事の重大さに気づけずに、聞き返す

「うん…生活指導の笹本が…ボクの服を破って…こいつが助けてくれなかったら…

ボクは…今頃…」

ああ…大丈夫とかじゃなくって…このチビ…怖かった事をさっさと過去の事にしたかったのか…

「生活指導だと!?わしの娘に…ブチ殺!!政春!!その男はどこだ!!わし自ら…ナニを粉砕してくれる!!」

だが…さっさと過去の事にしたいのはわかるが…この怒り狂った…おっさんを静めるのは俺の役割ですか?…そうだよな…

俺はそう自分に言い聞かせ…狂い笑うおっさんを宥めた…拳と蹴りで…


「ふむ…すでに警察を呼んで突き出したか…うぬぬぬ…口惜しい…ワシの父様センサーが完璧ならば…ばらしたところを…口惜し…娘の愛を獲得する機会が…」

まったく…狂ってやがるな

「こんな性格じゃなかったら…ボクも舞華も本心から良い親だと思えるんだけど…あっ…ボクちょっと着替えてくる!!」

朽木姉は、いきなり俺の背中を蹴ると、俺が渡した上着で前を隠す…

そう言えば、笹本の糞野郎に、服を破かれたんだったな。

「ああ、着替え終わったら、上着を返すから…待っていろよ!!」

顔を紅くして、朽木姉は家の方へと走って行った…

「まあ、政春、わしはお前と拳で語りたい気分がするが…今は居間に行こうかの…

こやつが婿養子になれば…わしらの道場も安泰じゃな…」

後半の部分は基本的に聞く気がなかったので、俺の耳には入ってこなかった

だって…このおっさんの言うことの9割は戯言なのだから…聞く気になれない。

居間に向かう途中…廊下にある電話が鳴った

「なんじゃ…ちょっとすまんが、政春、電話を取ってくれ、わしは妻に刹那について、少し話す故に、任せたぞ」

ちょい待て!おっさん!!他人に家の電話を取らせるな!!

と言おうと思ったが…おっさんは、俺が何か言う前にスタスタと歩き去った…


俺は舌うち一つすると、電話を取った

「クソッ…はい、朽木ですけど、ご用件は…」

「あの…お宅は、朽木舞華さんのご自宅でしょうか?」

舞華に関する事か?なんだ?声からして男…いったい…何が…

「ああ、そうだが、舞華にようだったら、まだ…」

「いえ、違うんです…わたくし…警察の者ですが…落ち着いて聞いてください…」

警察?なんで警察が舞華に…それに落ち着けって…

「実は………なんです…」

えっ…いま何て言ったんだ…

「すいません…よく聞こえなかったので…もう一度…」

ありえない…内容に…俺の思考は…動きを止めようとしていた…

「わかりました…もう一度…言いますね…朽木舞華さんが…腹を刺され…重体でいま病院にいます…早く来てください」

俺は…受話器を…落した…





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